職員に食事を支給したときの非課税の枠が、令和8年4月1日から引き上げられました。通常の勤務時間内に支給する食事についてクリニックが負担できる金額は月3,500円から月7,500円に、深夜勤務者への夜食代は1食300円から650円になりました。
当直や夜勤のある医療機関では、食事の支給は日常的な場面です。要件を満たせば給与課税されずに職員へ還元できますが、渡し方をひとつ間違えると全額が給与になります。
この記事では、残業や宿日直の食事、通常の勤務時間内の食事、深夜勤務者への夜食代という3つの場面に分けて、給与課税されない条件を整理します。
- 令和8年4月から月7,500円、1食650円に引き上げられた非課税の枠
- 残業や宿日直に伴う食事は無料で支給しても課税されないこと
- 通常の勤務時間内の食事について満たすべき2つの要件
- 食事代を現金で渡すと原則として全額が給与になること
- クリニックの勤務体制に合わせた設計の手順
図 食事の支給の判定(国税庁タックスアンサーNo.2594にもとづき作成)
この記事の見出し
📌 令和8年4月から金額基準が引き上げられた
職員に食事を支給したときの非課税の枠が、令和8年4月1日から引き上げられました。通常の勤務時間内に支給する食事についてクリニックが負担できる金額は、それまでの月3,500円から月7,500円になりました。深夜勤務者に夜食代を金銭で支給する場合の限度額も、1食あたり300円から650円になりました。
長く据え置かれてきた金額であり、物価の水準に合わなくなっていたものが見直された形です。当直や夜勤のある医療機関では、活用できる場面が多い改正といえます。
インターネット上の解説記事には改正前の金額のまま残っているものがありますので、金額を確認するときは国税庁のページか、更新日の新しい情報にあたってください。
表 改正前後の金額(消費税および地方消費税の額を除く)
📌 残業や宿日直の食事は無料でも課税されない
まず押さえておきたいのは、残業または宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてよいとされていることです。金額の基準はありません。
クリニックでは、当直の医師や夜勤の看護師に食事を出す場面があります。これは通常の勤務時間外の勤務に伴う食事ですので、無料で支給しても差し支えありません。残業をしている職員に出前を取る場合も同じです。
ただし、これは現物で食事を支給する場合の話です。同じ残業でも、食事代として現金を渡した場合は、次に説明するとおり原則として給与になります。
📌 通常の勤務時間内の食事は2つの要件
残業や宿日直に伴わない、通常の勤務時間内に支給する食事については、次の2つの要件をどちらも満たす場合に給与として課税されません。
ひとつめは、役員や職員が食事の価額の半分以上を負担していることです。ふたつめは、食事の価額から本人が負担している金額を差し引いた残額が、1か月あたり7,500円以下であることです。消費税および地方消費税の額は除いて判定します。
たとえば1食600円の弁当を月20回支給する場合、食事の価額は月12,000円です。本人から6,000円を徴収すればクリニックの負担は6,000円となり、価額の半分以上を負担しており、かつ負担額が7,500円以下ですので課税されません。
一方、本人から4,000円しか徴収しなければ、負担割合が半分未満ですので、差額の8,000円全額が給与になります。また、本人から6,000円を徴収していても、クリニックの負担が月7,500円を超えていれば、その全額が給与になります。2つの要件はどちらも満たす必要があります。
表 食事の支給の取扱い(国税庁タックスアンサーNo.2594)
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📌 現金で渡すと原則として全額が給与
食事代を現金で支給する場合は、原則としてその全額が給与として課税されます。食事そのものを支給する現物給与と、金銭の支給とでは扱いが違います。
例外は、深夜勤務者に対する夜食代です。調理施設がないことなどにより深夜勤務に伴う夜食を現物で支給することが著しく困難な場合に、通常の給与に加算して勤務1回ごとの定額で支給する金銭で、1食あたり650円以下のものについては、給与として課税しなくて差し支えないとされています。
この例外を使うには、深夜勤務であること、現物支給が困難であること、勤務1回ごとの定額であること、1食650円以下であることという条件を満たす必要があります。深夜勤務のある病院や有床診療所では検討の価値がありますが、無床のクリニックで日中の食事代を現金で渡す使い方はできません。
昼食代の補助を現金で渡している場合は、給与として源泉徴収が必要です。弁当の現物支給に切り替えて、本人から半額以上を徴収する形にすれば、非課税の枠を使えます。
📌 クリニックでの実務
具体的な運用としては、まず食事の支給の目的を整理してください。当直や夜勤に伴う食事であれば、金額の基準を気にせず無料で支給できます。ここは記録さえ残しておけば問題になりません。
日常的に昼食を提供したいのであれば、本人から半額以上を徴収する仕組みをつくることになります。給与から控除する方法が一般的です。控除する旨を労使協定で定めておいてください。
クリニックの負担が月7,500円という枠は、1日あたりに直すと20日勤務で375円です。1食600円の弁当であれば、本人負担300円としてクリニックの負担を300円に抑えれば、月20回でも6,000円で枠に収まります。
記録としては、誰にいつ何を支給したか、いくら徴収したかがわかる資料を残します。給与から控除している場合は給与明細に反映されますので、それが記録になります。
図 設計の手順
食事の支給や表彰、職員旅行といった福利厚生は、要件を満たせば非課税で職員に還元できます。クリニックの勤務体制に合わせた設計をご提案します。医療法人の設立支援と医療機関の税務顧問を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。医療法人の設立支援と医療機関の税務顧問を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 残業または宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてよいとされています。金額の基準もありません。当直や夜勤に伴う食事であれば、そのまま福利厚生費として処理できます。
A. 食事代を現金で支給する場合は、原則としてその全額が給与として課税されます。深夜勤務者に対する1食650円以下の夜食代を除き、金銭の補助は非課税になりません。弁当などの現物支給に切り替え、本人から食事の価額の半分以上を徴収する形にすることを検討してください。
A. 課税されません。食事の価額は月12,000円、本人負担は月6,000円ですので、価額の半分以上を負担しているという要件を満たします。クリニックの負担も月6,000円で7,500円以下ですので、もうひとつの要件も満たします。
A. いいえ。食事の価額の半分以上を本人が負担していなければ、差額の全額が給与になります。月12,000円の食事で本人負担が4,000円であれば、差額の8,000円全額が給与として課税されます。2つの要件はどちらも満たす必要があります。
A. 消費税および地方消費税の額を除いて判定します。深夜勤務者への夜食代の1食650円も同様です。
📄 まとめ
職員への食事の支給は、令和8年4月1日から非課税の枠が広がりました。通常の勤務時間内の食事についてクリニックが負担できる金額は月7,500円、深夜勤務者への夜食代は1食650円です。いずれも消費税および地方消費税の額を除いて判定します。
残業または宿日直に伴って支給する食事は、無料で支給しても給与課税されません。当直や夜勤のあるクリニックでは、この枠組みをそのまま使えます。通常の勤務時間内の食事については、本人が価額の半分以上を負担し、かつクリニックの負担が月7,500円以下であることの両方を満たす必要があります。
注意すべきは現金での支給です。深夜勤務者への1食650円以下の夜食代を除き、食事代を金銭で補助すると全額が給与として課税されます。昼食代の現金補助を行っている場合は、現物支給への切り替えを検討してください。
⚖ 本記事の根拠法令
- 残業または宿日直を行うときに支給する食事は無料で支給しても給与課税されないこと、通常の勤務時間内に支給する食事は本人が食事の価額の半分以上を負担し、かつクリニックの負担が1か月あたり7,500円以下であれば給与課税されないこと、深夜勤務者に夜食を現物で支給できない場合に勤務1回ごとの定額で支給する1食650円以下の金銭は給与課税されないことは、いずれも国税庁タックスアンサーNo.2594によります(令和8年4月1日現在法令等)
- いずれの金額も消費税および地方消費税の額を除いて判定します
- 所得税法28条(給与所得)、同法36条(収入金額)
- 所得税法183条1項(給与等の支払をする者の源泉徴収義務)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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