持分法から連結に変わったときの処理
持分法を適用していた関連会社の株式を買い増して子会社にした場合、連結財務諸表上は既存の持分も含めて支配獲得日(企業結合日)の時価で取得原価を算定し、持分法による評価額との差額を「段階取得に係る損益」として当期の損益にします(企業会計基準第21号 第25項(2))。個別財務諸表上は取得原価の合計額のままで、損益は出ません。
- 比べる相手は取得原価の合計額ではなく、持分法による評価額です
- 子会社の資産・負債は支配獲得日の時価で評価し直し、のれんも支配獲得日の数字で計算し直します(移管指針第4号 第35項)
- 持分法のときののれんの未償却残高は区別せず、支配獲得日から新しい償却期間で償却します(同 第36項)
2026年10月12日更新
持分法を適用していた関連会社の株式を買い増して子会社にした。連結で利益が出るのはなぜか。
段階取得に係る損益です。企業会計基準第21号の第25項が定めています。個別財務諸表では出ません。連結財務諸表だけで出ます。
理由は取得原価の算定方法が違うからです。個別は個々の取引ごとの原価の合計額、連結は個々の取引すべての企業結合日における時価。この差が損益になります。
- 段階取得に係る損益が連結だけで出ること
- 個別と連結で取得原価の算定が違うこと
- 比較の相手が持分法による評価額になること
- 根拠が企業会計基準第21号 第25項であること
- 既存持分の時価の算定が論点になること
- 用意しておく資料
📌 結論 連結だけで出る
企業会計基準第21号 第25項です。段階取得に係る損益は連結上だけで出ます。個別では出ません。
第25項は、取得が複数の取引により達成された場合、つまり段階取得における被取得企業の取得原価の算定について、個別財務諸表上と連結財務諸表上で分けて定めています。
個別財務諸表上は、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって取得原価とします。単純な積み上げです。
連結財務諸表上は、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって取得原価を算定します。そして当該取得原価と個々の取引ごとの原価の合計額との差額を、当期の段階取得に係る損益として処理します。
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🔄 持分法からの移行
持分法適用関連会社と企業結合した場合、比較の相手は持分法による評価額です。原価の合計額ではありません。
持分法を適用していた関連会社を子会社にした場合、比較の相手が変わります。第25項(2)のなお書きに、持分法適用関連会社と企業結合した場合には持分法による評価額とする、という括弧書きが入っています。
つまり、既存持分の帳簿価額は取得原価の単純合計ではなく、持分法によって評価された金額です。持分法適用期間中の利益の取り込みや、のれん相当額の償却が反映された金額になります。
この読み替えを落とすと、段階取得に係る損益の金額が変わります。持分法の未実現損益の扱いとあわせて確認してください。
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公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援と内部統制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
📐 条文の読み方
第25項(2)のなお書きに、持分法適用関連会社と企業結合した場合の読み替えが括弧書きで入っています。ここが実務で効きます。
第25項は1つの項の中に、個別と連結の両方が書かれています。(1)が個別、(2)が連結です。
そして(2)のなお書きに差額の処理と、持分法適用関連会社の場合の読み替えが入っています。短い条文ですが、実務で必要な情報がすべてここに詰まっています。
なお、段階取得に係る損益を損益計算書のどの区分に表示するかは、第25項には書かれていません。表示区分については別に確かめてください。
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🛠 用意するもの
既存持分の時価をどう出したかが必ず問われます。第三者算定書を取るかどうかも含めて、早めに決めてください。
いちばん問われるのは、既存持分の企業結合日における時価をどう算定したかです。非上場会社であれば、第三者による算定を取るかどうかも含めて検討することになります。
あわせて、支配獲得日の子会社の資産と負債の時価評価も必要です。資本連結の入口ですので、こちらも同時に進めます。
計算過程は必ず書面に残してください。段階取得に係る損益は金額が大きくなりやすく、監査でも審査でも必ず見られる項目です。
🧮 段階取得に係る損益の計算例
架空の数字で、個別と連結の違いと、持分法による評価額を比べる相手にする理由を確かめます。
P社はX1年3月期の期首にA社株式の30%を300で取得し、持分法を適用してきました。X3年3月期の期首に、A社株式の50%を600で追加取得し、あわせて80%を持つ子会社にしました。この日を支配獲得日とします。支配獲得日の直前の持分法による評価額は330で、差額の30は前期までに計上した持分法による投資利益です(持分法のときののれん相当額はないものとします)。追加取得の価格などから、既存の30%の支配獲得日の時価は360と算定されました。支配獲得日のA社の資産・負債を時価で評価した純資産は1,000です。説明を簡単にするため税効果は考えません。
| 項目 | 個別財務諸表 | 連結財務諸表 |
|---|---|---|
| A社株式の取得原価 | 900(300+600) | 960(時価360+600) |
| 既存30%の金額 | 300(取得原価のまま) | 支配獲得の直前は330(持分法による評価額)、支配獲得日に時価360 |
| 段階取得に係る損益 | 生じない | 差益30(960-(330+600)) |
| のれん | — | 160(960-1,000×80%) |
| 非支配株主持分 | — | 200(1,000×20%) |
連結修正仕訳
| 仕訳 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 持分法による評価額への修正(前期までの持分法の開始仕訳) | A社株式 30 | 利益剰余金期首残高 30 |
| 既存持分の時価への評価替え | A社株式 30 | 段階取得に係る差益 30 |
| 投資と資本の相殺消去 | A社の資本(評価差額を含む) 1,000 のれん 160 |
A社株式 960 非支配株主持分 200 |
個別のA社株式900に30と30を足すと960になり、相殺消去で残高がなくなります。相殺消去の借方は1,000+160=1,160、貸方は960+200=1,160で一致します。
段階取得に係る差益が30になるのは、比べる相手が持分法による評価額330だからです。取得原価300と比べて60としてしまうと、持分法で前期までに取り込んだ利益30を、もう一度利益に計上することになります。第25項(2)の括弧書きは、この二重計上を防ぐための読み替えです。
反対に、既存持分の時価が持分法による評価額を下回れば、段階取得に係る損失になります。
📋 支配獲得日の前と後で変わること
持分法から連結に変わると、評価差額とのれんの計算も、損益の取り込み方も切り替わります。移管指針第4号の第35項は、関連会社が段階取得で連結子会社になった場合、支配獲得日の時価に基づいて評価差額を計上し直し、持分法のときののれんも新たに計算するのれんに含める考え方をとっています。第36項は、そののれんを、持分法のときの未償却部分と区別せずに支配獲得日から新しい償却期間で償却するとしています。
| 項目 | 支配獲得日より前(持分法) | 支配獲得日以後(連結) |
|---|---|---|
| A社の損益の取り込み | 持分比率30%分を「持分法による投資損益」1行で取り込む | 損益計算書の各科目に全額を合算し、20%分を非支配株主に帰属する当期純利益とする |
| 評価差額 | 持分法を適用したときの時価で計算 | 支配獲得日の時価で計算し直す(移管指針第4号 第35項) |
| のれん | 投資の額に含めて償却(のれん相当額) | 支配獲得日の投資(時価)と資本の差額で計算し直し、支配獲得日から新しい償却期間で償却(同 第36項) |
| 既存持分の金額 | 持分法による評価額 | 支配獲得日の時価に評価替えし、差額を段階取得に係る損益とする(第21号 第25項(2)) |
| 非支配株主持分 | なし | 支配獲得日の時価による資本に、非支配株主の持分比率を掛けて計上 |
実務で数字が合わなくなるのは、持分法のときの評価差額やのれん相当額の残高をそのまま引き継いでしまう場合です。支配獲得日でいったん区切り、時価評価とのれんを計算し直してください。資本連結の手順は資本連結でのれんはどう出るかで、その後に持分比率が変わる場合は非支配株主持分はどの時点の比率で計算するかで扱っています。
❓ よくある質問
A. 出ません。連結財務諸表上だけです(第25項(1)(2))。
A. 支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価です。
A. 個々の取引ごとの原価の合計額です。持分法適用関連会社と企業結合した場合は持分法による評価額です。
A. 企業会計基準第21号 第25項です。
A. 企業結合日における時価です。非上場会社では算定方法と根拠を書面に残してください。
A. 第25項には表示区分の定めがありません。別に確かめてください。
A. あります。条文は段階取得に係る損益としています。
A. 買い増しを決める前です。連結上の影響を先に試算してください。
A. 持分法を適用していた場合は違います。比べる相手は持分法による評価額です(第25項(2)の括弧書き)。取得原価の合計額と比べると、持分法で取り込み済みの利益を二重に計上します。
A. 引き継ぎません。支配獲得日の時価で評価差額とのれんを計算し直し、持分法のときの未償却部分も区別せずに、支配獲得日から新しい償却期間で償却します(移管指針第4号 第35項・第36項)。
📄 まとめ
段階取得に係る損益は連結だけで出ます。個別と連結で取得原価の算定方法が違うためです。
持分法適用関連会社を子会社にした場合、比較の相手は持分法による評価額になります。
実務で問われるのは既存持分の時価の算定根拠です。書面に残してください。
買い増しを実行してから処理を考えるか、実行前に試算するか。金額が大きくなりやすい論点ですので、先に試算しておくことをおすすめします。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準委員会) 第25項
- 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準委員会) 第23項、第24項
- 移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(企業会計基準委員会) 第8項、第35項、第36項
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