J-KISSの転換価額は、バリュエーションキャップとディスカウントの2つの物差しで決まります。
どちらか一方ではありません。両方で計算して、投資家にとって有利なほう、つまり1株当たりの価額が低いほうを使うのが一般的な設計です。
ここを取り違えると、資本政策表の希薄化の見込みが実態とずれます。次のラウンドに入ってから気づくと、もう動かせません。
- キャップとディスカウントの違い
- どちらが採用されるのか
- 数字を置いた計算の流れ
- キャップの水準が次のラウンドに与える影響
- 算定式を発行時に書き切る必要があること
📌 結論 低いほうの価額が使われる
キャップとディスカウントは、どちらか一方ではなく両方を置くのが一般的です。そして転換のときに比べます。
バリュエーションキャップは、転換のときに使う企業価値の上限です。次回ラウンドの評価がキャップを超えても、キャップの金額で計算します。
ディスカウントは、次回ラウンドの1株当たりの価額から一定割合を割り引くものです。誰よりも早くリスクを取ったことへの見返りにあたります。
転換のときは両方を計算して、投資家にとって有利なほうを採ります。1株当たりの価額が低いほど、同じ払込金額でより多くの株式を取得できるためです。
🧭 計算の順番
計算の順番はこの5段です。どの株式数で割るかが実務の争点になります。
次回の資金調達で1株当たりの価額が決まったら、ディスカウント方式とキャップ方式の2つを計算し、低いほうを転換価額にします。そして払込金額を転換価額で割って、交付する株式数を出します。
実務の争点は、キャップを何で割るかです。発行済株式総数だけで割るのか、新株予約権やストックオプションを含めた完全希薄化後の株式数で割るのかで、結果が変わります。
この点は希薄化の話のほうで詳しく整理します。契約書の定義条項を必ず読んでください。
キャップとディスカウントの条件を入れて、次回ラウンドの評価がいくらならどれだけ薄まるのかを数字で見ておくと、交渉の景色が変わります。公認会計士が資本政策表の作成からお手伝いします。初回のご相談は無料です。
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🧾 数字を置いて考える
数値はすべて説明のための仮定です。次回の評価がキャップを大きく超えるほど、キャップ方式が効いてきます。
数値はすべて説明のための仮定です。実際の条件は契約で決まります。
次回の評価がキャップを大きく超えるほど、キャップ方式のほうが低い価額になり、キャップが効いてきます。逆に次回の評価がキャップに届かなければ、ディスカウント方式が働きます。
つまりキャップは、うまくいったときに投資家の取り分を確保する仕組みです。会社がうまくいくほど、キャップの効き方が大きくなります。
📅 キャップの水準が次のラウンドに効く
キャップは次回ラウンドの実質的な下限評価として受け取られることがあります。次の投資家との交渉に影響する点に注意してください。
キャップを低く置けば投資家は集まりやすくなりますが、次回ラウンドで想定以上に薄まります。高く置けば希薄化は抑えられますが、投資家から見た旨みは小さくなります。
もうひとつ、キャップは次回ラウンドの実質的な下限評価として受け取られることがあります。次の投資家が、前回のキャップを参照点にして評価を語り始めるということです。
算定式は新株予約権の内容として発行時に定めます。会社法第236条第1項第2号が、行使に際して出資される財産の価額またはその算定方法を定めるとしているためです。あとから直せません。
複数のJ-KISSを別々の条件で発行している会社では、転換のときに条件がぶつかります。2回目以降を出す前に、1回目の条件を必ず読み返してください。
❓ よくある質問
A. 両方を計算して、1株当たりの価額が低いほうを使うのが一般的な設計です。
A. 転換のときに使う企業価値の上限です。次回の評価がこれを超えても、この金額で計算します。
A. 次回ラウンドの1株当たりの価額から一定割合を割り引くものです。
A. 契約の定義によります。完全希薄化後の株式数で割る設計が多いですが、必ず条項を確認してください。
A. ディスカウント方式のほうが低くなるため、そちらが使われます。
A. 新株予約権の内容として発行時に定めるものです。変更には別途の手続が必要になります。
A. 可能ですが、条件が異なると転換時に整理が必要です。先に発行した分の条項を読み返してください。
A. 会社の状況と投資家によって大きく異なります。他社の数値をそのまま持ち込まないでください。
📄 まとめ
転換価額は、キャップ方式とディスカウント方式を比べて低いほうを使います。
次回の評価がキャップを超えるほど、キャップが効いて投資家の取り分が増えます。
キャップを何で割るかは契約の定義次第です。完全希薄化後の株式数で割るのかどうかを確認してください。
条件を決める前に、次回ラウンドの評価をいくつか置いて希薄化を試算してください。数字を見てから交渉するのとしないのとでは、結果が変わります。
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。
記事中の数値はすべて説明のための仮定です。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。
📚 参考(公的な一次情報)
- 会社法(e-Gov法令検索) 第236条第1項第2号
- コンバーティブル投資手段活用ガイドライン(経済産業省)