学会出張と海外視察|出張旅費と日当の非課税の範囲

学会への参加や海外の医療機関の視察は、医師にとって欠かせない活動です。その費用は経費になり、受け取る医師の側でも給与として課税されません。

国税庁は、転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるものを非課税として扱うとしています。日当も含まれますので、実費の精算をせずに支給できます。

ただし、旅費規程がなければ金額の根拠を示せません。また、家族の同行分や観光の日程が含まれる場合の按分にも注意が必要です。この記事では、費目ごとの扱いと残しておくべき記録を整理します。

この記事でわかること

  • 出張旅費と日当が通常必要と認められる範囲で非課税になること
  • 旅費規程を全職員に適用されるものとして整備すべき理由
  • 家族同行分と観光部分の扱い
  • 海外の学会出張で業務との関連を示す資料
  • 国内出張と海外渡航で消費税の処理が分かれること
学会出張の費用を経費にできるかの判定医師が学会や視察のために出張する業務との関連を説明できない経費にならないはいいいえ家族が同行している家族分は自己負担はいいいえ観光の日程が含まれているその部分は按分するはいいいえ旅費規程がなく日当の基準がない支給額の根拠が乏しいはいいいえ通常必要と認められる範囲で経費に算入する

図 学会出張の判定(所得税法および国税庁タックスアンサーにもとづき作成)

📌 出張旅費と日当は非課税になる

医師にとって学会への参加は、診療の質を保つために欠かせない活動です。この費用は、医療法人であれば損金、個人開業であれば必要経費になります。そして、受け取る側の医師にとっても給与として課税されません。

国税庁は、転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるものを非課税として扱うとしています。ここでいう旅費には、交通費や宿泊費のほか、日当も含まれます。

日当は、出張に伴う諸雑費をまかなうために支給するもので、実費の精算を必要としません。領収書を集めなくても支給できるという点で、実務上の利便性があります。

ただし、通常必要と認められる範囲を超えれば、その部分は給与として課税されます。日当の金額に法令上の上限はありませんが、社会通念上妥当な水準であることが求められます。

📌 旅費規程を作っておく

日当をいくらに設定するかは、あらかじめ旅費規程で定めておいてください。規程がないまま、そのつど金額を決めていると、通常必要と認められる範囲であることを説明しにくくなります。

規程には、対象となる役職ごとの日当の額、宿泊費の上限、交通機関の等級などを定めます。理事長と職員で金額に差を設けることは差し支えありませんが、その差が合理的な範囲であることが必要です。

また、規程は全職員に適用されるものとして整備してください。理事長だけを対象とした規程では、実質的に役員給与とみなされるおそれがあります。看護師や事務職員が研修に参加する場合にも適用される内容にしておくべきです。

日当の水準については、同規模の医療機関や一般の企業の水準が参考になります。一般に、国内の日帰り出張であれば数千円、宿泊を伴う出張であればその倍程度、海外出張であればさらに高い水準が設定されることが多いようです。

学会出張に関する費用の扱い費目扱い交通費と宿泊費実費を経費に算入する。通常必要と認められる範囲であること日当旅費規程にもとづき支給する。実費の精算は不要学会の参加費と年会費業務との関連があれば経費に算入する家族が同行した部分の費用事業とは関係のない支出。自己負担とする観光を含む日程の費用業務の部分と観光の部分を合理的に按分する懇親会の費用業務との関連があれば会議費または交際費等として処理する

表 費目ごとの扱い

📌 海外の学会と視察

海外で開催される学会への参加や、海外の医療機関の視察についても、業務との関連があれば経費になります。ただし、国内の出張よりも慎重な整理が求められます。

まず、その渡航の主たる目的が業務であることを示せるようにしてください。学会のプログラム、演題の抄録、参加証、視察先とのやりとりの記録などが資料になります。医師本人が発表を行うのであれば、その事実はもっとも明確な根拠になります。

日程に観光が含まれている場合は、業務の部分と観光の部分を合理的な基準で按分します。日数による按分が一般的です。往復の航空運賃をどう扱うかは、業務日数と観光日数の比率によることになります。

配偶者が同行する場合、その費用は経費になりません。学会に同伴者向けのプログラムがあったとしても、それは業務ではありません。家族分は明確に自己負担としてください。

なお、消費税については、国内の出張旅費のうち通常必要であると認められる部分は課税仕入れになりますが、海外への渡航に係る国際線の運賃などは課税の対象外です。処理を分けてください。

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📌 記録を残す

学会出張の費用は、税務調査で業務との関連を確認されやすい項目です。次の資料を残しておいてください。

出張のたびに簡単な出張報告書を作成し、日付、行先、目的、参加した学会名、得られた知見を記録します。あわせて、学会のプログラムや参加証、発表した場合はその抄録を保存します。交通費と宿泊費の領収書は当然として、日当については支給の記録を給与台帳などに残します。

診療を休んで出張するわけですから、その日の休診の記録も、出張の事実を裏づける資料になります。

こうした記録は、税務上の説明のためだけではありません。何のために出張し、何を持ち帰ったのかを整理しておくことは、クリニックの運営そのものにも役立ちます。

学会出張の準備と処理の手順旅費規程を整備し、日当と宿泊費の基準を定める出張の前に、業務との関連を説明できる資料を確認する家族が同行する場合は、家族分の費用を分けて自己負担とする観光の日程が含まれる場合は、按分の基準をあらかじめ決めておく出張後に報告書を作成し、プログラムや参加証とともに保存する国内と海外で消費税の処理を分ける

図 準備と処理の手順

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。医療法人の設立支援と医療機関の税務顧問を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 日当はいくらまで支給できますか。

A. 法令上の上限はありません。通常必要と認められる範囲であることが要件です。旅費規程で役職ごとの金額を定め、同規模の医療機関や一般の企業の水準と比べて説明できる金額にしてください。

Q. 日当に領収書は必要ですか。

A. 日当は出張に伴う諸雑費をまかなうために支給するもので、実費の精算を必要としません。したがって領収書の提出は不要です。ただし、旅費規程と支給の記録は残してください。

Q. 理事長だけを対象とした旅費規程でもよいですか。

A. おすすめできません。理事長だけを対象とすると、実質的に役員給与とみなされるおそれがあります。看護師や事務職員が研修に参加する場合にも適用される内容にしておくべきです。

Q. 配偶者が学会に同行した費用は経費になりますか。

A. なりません。学会に同伴者向けのプログラムがあったとしても、それは業務ではありません。家族分の費用は明確に分けて自己負担としてください。医療法人が負担すると、その理事に対する給与として課税されます。

Q. 海外出張の旅費に消費税はかかりますか。

A. 海外への渡航に係る国際線の運賃などは消費税の課税の対象外です。一方、国内の出張旅費のうちその旅行について通常必要であると認められる部分は課税仕入れになります。処理を分けてください。

📄 まとめ

学会出張の交通費、宿泊費、日当は、その旅行について通常必要であると認められる範囲で経費になり、受け取る医師の側でも給与として課税されません。日当は実費の精算を必要としませんので、実務上の利便性があります。

その前提として、旅費規程の整備が欠かせません。役職ごとの日当の額、宿泊費の上限、交通機関の等級を定め、全職員に適用されるものとしてください。理事長だけを対象とした規程では、実質的に役員給与とみなされるおそれがあります。

海外の学会や視察については、渡航の主たる目的が業務であることを示す資料を残してください。家族の同行分は自己負担とし、観光の日程が含まれる場合は日数などで合理的に按分します。国内出張と海外渡航では消費税の処理も分かれます。

⚖ 本記事の根拠法令

記載内容の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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