税務調査 完全ガイド|連絡が来てから終わるまでの全手順

税務署から電話が入り、実地の調査を行いたいと言われる。多くの経営者にとって、これは年に何度も起きることではありません。だからこそ、何が起きるのか分からないまま日程だけが決まってしまい、当日を迎えてしまうことがあります。

税務調査の手続は、平成23年12月の国税通則法の改正で、それまで運用でやっていたことが条文に書かれるようになりました。どの段階で何が通知され、どこまでが求められ、どう終わるのかは、法律と政令、そして国税庁が公表している事務運営指針とFAQで確かめることができます。

この記事は、連絡が来てから調査が終わるまでの全体像を1本にまとめた目次記事です。個別の場面は全14回の記事で扱います。

🧭 連絡が来てから終わるまでの流れ

実地の調査は、おおまかに次の順で進みます。まず事前通知があり、日程と対象が決まります。次に会社側が資料をそろえ、調査当日を迎えます。当日以降、質問と資料の確認が続き、最後に調査結果の説明があって終了します。

調査という言葉は広く使われますが、事務運営指針は、調査とは、特定の納税義務者の課税標準等または税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為をいうとしています。証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用までを含む一連の行為です。この定義に当たらない連絡は、あとで見るとおり行政指導として扱われます。

この流れのうち、法律が手続を定めているのは、事前通知(国税通則法第74条の9)、質問検査等(同法第74条の2)、提出された物件の留置き(同法第74条の7)、そして調査の終了の際の手続(同法第74条の11)です。国税庁は事務運営指針で、調査は公益的必要性と納税者の私的利益との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであるとしています。

税務調査の流れと、条文が置かれている場所事前通知日時と対象74条の9準備資料をそろえる日程の変更も可実地の調査質問と検査74条の2やり取り留置きと返還74条の7終了の手続結果の説明74条の11事前通知の方法や、何日前に行うかについては法令に規定がありません国税庁は原則として電話により口頭で行うとしています

条文が置かれているのは、通知・検査・留置き・終了の4か所です。

📞 事前通知で伝えられる11項目

税務署長等は、実地の調査で質問検査等を行わせる場合には、あらかじめ納税義務者に対し、その旨と一定の事項を通知するものとされています(国税通則法第74条の9第1項)。条文が掲げるのは6つの事項と、政令で定める事項です。その政令が国税通則法施行令第30条の4第1項で、さらに4つを定めています。実地の調査を行う旨と合わせて、通知される事項は11になります。

事前通知の11項目は、法律と政令に分かれている事前通知される11の事項法第74条の9第1項(7つ)実地の調査において質問検査等を行う旨開始する日時と場所目的・税目・期間・帳簿書類その他の物件施行令第30条の4第1項(4つ)納税義務者の氏名と住所または居所調査を行う職員の氏名と所属官署日時と場所の変更に関する事項ほか

法律の第7号が政令に委ねられ、その政令が4つを定めています。

通知される事項 根拠
実地の調査において質問検査等を行う旨 法第74条の9第1項柱書
調査を開始する日時 同項第1号
調査を行う場所 同項第2号
調査の目的 同項第3号
調査の対象となる税目 同項第4号
調査の対象となる期間 同項第5号
調査の対象となる帳簿書類その他の物件 同項第6号
納税義務者の氏名および住所または居所 施行令第30条の4第1項第1号
調査を行う職員の氏名および所属官署 同項第2号
日時または場所の変更に関する事項 同項第3号
法第74条の9第4項の規定の趣旨 同項第4号

最後の第4号が指している第4項は、通知した目的・税目・期間・帳簿書類以外の事項について非違が疑われることとなった場合に、その事項に関して質問検査等を行うことを妨げない、という定めです。通知された範囲がそのまま調査の上限になるわけではないことが、あらかじめ伝えられていることになります。

日時と場所については、合理的な理由を付して変更を求めれば、税務署長等は協議するよう努めるものとされています(同条第2項)。国税庁は、申出の方法は法令で定められていないため口頭で差し支えないとしています。なお、事前通知をしない場合の定めは第74条の10に置かれています。

🗂 対象になる「帳簿書類その他の物件」

法人税の調査では、当該職員は法人に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、またはその提示もしくは提出を求めることができます(国税通則法第74条の2第1項第2号イ)。この「帳簿書類その他の物件」の範囲は、国税庁の手続通達で整理されています。

場面 取扱い
保存義務があるもの 事前通知では、名称に併せて根拠となる法令が示される(手続通達5-3)
保存義務がないもの 一般的な名称または内容が例示される(同5-3)
検査の対象 保存義務のある帳簿書類のほか、調査の目的を達成するために必要と認められる物件も含まれる(同5-4)
国外にあるもの 帳簿書類その他の物件には、国外において保存するものも含まれる(同5-4の注)
通知した期間以外 通知した課税期間の調査に必要があるときは、他の課税期間に係る物件も質問検査等の対象となる(同5-5)

提示・提出の求めに正当な理由なく応じなかった場合には罰則があります。国税庁は、罰則があることをもって強権的に権限を行使することは考えておらず、必要とされる趣旨を説明し、納税者の理解と協力の下でその承諾を得て行うとしています。提出した物件を留め置くこともできますが(同法第74条の7)、これも承諾を得て行うものであり、承諾なく強制的に留め置くことはないとされています。返還を求められたときは、特段の支障がない限り速やかに返還するとされています。

提示や提出を求められたときに、その場で即答しなければならないわけではありません。何の目的で、どの期間の、どの資料が必要なのかを確認し、社内のどこにあるのかを調べてから出しても、手続に反することにはなりません。

当日の入口では、調査担当者に身分を示す証明書の提示を求めることができます。当該職員は身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときはこれを提示しなければならないとされています(同法第74条の13)。誰が、どの税目の、どの期間の調査に来たのかを、最初に確認しておくと後の整理が楽になります。

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💬 「調査」と「行政指導」は別のもの

税務署からの連絡が、すべて調査とは限りません。国税庁は事務運営指針で、納税義務者等に対し調査または行政指導に当たる行為を行う際は、対面・電話・書面などの態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で行うとしています。

この区別は、加算税に直結します。国税庁のFAQは、行政指導に基づいて納税者が自主的に修正申告書を提出した場合には、延滞税は納付することがあるものの、過少申告加算税は賦課されないと説明しています。一方、調査に入ってからの修正申告は、加算税の対象になり得ます。

ここで見落とされやすいのが調査通知です。事務運営指針は、事前通知に先立って納税義務者の都合を聴取する際に、国税通則法第65条第6項に規定する調査通知を併せて行うとしています。つまり、日程を相談する最初の電話の時点で、すでに調査通知は済んでいることになります。

区分 内容
調査 課税標準等または税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で、当該職員が行う一連の行為(事務運営指針)
行政指導 計算誤りや記載漏れなどが疑われる場合に、自発的な見直しと、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請するもの(国税庁FAQ)
共通のルール 対面・電話・書面などの態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示したうえで行う(事務運営指針)
加算税の違い 行政指導に基づいて自主的に修正申告書を提出した場合には、過少申告加算税は賦課されない(国税庁FAQ)
修正申告をした時点 過少申告加算税
調査通知の前で、更正があるべきことを予知する前 課されない(法第65条第6項)
調査通知の後で、更正があるべきことを予知する前 100分の5(同条第1項の括弧書き)
更正があるべきことを予知した後 100分の10。期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分には100分の5を加算(同条第1項・第2項)
隠蔽または仮装があった場合 過少申告加算税に代えて重加算税100分の35(法第68条第1項)

「まだ通知は来ていないから自主的に直せば加算税はかからない」と考えて動くと、すでに調査通知が済んでいたということが起こり得ます。電話でどのような説明を受けたのかを、日付とともに記録に残しておいてください。

📕 この連載の目次(全14回)

1
税務調査の連絡が来たら最初にやる5つのこと
2
事前通知の11項目とは?通知内容から調査の狙いを読む
3
無予告調査は拒めるか?現金商売に多い事前通知なしの調査
4
税務調査で必ず見られる資料一覧|事前に揃えておくもの
5
税務調査当日の流れ|1日目の午前中に何が起きるか
6
社長が答えるべきこと・答えなくてよいこと|受け答えの原則
7
税理士の立会いは必要か?立会いで変わる3つのこと
8
調査の対象年度は何年分?3年・5年・7年の分かれ目
9
反面調査とは?取引先に迷惑をかけないための備え
10
帳簿書類の提示・提出を求められたら|応じる範囲と留置き
11
電子データの提示を求められたら|電帳法対応後の調査実務
12
質問応答記録書にサインを求められたら|署名前に確認すること
13
調査結果の説明と修正申告の勧奨|その場で応じるべきか
14
申告是認とは?何も指摘されずに終わる調査の条件

※各回のリンクは、記事の公開にあわせて順次追加していきます。役員給与の論点は役員給与の税務 完全ガイドにまとめています。

🏁 調査が終わるときの3つの分かれ道

実地の調査の結果、更正決定等をすべきと認められない場合には、質問検査等の相手方となった納税義務者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨が書面により通知されます(国税通則法第74条の11第1項)。いわゆる申告是認です。

更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員が調査結果の内容を説明します。ここには更正決定等をすべきと認めた額とその理由が含まれます(同条第2項)。そのうえで、修正申告または期限後申告を勧奨することができるとされています(同条第3項)。この勧奨に応じて納税申告書を提出した場合には、不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面が交付されます。

勧奨に応じるかどうかは任意です。国税庁のFAQも、応じるかどうかは納税者の任意の判断であり、応じなかったからといって不利な取扱いを受けることは基本的にないとしています。応じなければ、調査結果に基づいて更正等の処分が行われ、その処分に対しては不服申立てができます。

実地の調査が終わるときの3つの道調査結果が固まる非違が認められない書面により通知される74条の11第1項勧奨に応じる修正申告を提出する74条の11第2項・第3項勧奨に応じない更正等の処分を受ける不服申立てができる

修正申告と更正処分では、その後にとれる手段が変わります。

いったん終わった調査が蒸し返されないのかという点についても定めがあります。当該職員は、新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは、あらためて質問検査等を行うことができるとされています(同条第5項)。国税庁は、原則として再調査は実施しないが、この要件に当たる場合には既に調査の対象となった税目・課税期間であっても再調査を実施することがあると説明しています。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。法人の税務顧問と申告業務、新しい会計基準の導入支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

事前通知は何日前に来るのですか

国税庁は、事前通知の時期について法令に特段の規定はなく、何日程度前に通知するかを一律に示すことは困難としたうえで、調査開始日までに準備等ができるよう、相当の時間的余裕を置いて行うこととしていると説明しています。

通知された日時を変えてもらえますか

税務署長等は、合理的な理由を付して日時または場所の変更を求められた場合には、協議するよう努めるものとされています(国税通則法第74条の9第2項)。国税庁は、申出の方法は法令で定められていないため口頭で差し支えないとしています。

何年分まで遡られるのですか

更正または決定は、法定申告期限から5年を経過した日以後はすることができないのが原則です(同法第70条第1項第1号)。偽りその他不正の行為により税額を免れた場合等は7年(同条第5項第1号)、法人税に係る純損失等の金額を増減させる更正等は10年(同条第2項)とされています。

顧問税理士がいれば、通知は税理士に来ますか

納税義務者について税務代理人がある場合に、納税義務者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、事前通知は税務代理人に対してすれば足りるとされています(同法第74条の9第5項)。税務代理人が複数のときは代表する税務代理人を定めることもできます(同条第6項)。

調査は必ず事前に通知されるのですか

納税義務者の申告もしくは過去の調査結果の内容、営む事業内容に関する情報などに鑑み、違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等または税額等の把握を困難にするおそれ、その他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しないとされています(同法第74条の10)。

修正申告をすると、あとから争えなくなりますか

修正申告は自ら行う申告であり、税務当局の処分ではありませんので、不服申立てはできません。ただし、一定期間内であれば更正の請求という手段があります。国税通則法第74条の11第3項は、この点を説明し、その旨を記載した書面を交付しなければならないと定めています。

📄 まとめ

税務調査の手続は、事前通知、質問検査等、留置き、終了の際の手続という4つの柱でできています。どの段階でも、条文が何を求め、何を求めていないのかを確かめれば、その場で判断できることは増えます。

とくに効いてくるのが、最初の電話の位置づけです。日程を相談する時点で調査通知は済んでいるとされているため、そこから先の自主的な修正申告は加算税の扱いが変わります。連絡を受けたら、何を言われたのかを日付とともに記録し、対象の税目と期間を確認するところから始めてください。

🔗 参考(公的な一次情報)

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

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