交際費等は原則として損金になりません。ただし中小法人であれば年800万円までの定額控除限度額があり、多くの医療法人はこの枠内に収まります。
そして令和6年4月1日以後に支出する飲食費については、1人当たりの金額が1万円以下であれば交際費等から除かれます。従来の5,000円から引き上げられました。
この記事では、持分なし医療法人の中小法人判定という医療法人特有の論点を含めて、交際費等の取扱いを整理します。
- 交際費等が原則として損金にならないことと、中小法人の800万円の枠
- 持分なし医療法人が純資産の60%で中小法人を判定すること
- 1人当たりの飲食費の基準額が1万円に引き上げられたこと
- 除外を受けるために保存が必要な書類の記載事項
- 医療機関でよくある支出の判断
図 交際費等の判定(租税特別措置法61条の4にもとづき作成)
この記事の見出し
📌 交際費等は原則として損金にならない
租税特別措置法61条の4は、法人が支出する交際費等について、原則として損金の額に算入しないと定めています。交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。
医療法人も法人ですので、この規定の適用を受けます。業種による除外はありません。
ただし、中小法人については定額控除限度額が設けられており、年800万円までは損金に算入できます。多くの医療法人はこの枠内に収まりますので、実務上は800万円という枠を意識しておけば足ります。
この規定は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されます。
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📌 持分なし医療法人の中小法人判定
ここで、医療法人ならではの論点があります。定額控除限度額を使える中小法人は、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人とされていますが、持分なし医療法人には資本も出資もありません。
この点について、租税特別措置法61条の4第1項は、資本金の額または出資金の額という文言に括弧書きを置き、資本または出資を有しない法人その他政令で定める法人については政令で定める金額によるとしています。この読替えは同条第2項の中小法人の判定にも及びます。
政令で定める金額は、租税特別措置法施行令37条の4第1項1号により、事業年度終了の日の貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額から総負債の帳簿価額を控除した金額、つまり純資産の額の100分の60に相当する金額とされています。利益の額があるときはこれを控除し、欠損金の額があるときは加算します。
したがって、持分なし医療法人については、純資産の60%に相当する金額が1億円以下であるかどうかで判定します。純資産が1億6,666万円を超えるあたりが分かれ目になりますので、内部留保が厚い医療法人では確認が必要です。
なお、大法人による完全支配関係がある法人など、条文が定める除外に該当する場合には、この特例を使えません。
📌 1人当たり1万円以下の飲食費
交際費等から除かれるものとして、飲食その他これに類する行為のために要する費用のうち、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が1万円以下である費用があります。
この基準額は、令和6年度の税制改正により、それまでの5,000円以下から1万円以下に引き上げられました。令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用されます。令和6年3月31日以前に支出された飲食等に係る費用についての基準金額は5,000円以下です。
金額の判定は、支出した金額を参加者の数で割って行います。参加者が6人で合計5万円であれば1人当たり8,333円ですので、除外の対象になります。5人で6万円であれば1人当たり1万2,000円となり、除外されません。
なお、社内の役員や職員に対する接待等のために支出する費用は、この除外の対象になりません。製薬会社の担当者や取引先を交えた会食が対象です。
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📌 書類の保存が要件になる
1人当たり1万円以下の飲食費として交際費等から除外するには、一定の事項を記載した書類を保存していることが要件になります。租税特別措置法施行規則21条の18の4が記載事項を定めています。
記載する事項は、飲食等のあった年月日、飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係、飲食等に参加した者の数、飲食費の額ならびに飲食店等の名称および所在地、その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項です。
領収書だけでは足りません。誰と何人で行ったのかが記録されていなければ、1人当たりの金額を計算できないためです。領収書の裏に参加者と人数をメモする、経費精算の様式に記入欄を設けるといった運用で対応してください。
表 交際費等から除かれるもの
📌 医療機関でよくある支出
医療機関で判断に迷いやすい支出をいくつか整理します。
職員全体を対象とした忘年会や職員旅行の費用は、専ら従業員の慰安のために行われる行事として交際費等から除かれます。ただし、参加割合など福利厚生費として認められるための要件は別途満たす必要があります。
製薬会社や医療機器メーカーの担当者との会食は、事業に関係のある者に対する接待にあたりますので交際費等です。1人当たり1万円以下であれば除外の対象になりますので、参加者と人数の記録を残してください。
医師会の年会費は、その性格によって扱いが分かれます。通常の年会費であれば会費として処理されることが一般的ですが、懇親のための費用が含まれている場合はその部分が交際費等になり得ます。
ロータリークラブやライオンズクラブの入会金や経常会費は、交際費等として扱われるのが一般的です。ただし、経常会費以外に支出した金額については、その支出の目的に応じて寄附金または交際費等になります。特定の役員や職員が個人的に負担すべきものと認められる場合には、その人に対する給与とされます。
紹介元の医療機関への手土産や中元歳暮も交際費等です。金額が大きくなりやすい項目ですので、年間の集計を把握しておいてください。
1人当たり1万円以下の飲食費として除外するには、書類の保存が要件になります。日々の記録の残し方から、年間の枠の管理までご相談ください。医療法人の設立支援と医療機関の税務顧問を行っている公認会計士・税理士が直接対応します。初回のご相談は無料です。オンライン面談にも対応しており、お問い合わせから2営業日以内にご返信します。
公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。医療法人の設立支援と医療機関の税務顧問を行っています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る
❓ よくある質問
A. 租税特別措置法61条の4第1項の括弧書きにより、資本または出資を有しない法人については政令で定める金額によることとされ、この読替えは中小法人の判定にも及びます。同法施行令37条の4第1項1号により、純資産の額の100分の60に相当する金額で判定しますので、その金額が1億円以下であれば定額控除限度額を使えます。
A. 令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用されます。令和6年3月31日以前に支出された飲食等に係る費用についての基準金額は5,000円以下です。
A. 足りません。飲食等のあった年月日、参加した得意先等の氏名または名称およびその関係、参加した者の数、飲食費の額ならびに飲食店等の名称および所在地などを記載した書類の保存が要件です。誰と何人で行ったのかが記録されていなければ、1人当たりの金額を計算できません。
A. 社内の役員や職員に対する接待等のために支出する費用は、この除外の対象になりません。ただし、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用であれば、別の規定により交際費等から除かれます。
A. 入会金や経常会費は交際費等として扱われるのが一般的です。経常会費以外に支出した金額については、その支出の目的に応じて寄附金または交際費等になります。特定の役員や職員が個人的に負担すべきものと認められる場合には、その人に対する給与とされます。
📄 まとめ
交際費等は租税特別措置法61条の4により原則として損金になりませんが、中小法人であれば年800万円までの定額控除限度額があります。この規定は令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されます。
持分なし医療法人には資本も出資もありませんが、租税特別措置法施行令37条の4第1項1号により純資産の額の100分の60に相当する金額で判定します。内部留保が厚い医療法人では、この金額が1億円を超えていないかを確認してください。
令和6年4月1日以後に支出する飲食費については、1人当たりの金額が1万円以下であれば交際費等から除かれます。ただし、飲食等のあった年月日、参加者の氏名と関係、参加した者の数、金額と店の名称および所在地を記載した書類の保存が要件です。領収書だけでは足りませんので、記録の運用を整えてください。
⚖ 本記事の根拠法令
- 租税特別措置法61条の4第1項(交際費等の損金不算入)
- 租税特別措置法61条の4第2項
- 租税特別措置法61条の4第6項1号、同項2号(1人当たりの金額が政令で定める金額以下である飲食費)
- 租税特別措置法施行令37条の4第1項1号(資本または出資を有しない法人の金額)
- 租税特別措置法施行令37条の5第1項(1万円)、同条2項(カレンダー等の贈答、会議費、取材費)
- 租税特別措置法施行規則21条の18の4(保存する書類の記載事項)
- 基準額が令和6年4月1日以後に支出する飲食費について1万円に引き上げられたことは、国税庁が公表する令和6年度の法人税関係法令の改正の概要によります。中小法人の判定における資本または出資を有しない法人の取扱いは、国税庁タックスアンサーNo.5432によります
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
このテーマの全体像は医療法人と開業医の税務|法人化から役員報酬・承継までにまとめています。