役員貸付金の認定利息はいくら?利率の決め方と解消の実務

決算書の資産の部に「役員貸付金」や「短期貸付金」が並んでいる。金額は毎年少しずつ増えていて、利息を受け取った記憶はない。中規模の会社を拝見していると、この状態にかなりの頻度で出会います。

役員貸付金そのものは違法でも何でもありませんが、税務上は「利息を受け取らないこと」が問題になります。受け取るべき利息を受け取っていなければ、その分は役員に対する経済的な利益として給与課税の対象になり、会社には源泉徴収義務が生じます。しかも利率は自分で決めてよいわけではなく、国税庁が拠り所を示しています。

この記事では、認定利息の利率をどう決めるのか、給与課税されない場合はあるのか、そして残ってしまった貸付金をどう解消するのかを整理します。連載の全体像は役員給与の税務 完全ガイドにまとめています。

🧭 結論|利率の決め方は2つしかない

所得税基本通達36-49は、使用者が役員又は使用人に貸し付けた金銭の利息相当額の評価について、次のように定めています。

当該金銭が使用者において他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかな場合には、その借入金の利率により、その他の場合には、貸付けを行った日の属する年の租税特別措置法第93条第2項(利子税の割合の特例)に規定する利子税特例基準割合による利率により評価する。(所得税基本通達36-49)

読み方は単純です。会社が銀行などから借りたお金をそのまま役員に貸したことが明らかであれば、その借入金の利率。それ以外は、貸付けを行った日の属する年の利子税特例基準割合による利率。この2つだけです。会社が勝手に年0.1パーセントと決めてよい、という構造にはなっていません。

役員貸付金の利息をいくらとするかの決め方 会社が役員に金銭を貸し付けた その資金は会社が他から借り入れて 貸し付けたものであることが明らかか 明らかである その借入金の利率で評価する それ以外 貸付けを行った日の属する年の 利子税特例基準割合による利率

通達が示す分岐はこの2つだけ。どちらに当たるかで、使う利率が決まる。

📌 借入金をそのまま貸した場合|その借入金の利率

会社が金融機関から年2.5パーセントで借り入れ、その資金を役員に貸し付けたことが明らかであれば、認定利息の利率は年2.5パーセントです。市中の一般的な水準ではなく、その会社が現に負担している調達コストが基準になります。

「明らかな場合」という限定が付いていますので、資金の流れを示せることが前提です。借入日と貸付日が近接していること、金額が対応していること、稟議書や取締役会議事録に資金使途が残っていることなどが手がかりになります。何年も前から積み上がった貸付金に、後から特定の借入れを紐づけるのは通常は困難です。

借入金の利率が高い会社ほど、この扱いに当てはまると認定利息も高くなります。有利になるとは限りません。どちらの扱いになるかは事実関係で決まり、選べるものではないという点にご注意ください。

📊 それ以外の場合|利子税特例基準割合による利率

租税特別措置法第93条第2項は、利子税特例基準割合について次のように定めています。

前項に規定する利子税特例基準割合とは、平均貸付割合(各年の前々年の九月から前年の八月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行つた貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を十二で除して計算した割合として各年の前年の十一月三十日までに財務大臣が告示する割合をいう。以下同じ。)に年〇・五パーセントの割合を加算した割合をいう。(租税特別措置法第93条第2項)

条文だけを読むと計算が必要そうに見えますが、実際には財務大臣の告示を受けて年ごとの割合が決まり、国税庁がタックスアンサーで年別の利率を示しています。会社側で平均貸付割合を計算する必要はありません。

国税庁タックスアンサーNo.2606(令和7年4月1日現在法令等)が示している利率は次のとおりです。

貸付けを行った年 利率
平成22年から25年中 4.3パーセント
平成26年中 1.9パーセント
平成27年から28年中 1.8パーセント
平成29年中 1.7パーセント
平成30年から令和2年中 1.6パーセント
令和3年中 1.0パーセント
令和4年から令和7年中 0.9パーセント

この一覧は令和7年4月1日現在の法令等によるものです。それより後の年に行った貸付けについては、国税庁の最新の公表内容をご確認ください。

ここで見落としやすいのが、基準となるのが貸付けを行った日の属する年だという点です。毎年の利率に置き換えるのではありません。平成25年に貸し付けた残高が今も残っているのであれば、その部分についてはその年の利率が出発点になります。貸付けが何度にも分けて行われている会社では、いつ、いくら貸したのかを追えるようにしておく必要があります。

🆓 給与課税しなくてよい3つの場合

無利息または低い利息で貸し付けても、給与として課税しなくて差し支えないとされる場合があります。所得税基本通達36-28が定める3つです。

区分 通達が定める内容
災害や疾病等による生活資金 災害、疾病等により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員又は使用人に対し、その資金に充てるために貸し付けた金額につき、その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける経済的利益
合理的な貸付利率を定めている場合 使用者における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、これにより利息を徴している場合に生じる経済的利益
利益が少額である場合 上の2つ以外の貸付金につき受ける経済的利益で、その年(法人ではその事業年度)における利益の合計額が5,000円以下のもの。事業年度が1年に満たないときは月数で按分する

2番目は実務で使える余地があります。通達は、借入金の平均調達金利について、貸付けを行った日の前年中又は前事業年度中における借入金の平均残高に占める、その前年中又は前事業年度中に支払うべき利息の額の割合など合理的に計算された利率をいう、と例示しています。この考え方で利率を定め、実際にその利率で利息を徴していれば、生じる経済的利益は課税しなくて差し支えないとされています。

3番目は少額の貸付けであれば実質的に問題にならないという趣旨です。年0.9パーセントで計算すると、貸付残高がおおむね55万円程度までなら年間の利息が5,000円以下に収まります。逆に言えば、それを超える残高では原則どおりの処理が必要になります。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

🏛️ 会社側と役員側で何が起きるか

認定利息の話は、会社と役員の両方に同時に効きます。

会社の側では、法人税法第22条第2項が、益金の額に算入すべき金額を、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る収益の額としています。無償による役務の提供も収益を構成するという建て付けですので、利息を受け取らなくても受取利息を認識するという整理につながります。

役員の側では、所得税基本通達36-15の(3)が、金銭の貸付け又は提供を無利息又は通常の利率よりも低い利率で受けた場合における、通常の利率により計算した利息の額との差額に相当する利益を、経済的利益に含めています。この経済的利益は給与所得として課税され、会社には所得税法第183条第1項により、支払の際に所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに納付する義務が生じます。

利息を受け取らないときに両側で起きること 会社の側(法人税) 受取利息を益金に認識する (法人税法第22条第2項) 徴収しない差額は 役員に対する経済的な利益 (法基通9-2-9の(7)) 毎月著しく変動しなければ 定期同額給与に当たる 役員の側(所得税) 同じ差額が給与所得として 課税される 会社に源泉徴収義務があり 徴収の日の属する月の 翌月10日までに納付する (所得税法第183条第1項)

会社が利息を取らなくても、税務上は取ったものとして扱われ、その分が役員の給与になる。

法人税基本通達9-2-9の(7)は、役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における、通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額を、経済的な利益として挙げています。そして9-2-11は、この(7)に掲げる金額(その額が毎月著しく変動するものを除く)が、法人税法施行令第69条第1項第2号にいう「継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」に該当することに留意するとしています。残高が大きく動かないかぎり、この差額は定期同額給与として損金に算入されることになります。

もっとも、法人税基本通達9-2-10は、9-2-9に掲げる経済的な利益の供与が所得税法上課税されないものであり、かつ、法人が給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとするとしています。先ほどの36-28に当てはまる場合は、法人税の側でも給与としての処理を要しないという整理になります。

🧾 数値で見る影響

令和7年中に役員へ2,000万円を貸し付け、利息を一切受け取っていないという前提で見てみます。利率は0.9パーセントです。

項目 金額など
貸付残高 2,000万円
利率(令和7年中の貸付け) 0.9パーセント
年間の認定利息 180,000円
月あたりの経済的な利益 15,000円
36-28の(3)による判定 年間5,000円を超えるため、少額として課税しない扱いには当たらない

年18万円の給与が上乗せされるのと同じことが起きます。役員の所得税と住民税が増え、会社では源泉徴収の対象になります。3年分がまとめて指摘されれば54万円分の給与が認定され、源泉所得税の不納付加算税や延滞税の問題も出てきます。

一方、貸付残高が50万円であれば、0.9パーセントで年4,500円です。5,000円以下ですので、36-28の(3)により課税しなくて差し支えない範囲に収まります。同じ論点でも、残高の規模で結論が変わります。

🔧 役員貸付金を解消する4つの道

認定利息を毎年計上するのは対症療法にすぎません。残高そのものを減らさないかぎり、毎期同じ処理が続きます。実務で使われる方法は、おおむね次の4つです。

役員貸付金を減らす4つの道と、それぞれの注意点 報酬から返済 手取りを原資に 計画的に返す 増額するなら 改定時期の制約 に注意 資産の譲渡 役員個人の資産を 会社に譲り代金と 相殺する 価格が時価か が争点になる 退職金と相殺 退任時の退職金と 貸付金を相殺する 退職金の額が 過大でないかを 別に判定する 債権放棄 会社が債権を 放棄する 放棄額がその まま役員給与に なりうる

どれも一長一短。金額が大きいほど、単独ではなく組み合わせで時間をかけて減らす設計になる。

方法 押さえておく点
役員報酬から返済する もっとも素直な方法。返済原資を作るために報酬を増額するなら、改定できる時期の制約がかかる。返済計画と実際の入金記録を残す
役員個人の資産を会社に譲渡し代金と相殺する 不動産や有価証券などを会社に売却する。価格が時価かどうかが問われるため、評価の根拠を用意しておく
役員退職金と相殺する 退任時にまとめて解消できる。ただし退職金の額が不相当に高額でないかは別途判定される
会社が債権を放棄する 法人税基本通達9-2-9の(4)は、役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く)の金額を経済的な利益に挙げている。放棄額が役員給与として扱われうる点に注意

4番目は、帳簿上は一瞬で消えますが、税務上は最も重い選択になりえます。放棄した金額が役員給与として扱われる場合、それは臨時的な給与ですので、定期同額給与にも事前確定届出給与にも当たらず、損金不算入となる可能性があります。役員個人の側でも一時に多額の給与所得が生じます。

役員貸付金は、決算書に残るかぎり金融機関から使途を問われやすい項目です。返済計画を書面にして、毎期の残高推移を説明できるようにしておくことが、税務と資金調達の両面で効いてきます。

❓ よくある質問

利率を年0.1パーセントと決めて契約書を作れば認められますか

通達が示している分岐は、借入金の利率によるか、利子税特例基準割合による利率によるかの2つです。契約書で低い利率を定めても、それだけで通常の利率が置き換わるわけではありません。ただし、借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定めてこれにより利息を徴している場合は、36-28の(2)により課税しなくて差し支えないとされています。根拠のある利率かどうかが分かれ目です。

利息を計上しても現金で受け取っていません。それでもよいですか

未収利息として計上するだけでは、実際に徴していることにはなりません。36-28の(2)は「これにより利息を徴している場合」という書き方をしています。役員報酬からの天引きなど、実際の授受が分かる形にしておくことをお勧めします。

役員貸付金ではなく仮払金という科目なら大丈夫ですか

科目名で扱いが変わるものではありません。役員に対する資金の流出で、いずれ返してもらうものであれば、実質は貸付けです。むしろ内容が説明できない仮払金は、調査で使途を問われ、個人的な支出であれば役員給与として認定される方向に進みます。

返済されないまま役員が亡くなったらどうなりますか

会社の債権は消えません。相続人が債務を承継します。会社側では回収可能性の検討が必要になり、相続人との間で返済の話し合いが生じます。金額が大きいほど、生前に道筋を付けておく価値があります。

認定利息を計上すると会社の税金が増えますか

受取利息を益金に立てる一方で、徴収していない差額を役員給与として損金に算入する形になれば、法人税の課税所得への影響は打ち消し合います。ただし役員給与として損金算入されるのは、定期同額給与などに当たる場合です。加えて、役員個人の所得税と住民税、源泉徴収の負担は別に生じます。

過去に遡って計上していなかった分はどうすればよいですか

まず、いつ、いくら貸したのかを再現し、年ごとの利率で認定利息を計算し直すところから始めます。そのうえで、修正申告や源泉所得税の納付をどう進めるかを決めます。調査で指摘されてから対応するより、自主的に整理したほうが加算税の面で有利になる場面があります。

その処理、別の専門家の見解も聞いてみませんか?

顧問税理士の判断に不安があるとき、条文と通達に立ち返って第三者の目で検証します。顧問契約の切替えを前提としないご相談も承ります。

セカンドオピニオンについてお問い合わせ料金の目安を見る

📄 まとめ

役員貸付金の認定利息は、会社が他から借り入れて貸し付けたことが明らかならその借入金の利率、それ以外は貸付けを行った日の属する年の利子税特例基準割合による利率で評価します。国税庁は年別の利率を公表しており、令和4年から令和7年中の貸付けは0.9パーセントとされています。

受け取らなかった利息は役員の経済的な利益となり、給与課税と源泉徴収の問題を生みます。少額であれば課税しなくてよい扱いもありますが、残高が数百万円を超えれば通常は当てはまりません。毎年の処理を整えるのと並行して、残高そのものを減らす道筋を決めることをお勧めします。

🔗 参考(公的な一次情報)

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406