少額減価償却資産は10万・20万・30万のどれを使うか|判定と限度額

パソコンを買った。備品を入れ替えた。この金額なら一度に落とせるのか、それとも償却するのか。

選択肢は4つあります。10万円未満の少額の減価償却資産、20万円未満の一括償却資産、30万円未満の中小企業者等の特例、そして通常の減価償却です。金額だけでなく、会社の規模や年間の取得額でも変わります。

この記事では、4つの制度の要件を並べたうえで、どの順番で決めるかと、判定でよく問題になるところを整理します。

この記事でわかること

  • 10万円未満・20万円未満・30万円未満で3つの制度があること
  • 30万円未満の特例は中小企業者等に限られ、年300万円が限度であること
  • その適用期限が令和8年3月31日までとされていること
  • 判定が通常1単位として取引されるその単位ごとであること
  • 消費税の経理方式によって判定額が変わること
  • 貸付けの用に供したものが特例の対象外であること

📌 結論 金額と会社の規模で決まる

図1 4つの選択肢制度金額処理根拠少額の減価償却資産取得価額が10万円未満事業年度に取得価額の全額を損金経理す法人税法施行令 第133条一括償却資産取得価額が20万円未満一括した取得価額の合計額を3年間で償却する法人税法施行令 第133条の2中小企業者等の特例取得価額が30万円未満事業の用に供した事業年度に損金算入する(年300万円が限度)租税特別措置法 第67条の5通常の減価償却上記によらない場合法定耐用年数で償却する

10万円未満は誰でも使えます。20万円未満の一括償却資産も同じです。30万円未満の特例は中小企業者等に限られ、しかも年300万円という枠があります。

まず10万円未満です。取得価額が10万円未満のものは、その事業年度に取得価額の全額を損金経理すれば、その全額が損金になります。会社の規模は問われません。

次に20万円未満です。取得価額が20万円未満の減価償却資産については、各事業年度ごとに、その全部または一部を一括したものの取得価額の合計額を3年間で償却する方法があります。これが一括償却資産です。こちらも会社の規模は問われません。

そして30万円未満です。中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例で、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、事業の用に供した事業年度に損金算入できます。ただし対象になる法人が限られ、年300万円という枠があります。

🏢 30万円未満の特例が使える会社

図2 30万円未満の特例を使える会社要件内容法人の区分中小企業者または農業協同組合等で、青色申告書を提出するもの従業員数常時使用する従業員の数が500人以下(特定法人については300人以下)適用期限平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合限度額適用事業年度における取得価額の合計額が300万円を超えるときは300万円までが限度(事業年度が1年に満たない場合は按分)除外される資産貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したもの。取得価額が10万円未満のもの。一括償却資産の損金算入制度の適用を受けるもの

適用期限は令和8年3月31日までです。この記事の作成時点では延長の有無を一次情報で確認できていません。取得の予定を立てるときは、最新の情報をご確認ください。

対象は、中小企業者または農業協同組合等で、青色申告書を提出するものです。あわせて、常時使用する従業員の数が500人以下であることが求められます。特定法人については300人以下です。

限度額は、適用事業年度における取得価額の合計額が300万円を超えるときは300万円までです。事業年度が1年に満たない場合は按分します。

適用期限は、平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合、とされています。これまで何度か延長されてきた制度ですが、この記事の作成時点では、その先の取扱いを一次情報で確認できていません。設備投資の計画を立てるときは、最新の情報を確認してください。

貸付けに使う資産は対象外

令和4年4月1日以後、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものは、この特例の対象から外れています。本業として貸付けを行っている会社は別ですが、余った資産を貸すという使い方は対象になりません。

固定資産の処理と台帳整備をお引き受けします

どの制度を使うかの判定、年300万円の枠の管理、固定資産台帳の単位の見直しまで対応します。上場準備では、過年度の処理が制度の要件を満たしているかを遡って確かめておく必要があります。あわせてご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。

お問い合わせはこちら修繕費と資本的支出の記事を読む料金の目安を見る

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

🔢 決める順番

図3 どれを使うかを決める順番取得価額はいくらか。通常1単位として取引される単位ごとに判定する10万円未満なら、取得価額の全額を損金経理して終わり10万円以上20万円未満なら、一括償却資産か、中小企業者等の特例かを選ぶ20万円以上30万円未満なら、中小企業者等の特例が使えるかを見る。年300万円の枠の残りも見る使えない、または枠を超えるなら、通常の減価償却になる

同じ資産について、一括償却資産と30万円未満の特例を重ねて使うことはできません。どちらかを選びます。

10万円未満で決着するものが、実務ではいちばん多くなります。ここは迷いません。

10万円以上20万円未満は選択になります。一括償却資産にすると3年で償却しますが、償却資産税の対象にならないという違いがあります。30万円未満の特例で一度に落とすと、その年の損金は大きくなります。どちらを選ぶかは、その年の利益と、償却資産税の負担を見て決めることになります。

20万円以上30万円未満は、特例が使えるかどうかだけの話になります。使えなければ通常の減価償却です。

なお、同じ資産について一括償却資産と30万円未満の特例を重ねて適用することはできません。どちらかを選びます。

⚠️ 判定でつまずくところ

図4 判定でよく問題になるところ論点考え方判定の単位通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。応接セットは1組、カーテンは部屋ごとに判定するとされています消費税の経理方式税抜経理なら税抜きの金額、税込経理なら税込みの金額で判定します。方式によって結論が変わることがあります付随費用引取運賃や据付費など、取得価額に含めるべきものを含めた金額で判定します貸付けに使う資産令和4年4月1日以後、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものは特例の対象外です事業年度が1年未満300万円の限度額は月数で按分します

境界の金額に近い資産は、消費税の経理方式と付随費用の2つで結論が変わります。9万8千円の備品に運賃をつけると10万円を超える、ということが起こります。

判定は、通常1単位として取引されるその単位ごとに行います。応接セットは1組、カーテンは部屋ごとに判定するとされています。机と椅子を別々に数えて10万円未満にする、という処理はここで否定されます。

消費税の経理方式も効いてきます。税抜経理なら税抜きの金額、税込経理なら税込みの金額で判定します。9万5千円の備品は、税抜経理なら10万円未満ですが、税込経理では10万円を超えます。同じ買い物でも扱いが変わります。

付随費用も忘れがちです。引取運賃や据付費など、取得価額に含めるべきものを含めた金額で判定します。本体価格だけで判断すると、あとから直すことになります。

上場準備での見方

上場準備に入ると、固定資産台帳の単位と、資産計上の基準が説明できるかを見られます。同じような資産が、ある期は一括償却、別の期は特例、また別の期は資産計上と分かれていると、方針がないように見えます。

社内の基準を文書にして、それに沿って処理する。この形にしておくと、監査でも税務調査でも説明が短く済みます。台帳の単位の話は修繕費と資本的支出はどちらかにもつながります。

❓ よくある質問

Q. 10万円未満はどう処理しますか。

A. その事業年度に取得価額の全額を損金経理すれば、その全額が損金になります。会社の規模は問われません。

Q. 一括償却資産は何年で償却しますか。

A. 3年間です。各事業年度ごとに、その全部または一部を一括したものの取得価額の合計額を償却します。

Q. 30万円未満の特例は誰でも使えますか。

A. いいえ。中小企業者または農業協同組合等で青色申告書を提出するものに限られ、常時使用する従業員の数が500人以下(特定法人は300人以下)であることが必要です。

Q. 年間の限度はありますか。

A. あります。適用事業年度の取得価額の合計額が300万円を超えるときは300万円までです。事業年度が1年に満たない場合は按分します。

Q. 適用期限はいつまでですか。

A. 平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合とされています。その先の取扱いは最新の情報をご確認ください。

Q. 判定は本体価格だけですか。

A. いいえ。引取運賃や据付費など、取得価額に含めるべきものを含めた金額で判定します。

Q. 税込経理と税抜経理で違いますか。

A. 違います。税抜経理なら税抜きの金額、税込経理なら税込みの金額で判定します。

Q. 一括償却資産と30万円未満の特例は併用できますか。

A. 同じ資産について重ねて適用することはできません。どちらかを選びます。

📄 まとめ

選択肢は3つの制度と通常の減価償却です。10万円未満は取得価額の全額を損金経理する。20万円未満は一括償却資産として3年で償却する。30万円未満は中小企業者等の特例で一度に落とす。

30万円未満の特例は、中小企業者等で青色申告書を提出し、常時使用する従業員の数が500人以下であることが要件です。年300万円という枠もあります。適用期限は令和8年3月31日までとされています。

判定は通常1単位として取引される単位ごとです。消費税の経理方式と付随費用で結論が変わりますから、境界の金額に近いものは注意してください。

そして、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものは特例の対象外です。

📚 参考(公的な一次情報)

  • 法人税法施行令 第133条、第133条の2
  • 租税特別措置法 第67条の5、租税特別措置法施行令 第39条の28
  • 法人税基本通達 7-1-11、7-1-12
  • 国税庁タックスアンサー No.5403、No.5408
IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406