賞与引当金の計算方法|いつからいくら積むか、未払費用・未払金との違い

賞与引当金の計算方法

賞与引当金は、決算時点で支給額が確定していない従業員賞与について、支給見込額のうち当期に帰属する額を計上するものです。計算は「支給見込額×支給対象期間のうち当期に属する月数÷支給対象期間の月数」で、根拠は企業会計原則注解の注18です。支給額が確定していれば、賞与引当金ではなく未払費用または未払金で計上します。

  • 支給額の確定には、各人別の額だけでなく、支給率・支給月数・支給総額が確定している場合も含まれる(日本公認会計士協会 審理情報第15号)
  • 賞与に対応する社会保険料の事業主負担分も見積もり、賞与引当金に含めるか未払費用とするかを決めて毎期同じ方法にする
  • 法人税では賞与引当金の繰入額は損金にならない。損金になる時期は施行令第72条の3で決まる

2026年10月12日更新

従業員の賞与はすべて賞与引当金なのか。違います。

支給額が確定していて支給対象期間に対応して算定される場合は未払費用、支給額は確定しているが支給対象期間以外の基準で算定される場合は未払金、支給額が確定していない場合に賞与引当金です。

そして賞与引当金だけを定めた会計基準はありません。根拠は企業会計原則注解の注18、引当金の4要件です。

この記事でわかること

  • 未払費用・未払金・賞与引当金の使い分け
  • 根拠が企業会計原則注解 注18であること
  • 賞与引当金だけの会計基準がないこと
  • いくら積むかの考え方
  • 社会保険料の事業主負担分の扱い
  • 上場準備で問われること

📌 結論 科目が3つに分かれる

図1 科目は3つに分かれる場面科目支給額が確定しており、支給対象期間に対応して算定される未払費用支給額は確定しているが、支給対象期間以外の基準(成功報酬的賞与等)で算定される未払金支給額が確定していない支給見込額のうち当期に帰属する額を賞与引当金

日本公認会計士協会のリサーチ・センター審理情報第15号の整理です。すべてが賞与引当金になるわけではありません。

日本公認会計士協会のリサーチ・センター審理情報第15号「未払従業員賞与の財務諸表における表示科目について」が、この3区分を示しています。

支給額が確定しているかどうか、そして支給対象期間に対応して算定されているかどうか。この2つで分かれます。

実務では、決算日までに支給額が確定していない会社が多いため、賞与引当金になることが多くなります。ただし、確定していれば未払費用や未払金です。機械的に賞与引当金としないでください。

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📐 引当金の4要件

図2 引当金の4要件要件内容将来の特定の費用又は損失であること漠然とした将来の支出ではありませんその発生が当期以前の事象に起因すること当期以前の労働の対価であること発生の可能性が高いこと可能性の低い偶発事象については計上できませんその金額を合理的に見積ることができること算定の根拠を示せること

企業会計原則注解の注18です。賞与引当金もここに帰着します。賞与引当金だけを定めた会計基準はありません。

企業会計原則注解の注18は、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れる、としています。

そして注18は、引当金の例として賞与引当金を挙げています。ただしそれ以上の具体的な計算方法は定めていません。

なお、発生の可能性が高いという要件について、注18に数値基準はありません。何パーセント以上、という基準を持ち出さないでください。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

🧮 いくら積むか

図3 いくら積むか賞与の支給対象期間を確認する(例:10月から3月分を6月に支給)支給見込額を見積もる(過去の支給実績、業績連動の算式、社内規程)支給対象期間のうち当期に属する月数の割合を出す支給見込額のうち当期に帰属する額を計上する社会保険料の事業主負担分の扱いを決める

支給対象期間と決算期のずれをどう按分するかが計算の中心です。規程に支給対象期間が書かれていない会社は、そこから整えてください。

計算の中心は、支給対象期間と決算期のずれをどう按分するかです。10月から3月分を6月に支給する会社であれば、3月決算なら支給対象期間が全部当期に入ります。4月から9月分を12月に支給するなら、決算期をまたぎます。

ここで問題になるのが、支給対象期間が社内規程に書かれていない場合です。書かれていなければ按分の根拠がありません。まず規程を整えてください。

社会保険料の事業主負担分を含めるかどうかも決めておきます。含める場合は、その分も同じ考え方で按分します。年度によって扱いが揺れないようにしてください。

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🔍 上場準備で問われること

図4 上場準備で問われること論点確かめること規程の有無賞与の支給対象期間、支給日、算定方法が規程に書かれているか見積りの根拠支給見込額の算定根拠が資料で残っているか継続性毎期同じ方法で計算しているか社会保険料事業主負担分を含めているかどうかが年度間で揺れていないか役員賞与との区別役員賞与は企業会計基準第4号の話です。従業員賞与と分けて扱います

計上していないことより、計算の根拠が説明できないことのほうが問題になります。

審査や監査で問われるのは、計上しているかどうかよりも、計算の根拠が説明できるかどうかです。

支給見込額をどう見積もったのか。過去の実績か、業績連動の算式か、個人別の査定か。資料が残っていないと、毎期同じ議論をすることになります。

そして役員賞与とは分けてください。役員賞与は企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」の話です。従業員賞与とは別の論点になります。

🧾 計算例と仕訳(3月決算・夏季賞与の場合)

架空の数字で計算します。3月決算の会社で、夏季賞与の支給対象期間が12月1日から5月31日まで(6か月)、支給日が6月30日と賃金規程に定められているとします。決算日の3月31日時点では支給額が確定しておらず、過去の支給実績と当期の業績から、支給見込額を3,600万円と見積もりました。

項目 金額・月数 計算
支給見込額 3,600万円 過去の実績と業績から見積もる
支給対象期間 6か月 12月1日〜5月31日
うち当期に属する月数 4か月 12月〜3月
賞与引当金 2,400万円 3,600万円×4÷6
社会保険料の事業主負担分 360万円 2,400万円×15%(料率は仮の数字)

期末の仕訳は次のとおりです。

賞与引当金繰入額 2,400万円/賞与引当金 2,400万円
法定福利費 360万円/未払費用 360万円

社会保険料分を賞与引当金に含めて表示するか、未払費用とするかは、会社の方針として決めて毎期同じにします。冬季賞与(6月1日から11月30日までの分を12月に支給)は期中に支払が済んでいるので、3月末の引当ての対象になりません。

翌期の6月30日に、実際の支給額が3,690万円に決まって支給したとします(源泉所得税や従業員負担の社会保険料は省略します)。

賞与引当金 2,400万円、賞与 1,290万円/現金預金 3,690万円

借方は2,400万円+1,290万円=3,690万円で貸方と一致します。1,290万円のうち1,200万円(3,600万円×2÷6)は4月・5月分、残る90万円は見込額と実際額の差です。差額は支給した期の費用として処理します。差額が毎期大きいなら、見積りの方法そのものを見直してください。

💼 法人税の扱い(賞与引当金は損金にならない)

法人税法には、賞与引当金の繰入額を損金の額に算入する規定がありません。使用人賞与がどの事業年度の損金になるかは、法人税法施行令第72条の3が3つに分けて定めています。

区分(施行令第72条の3) 要件 損金になる事業年度
第1号 労働協約または就業規則で定める支給予定日が到来し、支給額を通知し、損金経理している 支給予定日または通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度
第2号 支給額を各人別に、同時期に支給を受ける全ての使用人に通知し、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に全員に支払い、通知した事業年度に損金経理している 通知をした日の属する事業年度
第3号 上記以外 支払った日の属する事業年度

上の計算例の2,400万円は、決算時点で支給額が確定していない見込額です。当期は損金にならないので、申告書の別表四で2,400万円を加算(留保)し、翌期に支給した事業年度で減算します。決算日までに各人別の支給額を通知し、翌月中に支払うなど第2号の要件を満たせば、その賞与は未払賞与として当期の損金にできます。その手順は決算賞与を今期の損金にできるかにまとめています。

決算月と支給月の組み合わせで見る引当ての要否

3月決算の会社で、よくある賞与の定め方ごとに整理すると次のとおりです(支給額は決算日時点で確定していないものとします)。

賞与の定め方 3月末の扱い 当期に属する割合
夏季:12月〜5月分を6月に支給 賞与引当金を計上 6か月のうち4か月(12月〜3月)
冬季:6月〜11月分を12月に支給 期中に支給済みで計上なし -
夏季:10月〜3月分を6月に支給 賞与引当金を計上 6か月の全部
冬季:4月〜9月分を12月に支給 期中に支給済みで計上なし -
決算賞与:3月中に各人別の額を通知し4月に支給 支給額が確定しているので未払費用または未払金 確定額の全部

同じ6月支給でも、支給対象期間の定め方で当期に属する割合が変わります。規程に期間が書かれていないと、この表のどの行に当たるのかを説明できません。

❓ よくある質問

Q. 従業員賞与は必ず賞与引当金ですか。

A. 違います。支給額が確定し支給対象期間に対応して算定される場合は未払費用、支給対象期間以外の基準で算定される場合は未払金です。

Q. 賞与引当金の会計基準はありますか。

A. 賞与引当金だけを定めた会計基準はありません。企業会計原則注解の注18に帰着します。

Q. 引当金の要件は。

A. 将来の特定の費用又は損失であること、発生が当期以前の事象に起因すること、発生の可能性が高いこと、金額を合理的に見積ることができることの4つです。

Q. 発生の可能性が高いとは何パーセントですか。

A. 注18に数値基準はありません。

Q. いくら積みますか。

A. 支給見込額のうち当期に帰属する額です。支給対象期間で按分します。

Q. 社会保険料の事業主負担分は。

A. 含めるかどうかを決めて、毎期同じ扱いにしてください。

Q. 規程に支給対象期間がありません。

A. 按分の根拠がありません。まず規程を整えてください。

Q. 役員賞与も同じですか。

A. 違います。役員賞与は企業会計基準第4号の話です。

Q. 賞与引当金は税務上も損金になりますか。

A. なりません。法人税法には繰入額を損金に算入する規定がなく、使用人賞与の損金算入時期は施行令第72条の3で決まります。決算時点で支給額が確定していない見込額は、別表四で加算します。

Q. 見込額と実際の支給額がずれたらどうしますか。

A. 差額は支給した期の費用として処理します。差額が毎期大きいなら、支給見込額の見積り方法を見直してください。

📄 まとめ

未払費用、未払金、賞与引当金。支給額が確定しているか、支給対象期間に対応して算定されているかで分かれます。

賞与引当金だけの会計基準はありません。企業会計原則注解の注18の4要件が根拠です。

金額は支給見込額のうち当期に帰属する額。按分の根拠は社内規程です。

いま規程に支給対象期間が書かれていないなら、そこから直してください。会計処理はそのあとです。

📚 参考(公的な一次情報)

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