境内の空いている土地を駐車場として貸している寺院や神社は少なくありません。この収入に法人税がかかるのかは、宗教法人の税務で最も相談の多い論点の1つです。
結論から書くと、駐車の場所を提供して対価を受けているのであれば、駐車場業として収益事業に当たります。管理人も設備も置かず土地を貸しているだけでも同じです。
この記事では、駐車場業の判定を条文と通達にそって整理し、参拝者用の駐車場や消費税の扱いまで説明します。
- 駐車場業に宗教法人の除外規定がないこと
- 土地の貸付けだけでも駐車場業になる理由
- 参拝者用の駐車場をどう考えるか
- 名目を志納金に変えても結論が変わらない理由
- 消費税では課税取引になること
この記事の見出し
📌 駐車場業には宗教法人を外す定めがない
収益事業とされる34業種は、法人税法施行令5条1項に列挙されています。その中には、特定の法人が行う場合を除くという書き方で、宗教法人の活動を外している号があります。たとえば不動産貸付業では、宗教法人法4条2項に規定する宗教法人が行う墳墓地の貸付業が除かれています(同項5号ニ)。
ところが、駐車場業を定める同項31号は、ただ駐車場業と書かれているだけです。除外される場合の列挙がありません。したがって、宗教法人が行う駐車場業も、そのまま収益事業に当たります。
法人税基本通達15-1-1は、公益法人等が施行令5条1項各号に掲げる事業のいずれかに該当する事業を行う場合には、たとえその行う事業がその公益法人等の本来の目的たる事業であるときであっても、その事業から生ずる所得については法人税が課されることに留意する、としています。宗教活動の一環という説明では、駐車場業から外れません。
📌 土地を貸すだけでも駐車場業になる
よくある誤解が、管理人も設備も置かず、土地を月極で貸しているだけなら不動産貸付業だ、という理解です。この点は通達がはっきり否定しています。
法人税基本通達15-1-68は、令第5条第1項第31号の駐車場業には、駐車場所としての土地の貸付けが含まれることに留意する、としています。ロープを張って区画を示しただけの青空駐車場でも、駐車の場所として貸しているのであれば駐車場業です。
この整理は結論に影響します。不動産貸付業と読めば、5号の除外規定を検討する余地が出てきますが、駐車場業と整理される以上、31号には除外がありませんので課税されます。
📌 参拝者用の駐車場はどうなるか
無料で開放している参拝者用の駐車場は、対価を受けていませんので、そもそも事業として行われていません。収益事業の判定に入る前の段階で外れます。
問題は、参拝者から一定額を受けている場合です。駐車の場所を提供する対価として金銭を受け取っているのであれば、名目が志納金や協力金であっても駐車場業として扱われる可能性が高くなります。金額が定められ、支払わないと駐車できないのであれば、実質は対価です。
一方、収益事業とは、施行令5条1項に列挙された事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいいます(法人税法2条13号)。年に一度の祭礼の日だけ境内の一部を臨時に開放するような場合は、継続して事業場を設けて行われているといえるかが論点になります。ただし、毎年決まった時期に反復しているのであれば継続性が認められることもありますので、自己判断せず所轄の税務署に確認してください。
境内の駐車場が収益事業に当たるかの判定。対価性と継続性の2点を確認します。
📌 名目を変えても結論は変わらない
領収書の但し書きを志納金にする、駐車料金ではなく護持費として受け取る。こうした工夫で課税を避けられるかというと、避けられません。判定は、実際に何の対価として金銭が動いているかで行われます。
逆に、本当に任意の寄進であって、駐車の可否と結び付いていないのであれば、それは喜捨です。料金表を掲げていないか、支払わない人も同じように駐車できるか、といった実態が判断の材料になります。
あいまいなまま運用を続けると、後の税務調査で数年分をさかのぼって指摘を受けることになります。有料にするなら収益事業として届け出て申告する、無料にするなら対価を受けない、と割り切ったほうが結果的に負担は軽くなります。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
📌 消費税では課税取引になる
土地の貸付けは消費税が非課税とされていますが、駐車場はこの非課税から外れます。消費税法施行令8条は、土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合、および駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合を、非課税から除外される場合としています。
したがって、駐車場の貸付けによる収入は消費税の課税売上げになります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば課税事業者となり、申告と納付が必要です。
法人税では収益事業の判定、消費税では課税売上げの判定と、別々の物差しが使われます。どちらか一方だけを見て安心しないよう、収入の種類ごとに両方を確認してください。
📌 帳簿と契約で残しておくこと
駐車場を収益事業として運営するなら、次の3つを整えてください。1つ目は、駐車場の区画と貸付けの相手方がわかる契約書または申込書。2つ目は、収入の記録と、収益事業として区分した帳簿(法人税法施行令6条)。3つ目は、駐車場に直接かかった費用と、境内全体にかかる共通費の配賦の記録です。
共通費の配賦には、資産の使用割合や収入金額の比などの合理的な基準を継続して用います(法人税基本通達15-2-5)。駐車場であれば、境内地の面積に占める駐車場部分の割合が使いやすい基準になります。
収益事業を開始した日以後2か月以内には、収益事業開始届出書の提出が必要です(法人税法150条1項)。あわせて、都道府県と市区町村への届出も忘れないでください。
有料にするか無料にするか、届出をどうするかは、収入の実態を整理すれば決められます。区分経理と配賦基準の設計まで、最初の整理からご一緒できます。宗教法人の税務と会計に対応している公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。宗教法人の税務顧問と会計体制の整備支援を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. はい。法人税基本通達15-1-68は、駐車場業には駐車場所としての土地の貸付けが含まれるとしています。設備の有無や管理人の有無で結論は変わりません。
A. 違います。法人税法施行令5条1項5号ニは、宗教法人が行う墳墓地の貸付業を不動産貸付業から除いていますが、この除外は不動産貸付業についてのものです。駐車場業を定める同項31号には、宗教法人を除く定めがありません。
A. 名目ではなく実態で判断します。金額が定められ、支払わなければ駐車できないのであれば、駐車の場所を提供する対価と評価されます。金額を定めず、支払わない人も同じように駐車できるのであれば喜捨に近づきます。
A. 収益事業とは、施行令5条1項の事業で継続して事業場を設けて行われるものをいいます(法人税法2条13号)。年に一度でも毎年反復していれば継続性が認められることがありますので、実態を整理したうえで所轄の税務署にご確認ください。
A. かかります。土地の貸付けは非課税ですが、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合は非課税から除かれます(消費税法施行令8条)。
📄 まとめ
宗教法人が行う駐車場業は収益事業に当たります。法人税法施行令5条1項31号には、宗教法人を除く定めがありません。
法人税基本通達15-1-68により、駐車場所としての土地の貸付けも駐車場業に含まれます。設備のない青空駐車場でも同じです。
本来の目的たる事業であっても、34業種に該当すれば法人税が課されます(法人税基本通達15-1-1)。名目を志納金に変えても、対価として受けている限り結論は変わりません。
消費税では、駐車場その他の施設の利用に伴う土地の使用は非課税から除かれ、課税売上げになります(消費税法施行令8条)。
⚖ 本記事の根拠法令
- 法人税法2条13号
- 法人税法4条1項ただし書きおよび法人税法6条(公益法人等は収益事業から生じた所得についてのみ納税義務を負う)
- 法人税法施行令5条1項31号(駐車場業)
- 法人税法施行令5条1項5号ニ(宗教法人法4条2項に規定する宗教法人が行う墳墓地の貸付業は不動産貸付業から除かれる)
- 法人税基本通達15-1-1
- 法人税基本通達15-1-68(駐車場業には、駐車場所としての土地の貸付けが含まれる)
- 法人税基本通達15-2-5(共通する費用は合理的な基準により継続的に配賦する)
- 法人税法150条1項(収益事業を開始した日以後2か月以内の届出)
- 消費税法施行令8条(土地の貸付けから除外される場合)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
このテーマの全体像は宗教法人の税務|収益事業の判定と区分経理の実務にまとめています。