長く勤めてくれた職員を表彰したい、開院の節目に職員へ記念品を贈りたい。こうした支給は、要件を満たせば給与として課税されません。
ただし、永年勤続者に対する記念品等と創業記念品等では要件が異なります。1万円以下という金額の基準があるのは創業記念品等のほうで、永年勤続の側にはこの基準がありません。
この記事では、2つの取扱いの違いを整理し、金銭や商品券で渡した場合の扱い、そして慶弔見舞金の取扱いを説明します。
- 永年勤続者の記念品等の3つの要件
- 創業記念品等の3つの要件と、1万円以下という金額基準
- 2つの制度で金額基準の有無が違うこと
- 金銭や商品券で支給すると給与になること
- 慶弔見舞金を福利厚生費とするための基準の整備
図 記念品の判定(国税庁タックスアンサーNo.2591にもとづき作成)
📌 2つの制度を混同しない
職員への記念品の支給には、性格の異なる2つの取扱いがあります。永年勤続者に対する記念品等と、創業記念品等です。要件が違いますので、混同しないでください。
永年勤続者に対する記念品や旅行や観劇への招待については、次の3つの要件を満たす場合に給与として課税されません。ひとつめは、その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。ふたつめは、勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。みっつめは、同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていることです。
一方、創業記念品等については、次の3つです。ひとつめは、支給する記念品が社会一般的にみて記念品としてふさわしいものであること。ふたつめは、記念品の処分見込価額による評価額が1万円以下であること。みっつめは、創業記念のように一定期間ごとに行う行事で支給するものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであることです。
ここで重要なのは、金額の基準です。1万円以下という基準があるのは創業記念品等のほうであり、永年勤続者の記念品等にはこの金額基準がありません。永年勤続の側は、勤続年数や地位に照らして社会一般的にみて相当な金額以内であればよいとされています。この違いを取り違えている解説をよく見かけますので、注意してください。
表 永年勤続と創業記念の違い(国税庁タックスアンサーNo.2591)
📌 金銭や商品券で渡すと給与になる
どちらの制度も、対象は現物の記念品や招待です。金銭で支給すれば、その全額が給与として課税されます。
商品券やギフトカードも同様です。換金性があり、実質的に金銭の支給と変わらないためです。表彰の趣旨で渡すのであれば、品物そのものを選んで支給してください。
また、一定金額の範囲内で本人に自由に品物を選ばせる形も注意が必要です。無制限に選択を認めるのであれば、実質的には金銭を渡したのと変わらないと見られます。数種類の記念品を用意しておいて、そのなかから希望するものを選んでもらうという形であれば、選択の範囲が限られていることが明らかですので問題ありません。
旅行券についても、有効期限がなく換金性があるものは、原則として給与として課税されます。旅行券を使って実際に旅行を実施したことを確認する仕組みがあれば別の扱いになり得ますが、その要件は個別通達によりますので、実施を検討する場合は事前に確認してください。
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📌 慶弔見舞金の取扱い
職員の結婚や出産のお祝い、不幸があったときの香典、病気のお見舞いといった慶弔見舞金は、社会通念上相当と認められる範囲であれば福利厚生費として処理できます。
国税庁は、従業員等またはその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品に要する費用について、交際費等ではなく福利厚生費に該当するとしています。結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどが例として挙げられています。
ここでのポイントは、一定の基準に従って支給されることです。あらかじめ慶弔見舞金規程を作り、支給の事由と金額の基準を定めておいてください。そのつど院長の判断で金額を決めていると、基準がないと見られます。
金額の水準は、勤続年数や役職に応じて設定するのが一般的です。近隣の同規模の医療機関の水準を大きく超えないことが目安になります。
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❓ よくある質問
A. その基準は創業記念品等のものです。永年勤続者に対する記念品等については、その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であることが要件とされており、具体的な金額の基準はありません。
A. 表彰すること自体は自由ですが、給与として課税されない取扱いの対象は、勤続年数がおおむね10年以上である人です。8年で表彰するのであれば、その記念品は給与として課税されます。
A. 換金性があり、実質的に金銭の支給と変わらないため、給与として課税されます。品物そのものを選んで支給してください。
A. 一定金額の範囲内で無制限に選択を認めるのであれば、実質的に金銭を渡したのと変わらないと見られます。数種類の記念品を用意しておいて、そのなかから希望するものを選んでもらうという形であれば、選択の範囲が限られていることが明らかですので問題ありません。
A. 法律上の義務ではありませんが、一定の基準に従って支給される金品であることが福利厚生費として扱われる前提です。支給の事由と金額の基準を定めた慶弔見舞金規程を作っておいてください。
📄 まとめ
永年勤続者に対する記念品等が給与として課税されない要件は、勤続年数や地位に照らして社会一般的にみて相当な金額以内であること、おおむね10年以上勤続している人を対象とすること、同じ人を2回以上表彰する場合は前回からおおむね5年以上の間隔があいていることの3つです。
創業記念品等については、記念品としてふさわしいものであること、処分見込価額による評価額が1万円以下であること、一定期間ごとに行う行事はおおむね5年以上の間隔で支給することの3つです。1万円以下という金額基準は創業記念品等のものであり、永年勤続の側にはありません。
いずれも現物の支給が前提です。金銭や商品券で渡せば給与として課税されます。慶弔見舞金については、一定の基準に従って支給される金品であれば福利厚生費として処理できますので、規程を整備しておいてください。
⚖ 本記事の根拠法令
- 永年勤続者に対する記念品等および創業記念品等が給与として課税されない要件は、国税庁タックスアンサーNo.2591によります。同ページの根拠法令等には所得税基本通達36-15、36-21から36-22までおよび平成元年直法6-1外が示されています
- 従業員等またはその親族等のお祝いやご不幸などに際して一定の基準に従って支給される金品に要する費用が福利厚生費となることは、国税庁タックスアンサーNo.5261によります
- 所得税法28条(給与所得)、同法36条(金銭以外の物または経済的な利益をもって収入する場合の収入金額)
- 租税特別措置法61条の4(交際費等の損金不算入)、同法施行令37条の5(交際費等の範囲)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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