ショートレビューや初年度の監査で、棚卸の手続をもう少し精緻化してくださいと言われることがあります。数を数え違えたわけでもないのに何を直せばよいのか、と受け取られがちですが、指摘されているのは数量の正確さではありません。監査人がその手続に依拠できるかどうか、という話です。
この記事では、監査基準報告書501「特定項目の監査証拠」で監査人に求められている手続を確認したうえで、会社側が何を用意しておけば依拠してもらえるのかを整理します。実地棚卸・立会・実査という言葉の使い分けもあわせて確認します。
- 実地棚卸・立会・実査という言葉の使い分け
- 監査人が立会で見ている4つのこと(監基報501 3項)
- 指摘されやすい5つのポイントと直し方
- カットオフで何を確かめるか
- 期末日以外に実施する場合の追加手続(501 4項)
- リモート立会が例外的な取扱いであること
この記事の見出し
📌 結論 精緻化とは、監査人が依拠できる手続にすること
棚卸の精緻化という言葉で求められているのは、数え間違いをなくすことではありません。手続が設計として成り立っていて、その設計どおりに動いていることを、第三者が確かめられる状態にすることです。
監査基準報告書501は、棚卸資産が財務諸表において重要である場合に、監査人が実地棚卸の立会を実施すべきことを定めています。そこで監査人が行うのは、経営者の指示と手続の評価、実施されている棚卸手続の観察、棚卸資産の実査、テスト・カウントです(3項(1))。あわせて、企業の最終的な在庫記録が実際の実地棚卸の結果を正確に反映しているかどうかを判断するための手続も求められています(3項(2))。
この4つのうち、最初の2つは会社の手続そのものを見ています。実施要領が文書になっていなければ、そもそも評価の対象がありません。精緻化の入口はここです。
もうひとつ押さえておきたいのは、監査人が確かめるのは会社の在庫の数量そのものではなく、会社が作った数量が正しく導かれているかだという点です。監査人は全品を数えませんし、数える立場でもありません。会社の手続が信頼できると判断できたうえで、抜き取りでその結果を確かめます。手続が信頼できないと判断されれば、抜き取りの結果が合っていても、そこから全体を推し量ることができなくなります。
📄 実地棚卸・立会・実査は別のもの
会社側が精緻化すべきなのは実地棚卸の手続です。立会と実査は監査人が行う手続の名前です。
会社の中で棚卸実査という言い方がされることがありますが、実査は監査人が現物を確かめる手続を指す言葉です。会社側が整えるべきなのは実地棚卸の手続で、それに監査人が立ち会うのが立会です。言葉が混ざったまま議論すると、誰が何をするのかがぼやけます。
もっとも、実務では厳密に使い分けられていないので、監査法人から棚卸実査についてと言われたときは、実地棚卸の手続全体を指していると受け取って差し支えありません。
🧭 監査人が立会で見ている4つのこと
見られているのは数量そのものよりも、手続が設計どおりに機能しているかどうかです。
数量よりも、手続の設計が見られている
テスト・カウントで数が合うかどうかは、当然見られます。ただし、そこだけを見ているわけではありません。誰が数えて誰が確認したのか、用紙はどう管理されているのか、数え漏れが起きない導線になっているのか。これらは実施要領と当日の観察で評価されます。
逆に言えば、当日たまたま数が合っていても、手続の設計が確かめられなければ依拠できないという判断になります。ここが、数え間違いをしていないのに指摘される理由です。
会社側から見た備え方
この4つを裏返すと、会社側で用意すべきものが決まります。評価される指示があること、観察されたときに要領どおり動いていること、現物にたどり着けること、抜き取りで数えた結果が会社の記録と合うこと。このうち3つ目は、意外に落とし穴になります。品番の表示が剥がれていたり、保管場所と記録上の場所が違っていたりすると、監査人が現物を特定できません。整理と表示は、当日の朝ではなく前もって手を付けておいてください。
📊 指摘されやすい5つのポイント
いずれも数量の正確さではなく、手続の作り方の問題です。仕組みを直せば毎期の負担はむしろ減ります。
カウントと記録を分けているか
いちばん多いのがこれです。1人で数えて1人で書いていると、誤りが出たときに気づく仕組みがありません。2人1組にして、数える人と確認する人を分け、記録用紙に確認者の署名欄を設けるだけで、指摘の大半は消えます。
タグは連番か
記録用紙に連番が振られていないと、何枚発行して何枚回収したかを突合できません。未使用のタグが回収されずに残っていると、数え漏れがあったのか、そもそも使わなかったのかが区別できなくなります。連番にして、発行枚数と回収枚数を照合する手順を入れてください。
外部にある在庫を把握しているか
外部倉庫に預けている在庫、加工先に出している材料、逆に預かっている他社の在庫。これらは自社の倉庫を数えるだけでは把握できません。保管先ごとに一覧を作り、残高確認を取る宛先を決めておく必要があります。上場準備で拠点や取引が増えている会社ほど、ここが抜けます。
期末前後の数日をどう締めるかを決めておかないと、毎期ここで時間を取られます。
カットオフの線引き
期末日をまたぐ入出庫は、在庫と売上の両方に影響します。検収は期末前なのに在庫計上が期末後になっていれば在庫が過少になり、出荷は期末後なのに売上が期末前に立っていれば売上の期ズレになります。締めの前後数日の伝票を抜き取って、実際の物の動きと計上時点が一致しているかを確かめる手順を、社内の手続として組み込んでおいてください。
いまの棚卸の進め方と、指摘されている内容をお聞かせいただければ、どこを直せば依拠してもらえる水準になるかを整理し、実施要領の形にしてお返しします。上場準備の段階に応じて、どこまで作り込むべきかもあわせてお伝えします。初回のご相談は無料です。
滞留品を数量だけで済ませない
長期に動いていない在庫が、数量には入っているのに評価が検討されていない状態は、よく見かけます。実地棚卸のときに滞留の区分を付けておかないと、決算の段階で改めて洗い出す作業が発生します。数える機会にあわせて区分まで付けておくのが効率的です。
🏢 継続記録があるかどうかで、やることが変わる
継続記録を整備している会社と、そうでない会社では、実地棚卸の位置づけが違います。継続記録がある場合、実地棚卸は帳簿の数量が正しいことを確かめる手段になります。差異が出れば、その原因を分析して記録を直すことになります。
継続記録がない場合、実地棚卸の結果がそのまま期末の在庫金額になります。この場合、実地棚卸の精度がそのまま財務諸表の精度になるため、手続に求められる水準は上がります。上場準備の過程で継続記録の整備を求められるのは、このためでもあります。
どちらの場合でも、差異が出たときにその原因を追える状態にしておくことが求められます。差異を数字だけ合わせて終わりにしていると、原因分析の記録がないという指摘につながります。
継続記録がない会社が上場準備に入ると、まずここが課題になります。継続記録の整備は、システムを入れることと同義ではありません。品目ごとの受入と払出を、日付と数量で追える形で残すことが本質です。表計算での運用から始めた会社もありますが、拠点や品目が増えると破綻しやすいため、拡大の見通しとあわせて仕組みを選んでください。
⚖️ 期末日以外に実施する場合
実地棚卸を期末日に実施できない会社もあります。この場合について監査基準報告書501は4項で、実地棚卸日と期末日の間における棚卸資産の増減が適切に記録されているかどうかについて、追加の監査証拠を入手することを求めています。
会社側で用意しておくべきなのは、実地棚卸日から期末日までの受払記録です。この期間の入出庫が漏れなく記録され、実地棚卸の結果からロールフォワードして期末残高が導けることを示せる必要があります。継続記録がないとこの説明は難しくなるため、期末日以外に実施する予定であれば、継続記録の整備を先に進めておいてください。
ロールフォワードで期末残高を導く場合、その計算の根拠を後から示せることが必要です。実地棚卸の結果、期間中の受入、期間中の払出、そして期末残高。この4つが1枚でつながる資料を、拠点ごとに作っておくと説明が早く終わります。
💻 リモートでの立会は例外的な取扱い
日本公認会計士協会は、監査基準報告書501の周知文書としてリモート棚卸立会に係る周知文書を公表しています。ここでは、リモートでの立会は実地棚卸の立会が実務的に不可能な例外的な場合に限られるとされており、監査人にとっての単なる不便さや費用は理由にならないとされています。
また、ビデオ映像は原本よりも証明力が弱く、発見リスクが生じる点に留意が必要とされています。リモートで実施した場合でも、テスト・カウント、記録用紙の回収、カットオフの確認といった、通常の立会で行う手続を省略することはできないとされています。
拠点が全国に散らばっている会社では、遠隔地の棚卸をリモートで済ませたいという相談が出ますが、これは会社側が決められることではありません。監査人がリモートで足りると判断できる状況かどうかの問題なので、日程を組む段階で相談しておいてください。
なお、リモートで対応する場合でも、会社側の準備は通常の立会より軽くなりません。むしろ、カメラで現物を映す担当、数える担当、記録する担当と人手が要り、通信環境の確保も必要になります。楽になる手段として考えると、当日に想定外の負担が出ます。
✅ 整えるための手順
要領の文書化から始めるのが早道です。文書がないと、監査人は手続の設計そのものを評価できません。
順番としては、実施要領の文書化を最初に置いてください。文書がなければ、監査人は経営者の指示と手続を評価しようがありません。逆に、要領が文書になっていれば、当日の観察はそれと突き合わせる作業になるので、議論が具体的になります。
要領に書くのは、対象範囲、担当と体制、日程、数え方の手順、記録様式、差異が出たときの扱い、責任者の承認です。最初から完璧なものを目指す必要はなく、いまやっていることをそのまま文章にするところから始めれば十分です。
上場準備の全体像の中でどの段階に置くかはIPO準備 完全ガイドを、ショートレビューで何を見られるかはショートレビュー(短期調査)とはをご確認ください。過去の在庫の計上に誤りが見つかった場合の扱いはIPO準備企業の過年度修正で扱っています。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
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📝 実施要領に何を書くか
いまやっていることをそのまま文章にするところから始めれば十分です。最初から完璧を目指す必要はありません。
いまのやり方を文章にするところから
要領がないという会社でも、実際には毎期同じ手順で数えていることがほとんどです。書き起こす作業は、新しい仕組みを作ることではなく、頭の中と口頭で回っているものを文字にすることです。まず当日の流れを時系列で書き、そのうえで担当と様式を埋めていくと早く形になります。
書いてみると、担当者によって数え方が違っていたところや、決まっていなかったところが表に出てきます。そこが指摘の候補です。要領を作る過程そのものが、精緻化の中身になります。
訂正の仕方まで決めておく
見落とされやすいのが、記録用紙を訂正するときの決まりです。消しゴムや修正液で上書きされていると、元の数量が追えません。二重線と訂正印にして、誰がいつ直したのかが残る形にしておいてください。監査人はここを必ず見ます。
要領は作って終わりではなく、毎期見直すものです。差異の原因分析から出てきた改善点を要領に反映していくと、文書が実態から離れません。逆に、作った当初のまま何年も更新されていない要領は、実際の運用と食い違っていることが多く、当日の観察でずれが露見します。
🔍 差異が出たときに何を残すか
差異そのものより、原因を追えるかどうかが見られます。数字だけを合わせた記録は、依拠の対象になりません。
継続記録がある会社では、実地棚卸の結果と帳簿数量の差異が必ず出ます。差異が出ること自体が問題なのではなく、原因を追えていないことが問題になります。帳簿を実地の数に合わせて終わりにしていると、なぜずれたのかが説明できず、翌期も同じずれ方をします。
原因を区分して記録しておくと、どこの手順が弱いのかが見えます。計上漏れが多ければ受入の記録が遅れており、破損廃棄の未処理が多ければ現場の報告ルートに穴があります。差異の一覧は、手続を直すための材料でもあります。
許容範囲を先に決めておく
どの程度の差異なら再カウントを省いてよいのか、どこからは責任者の承認が要るのか。この線引きを実施の前に決めておいてください。事後に決めると、都合のよい線を引いたと見られます。金額でも数量割合でも構いませんが、根拠を要領に書いておくことが必要です。
🏭 業種によって詰まるところが違う
製造業 仕掛品と外注在庫
仕掛品は、どの工程まで進んだものをいくらで評価するかが決まっていないと、数量を数えても金額が固まりません。工程ごとの区分と、そこに紐づく原価の集計方法を先に決めておく必要があります。外注先に出している材料や半製品も、自社の在庫として把握しなければなりません。外注先ごとに残高確認を取る先を洗い出しておいてください。
小売・多拠点 同日実施か日をずらすか
店舗が多い会社では、全店を同じ日に数えられないことがあります。日をずらす場合、拠点ごとに実施日から期末日までの受払を記録する必要が出てきます。監査基準報告書501 4項が求めているのは、まさにこの期間の増減の記録です。拠点間の横持ちが動いていると、二重計上や計上漏れが起きやすいので、実施日の前後は移動を止めるのが確実です。
預り在庫がある会社
他社の在庫を預かっている場合、自社の資産ではないので在庫金額には入りません。ただし現物は倉庫にあるため、数える対象から明確に外し、区分保管されていることを示せるようにしておく必要があります。混在していると、自社在庫と預り在庫の切り分けそのものが論点になります。
ここに挙げた区分は、あくまで社内で原因を追うためのものです。区分の名前は会社の実態に合わせて構いません。大事なのは、同じ原因の差異が繰り返されているかどうかを、後から集計できる形にしておくことです。
📅 いつから、どこまで整えるか
直前期にまとめて整えようとすると、監査対応と重なって負担が集中します。前倒しできるものから手を付けてください。
すべてを一度に整える必要はありません。効果が大きく着手しやすいのは、実施要領の文書化、カウントと確認の分離、タグの連番化の3つです。この3つは費用もかからず、次の棚卸から始められます。
外部保管在庫の把握と残高確認の仕組みは、相手先との調整が要るので時間がかかります。拠点や外注先が増えている段階で着手しておくと、後で一気に洗い出す手間が省けます。
🗓️ 立会当日はどう進むか
当日いちばん時間を取られるのは終了後の差異分析です。ここを含めた日程を組んでおいてください。
入出庫を止める時間帯を決めておく
数えている最中に物が動くと、どの時点の数量なのかが定まりません。カウント中は入出庫を止めるのが原則です。止められない事情がある場合は、動いた分を別に記録し、後から加減できるようにしておく必要があります。この扱いも要領に書いておいてください。
終了後の作業まで含めて日程を組む
当日でいちばん時間がかかるのは、数え終わった後の差異分析です。ここを翌日以降に回すと、記憶が薄れて原因が追えなくなります。差異一覧の作成と再カウントまでを当日の作業として日程に入れておくと、後の説明が楽になります。
📤 監査人に事前に渡しておくもの
直前に渡すと、立会の範囲や日程の組み直しが起きます。日程を決める段階でまとめて共有してください。
立会の日程が決まってから慌てて資料を集めると、範囲の説明が間に合わず、当日に確認事項が積み残ります。日程を相談する段階で、要領と拠点一覧をまとめて渡しておくと、監査人側もどこに立ち会うかを早く決められます。
前期に差異が出ている場合、その原因と是正の記録もあわせて渡してください。同じ原因の差異が繰り返されていると、是正が機能していないという評価になります。逆に、原因を潰した記録が残っていれば、手続が改善していることの説明材料になります。
💰 滞留品は数量だけでなく評価も見られる
数え終わった後に残るのが、滞留品をいくらで持つかという論点です。企業会計基準委員会の棚卸資産の評価に関する会計基準は、通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性が低下している場合に正味売却価額まで簿価を切り下げる処理を求めています。長期に滞留している在庫は、この収益性の低下が問題になりやすい対象です。
実務では、滞留の年数や回転期間に応じた評価の方針をあらかじめ決めておく形が多く取られます。方針を決めずに個別に判断していると、期ごとに扱いがぶれ、恣意性があると見られます。実地棚卸の記録に滞留区分を持たせておくと、評価の検討がそのままつながります。
現物を見て初めて分かることもあります。破損しているもの、包装が劣化しているもの、仕様が古くなって出荷できないもの。立会は監査人がこうした状態を目にする場でもあるので、事前に自社で状態を把握し、区分しておいてください。
🚫 立会ができないとどうなるか
監査基準報告書501 6項は、予期せぬ事態により実地棚卸の立会が実施できない場合に、別の日に実地棚卸を実施して介在する期間の取引を検証すること、それも実務的に不可能な場合には代替的な監査手続を実施することを求めています。そして、代替的な手続によっても十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合には、監査範囲の制約に関する限定意見を表明するか、意見を表明してはならないとしています。
ここで会社側に効いてくるのが、継続記録と受払の記録です。代替手続は、記録が残っていて初めて成り立ちます。記録が薄いと、代替手続そのものが組めず、意見に影響する事態になり得ます。日程の都合で立会を受けられない拠点がある場合ほど、記録の整備が意味を持ちます。
❓ よくある質問
A. 厳密には違います。実地棚卸は会社が現物を数える手続、実査は監査人が現物を確かめる手続です。ただし実務では混ぜて使われることが多く、監査法人が棚卸実査と言うときは実地棚卸の手続全体を指していることがほとんどです。
A. 監査人が見ているのは数量だけではないためです。監査基準報告書501 3項は、経営者の指示と手続の評価、棚卸手続の観察も求めています。手続の設計が確かめられなければ、当日の数が合っていても依拠できないという判断になります。
A. 会社の手続として何を対象にするかは、継続記録の有無や重要性によります。ただし、対象から外す範囲とその理由は要領に書いておく必要があります。恣意的に外していると見られると、そこが指摘になります。
A. 実地棚卸日から期末日までの受払を記録し、そこから期末残高を導けるようにしておきます。監査基準報告書501 4項は、この期間の増減が適切に記録されているかについて追加の監査証拠を入手することを求めています。
A. 会社側では決められません。日本公認会計士協会の周知文書は、リモート立会を実地棚卸の立会が実務的に不可能な例外的な場合に限るとしており、監査人の不便さや費用は理由にならないとしています。日程を組む段階で監査人と相談してください。
A. 監査基準報告書501 6項は、立会が実務的に不可能な場合に代替的な監査手続を実施することとし、それでも十分な証拠が得られない場合には、監査範囲の制約に関する限定意見を表明するか意見を表明してはならないとしています。
A. 分量よりも、対象範囲、体制、日程、手順、記録様式、差異の扱い、承認が書かれているかどうかです。数ページでも、これらが押さえられていれば評価の対象になります。
A. 継続記録がある以上、差異はある程度出ます。見られているのは差異の大きさよりも、原因を追って是正しているかどうかです。数字だけを合わせた記録は、かえって指摘の対象になります。
A. 実地棚卸の記録に滞留の区分を持たせておくと、そのまま評価の検討につながります。棚卸資産の評価に関する会計基準は、収益性が低下している場合に正味売却価額まで簿価を切り下げることを求めています。方針を先に決めておいてください。
A. ショートレビューで指摘されてから動くと、直前期に負担が集中します。実施要領の文書化とカウント体制の分離だけでも先に手を打っておくと、後の負担がかなり違います。
📄 まとめ
棚卸の精緻化で求められているのは、数え間違いをなくすことではなく、監査人が依拠できる手続にすることです。監査基準報告書501 3項は、監査人に対して、経営者の指示と手続の評価、棚卸手続の観察、棚卸資産の実査、テスト・カウントを求めています。このうち前半2つは会社の手続そのものを見ているため、実施要領が文書になっていなければ評価の対象がありません。
指摘されやすいのは、カウントと記録が同一人であること、タグが連番でないこと、滞留品の扱いが決まっていないこと、外部にある在庫が把握されていないこと、カットオフの線引きがないことの5つです。いずれも仕組みの問題なので、一度直せば毎期の負担はむしろ減ります。
始めるなら実施要領の文書化からです。いまやっていることをそのまま文章にするだけでも、監査人との議論が具体的になります。
📚 参考(公的な一次情報)
- 日本公認会計士協会「監査基準報告書501 特定項目の監査証拠」3項・4項・6項
- 日本公認会計士協会「監査基準報告書501 周知文書第1号 リモート棚卸立会に係る周知文書」
いまの実地棚卸のやり方をお聞かせいただければ、監査基準報告書501で求められている手続に照らして、どこを直せばよいかを整理します。実施要領の作成、カウント体制の組み直し、外部保管在庫の洗い出し、カットオフの締め方まで、上場準備の段階に応じてご一緒します。公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。
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