資産除去債務の注記に何を書くか。企業会計基準第18号の第16項が5つの事項を挙げています。
実務でよく落ちるのが、支出発生までの見込期間と、計上していない債務の注記です。割引率だけを書いて済ませている例や、見積りができないから何も書いていない例を見かけます。
この記事では、5つの事項を確認したうえで、それぞれ何を書くのか、どんな資料が必要かを整理します。
- 注記事項が第16項に5つ挙げられていること
- 重要性が乏しい場合を除き、と柱書にあること
- 前提条件として見込期間と割引率の両方を書くこと
- 期中の増減内容を示す必要があること
- 見積りを変更したら概要と影響額を書くこと
- 計上していない債務にも注記があること
📌 結論 5つの事項が挙げられている
柱書は、資産除去債務の会計処理に関連して、重要性が乏しい場合を除き、次の事項を注記する、としています。重要性が乏しければ省略できますが、その判断の根拠は残しておいてください。
企業会計基準第18号の第16項は、資産除去債務の会計処理に関連して、重要性が乏しい場合を除き、次の事項を注記する、としています。
(1)が資産除去債務の内容についての簡潔な説明、(2)が支出発生までの見込期間、適用した割引率等の前提条件、(3)が資産除去債務の総額の期中における増減内容、(4)が見積りを変更したときの変更の概要および影響額、そして(5)が計上していない場合の取扱いです。
柱書に、重要性が乏しい場合を除き、とあります。省略する場合は、なぜ重要性が乏しいと判断したのかを社内資料に残しておいてください。監査で必ず聞かれます。
📐 前提条件をどう書くか
割引率だけを書いて見込期間を落としている例をよく見ます。条文は両方を挙げています。複数の債務があるときは、率も期間も範囲で示す形が実務的です。
(2)は、支出発生までの見込期間、適用した割引率等の前提条件、としています。割引率だけでは足りません。見込期間も書きます。
複数の物件について資産除去債務を計上している場合、見込期間も割引率も一つではありません。実務では範囲で示す形が多く見られます。何年から何年、何パーセントから何パーセント、という書き方です。
割引率の決め方そのものについては資産除去債務の割引率は何を使うかで扱っています。注記に書く率は、そこで決めた率です。
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🔢 増減内容の作り方
この動きが説明できる形で残っていないと、注記が作れません。債務ごとの明細を持っておくのが結局いちばん早い道です。
(3)は、資産除去債務の総額の期中における増減内容です。期首から期末までの動きを示します。
動きの要素は決まっています。新たな債務の発生、時の経過による調整額、見積りの変更による増減、そして履行による減少です。
この表を毎期作ろうとして、債務ごとの明細がなくて詰まる、という会社が多くあります。明細を持っていれば、増減表は明細を合計するだけです。最初に作っておくのがいちばん早い道です。
見積りを変更したとき
(4)は、資産除去債務の見積りを変更したときは、その変更の概要および影響額、としています。何をどう変えたのか、その結果いくら動いたのかを書きます。
原状回復費用の見積書を取り直した、法令が変わって処理方法が変わった、除去の時期の見込みが変わった。理由はいろいろですが、概要として書けるようにしておいてください。
📄 計上していない場合の注記
普通借家で見積りができないという場合は(5)の出番です。計上していないから何も書かない、ではありません。
(5)は見落としやすいところです。資産除去債務は発生しているが、その債務を合理的に見積ることができないため、貸借対照表に資産除去債務を計上していない場合には、当該資産除去債務の概要、合理的に見積ることができない旨およびその理由を注記する、とされています。
普通借家で、いつ退去するかの見込みが立たない、という場合がこれに当たり得ます。計上していないから注記も不要、ということにはなりません。
この場面の考え方は新リース会計基準で普通借家の資産除去債務は計上必要かにまとめています。
そして、書くのであれば、なぜ合理的に見積ることができないのかを説明する必要があります。単に見積っていないというだけでは理由になりません。
❓ よくある質問
A. 第16項に5つ挙げられています。
A. 柱書に、重要性が乏しい場合を除き、とあります。省略する場合は判断の根拠を残してください。
A. (2)は、支出発生までの見込期間、適用した割引率等の前提条件としています。見込期間も書きます。
A. 実務では範囲で示す形が多く見られます。
A. 新たな債務の発生、時の経過による調整額、見積りの変更による増減、履行による減少です。
A. (4)により、変更の概要および影響額です。
A. (5)があります。概要、合理的に見積ることができない旨、およびその理由を注記します。
A. 債務ごとの明細です。物件、内容、見込期間、割引率、期首残高、当期の増減、期末残高。これがあれば注記は作れます。
📄 まとめ
注記事項は第16項に5つあります。内容の説明、前提条件、期中の増減内容、見積りの変更、そして計上していない場合の取扱いです。
前提条件は、支出発生までの見込期間と適用した割引率等です。割引率だけでは足りません。
増減内容を毎期作るには、債務ごとの明細が要ります。ここを最初に整えておくと、以後の作業がまったく変わります。
そして、計上していない債務にも注記があります。合理的に見積ることができない旨とその理由を書いてください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第9項、第10項、第11項、第16項
- 企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第2項、第5項
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