買い替えた旧型の機器、診療科目を変えて不要になった装置。使っていないのに帳簿に残ったまま減価償却を続けている資産は、多くのクリニックにあります。
使用をやめているのであれば、除却として一度に損金または必要経費にできます。実際に廃棄していなくても、法人税基本通達7-7-2にもとづく、いわゆる有姿除却という方法があります。
この記事では、除却の方法と必要な記録、処分見込価額の考え方、そして決算前に確認しておくべきことを整理します。
- 使っていない資産を除却して一度に損金にできること
- 現物が残っていても除却できる、いわゆる有姿除却の要件
- 廃棄と有姿除却でそれぞれ残しておくべき記録
- 処分見込価額の考え方と、撤去費用の扱い
- 固定資産台帳と現物を突き合わせる年次の点検
図 除却損の判定(法人税基本通達7-7-2にもとづき作成)
📌 使わない機器が帳簿に残っている
クリニックを長く続けていると、使わなくなった医療機器が院内に残ります。買い替えた旧型の機器、診療科目を変えたときに不要になった装置、故障して修理していない設備。これらが帳簿上は資産として残り、減価償却を続けているというケースは少なくありません。
減価償却を続けている限り、その資産の帳簿価額は少しずつ経費になっていきます。しかし、耐用年数が長い資産であれば、使わなくなってから何年も経費が残り続けることになります。
実際に使用をやめているのであれば、除却として一度に損金または必要経費にする方法があります。帳簿価額から処分見込価額を控除した金額が除却損です。
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📌 廃棄しなくても除却できる場合がある
もっとも確実なのは、実際に廃棄処分することです。産業廃棄物として処理し、処理業者の伝票やマニフェストを保存しておけば、除却の事実を証明できます。
ただし、医療機器のなかには、大型で撤去に費用がかかるもの、建物と一体になっていて簡単に取り外せないものがあります。こうした場合に使えるのが、実務でいう有姿除却です。
法人税基本通達7-7-2は、使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産などについて、帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金に算入することができるとしています。現物がその場に残っていても、除却として処理できるということです。
ここで求められるのは、今後使う可能性がないと認められることです。単に今は使っていないというだけでは足りません。同じ機能の新しい機器を導入した、その診療科目をやめた、部品の供給が終了して修理できないといった、使わない理由を説明できる状態が必要です。
表 除却の方法
📌 処分見込価額をどう考えるか
除却損の金額は、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額です。処分見込価額とは、その資産をスクラップとして処分した場合に得られると見込まれる金額をいいます。
医療機器の場合、中古市場で値がつくものであれば、その相場が処分見込価額になります。買取業者に査定を依頼して、その金額を記録しておくと根拠になります。
一方で、法定の耐用年数を大きく超えて使用してきた機器や、部品供給が終了している機器であれば、処分見込価額はゼロに近くなります。この場合は帳簿価額のほぼ全額が除却損になります。
なお、撤去に費用がかかる場合、その撤去費用は除却損とは別に、支出した事業年度の損金または必要経費になります。
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📌 決算前に院内を見て回る
除却は、決算対策として使える数少ない手段のひとつです。実際に使っていない資産があるのであれば、それを帳簿から落とすだけで損金が生まれます。追加の支出はありません。
ただし、決算の直前に思い出しても、その年度に使用を廃止した事実を作れるわけではありません。日頃から、機器を入れ替えたとき、診療体制を変えたときに、旧資産をどうするかを決めておくことが大切です。
固定資産台帳を印刷して院内を回り、実際にどの資産が稼働しているかを確認する。これを年に一度行うだけで、除却の漏れは大きく減ります。台帳にあって現物がない資産が見つかることもあります。
また、リース資産やソフトウェアも同じ考え方で確認してください。使わなくなった電子カルテのオプション機能や、更新をやめたシステムが資産として残っていることがあります。
図 実行の手順
使っていない資産の除却は、追加の支出なく損金を計上できる方法です。固定資産台帳の点検からお手伝いします。医療法人の設立支援と医療機関の税務顧問を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。医療法人の設立支援と医療機関の税務顧問を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 法人税基本通達7-7-2により、使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産などについては、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を除却損として損金に算入できます。現物が残っていても処理は可能です。ただし、今後使う可能性がないと認められることが必要ですので、その理由を説明できるようにしてください。
A. 予備機として稼働できる状態で保管しているのであれば、今後事業の用に供する可能性がないとはいえません。除却は認められないと考えるべきです。
A. 中古市場で値がつくのであれば、その金額が処分見込価額になります。買取業者の査定を取って記録しておくと根拠になります。耐用年数を大きく超えて使用してきた機器や、部品供給が終了している機器であれば、ゼロに近い金額になることもあります。
A. 除却損とは別に、支出した事業年度の損金または必要経費になります。除却損と撤去費用を分けて計上してください。
A. 考え方は同じです。使わなくなった電子カルテのオプション機能や更新をやめたシステムが資産として残っていることがあります。固定資産台帳を確認する際は、有形の資産だけでなくソフトウェアも見てください。
📄 まとめ
使っていない医療機器を除却すると、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額が損金または必要経費になります。追加の支出を伴わずに損金を計上できる方法です。
実際に廃棄する場合は処理業者の伝票やマニフェストを保存します。撤去が難しい場合は、法人税基本通達7-7-2にもとづく、いわゆる有姿除却として処理できます。ただし、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められることが必要で、予備機として稼働できる状態で保管しているものは対象になりません。
決算の直前に思い出しても間に合いません。年に一度、固定資産台帳を出力して院内の現物と突き合わせる習慣をつけてください。台帳にあって現物がない資産が見つかることもあります。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税基本通達7-7-2(いわゆる有姿除却)
- 同通達の内容は、国税庁が公表する法人税および源泉所得税に関する質疑応答資料において引用されています
- 法人税法22条3項(各事業年度の損金の額に算入すべき金額)
- 所得税法37条1項(必要経費)、同法51条1項(資産損失の必要経費算入)
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一および別表第三
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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