3月決算の会社が6月に定時株主総会を開く。ほとんどの会社がそうしていますが、会社法のどこにも6月までに開けとは書いてありません。では、なぜ3か月なのでしょうか。
この記事では、まず3か月の出どころを確かめ、そのうえで決算日から総会当日までの日程を逆算で組み立てます。期限が条文に定められている手続と、そうでない手続を分けて見ていきます。
- 定時株主総会の3か月が条文上の期限ではないこと(会社法296条1項)
- 監査報告の通知期限にある4週間と1週間(計算規則130条・132条、施行規則132条)
- 計算書類の備置きが総会の2週間前の日から始まること(442条1項1号)
- 会計監査人がいる会社といない会社で日程がどう変わるか
この記事の見出し
3か月は、条文の期限ではない
会社法296条1項は、定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと定めています。一定の時期、としか書いていません。3か月という数字はどこにもありません。
ではなぜ3か月なのか。会社法124条2項が答えです。基準日を定める場合、会社は基準日株主が行使することができる権利の内容を定めなければならないとし、そのかっこ書きで、基準日から3か月以内に行使するものに限る、としています。
多くの会社は、定款で事業年度の末日を定時株主総会の議決権の基準日と定めています。すると、基準日である決算日から3か月以内に総会を開かなければ、その日の株主名簿に載っている株主が議決権を行使できなくなります。定款の定めと124条2項が組み合わさって、3か月という枠が生まれるわけです。
この違いは実務に効きます。3か月を過ぎても総会を開くことは会社法上できます。ただし、基準日を定め直して公告するか、基準日を定めずに総会当日の株主名簿で議決権を数えることになります。決算が固まらず総会が遅れる会社は、この整理をしてください。
決算日から逆算する
総会の日を決めたら、そこから前に戻していきます。期限が定められている手続は4か所です。
作成には期限がない
会社法435条2項は、各事業年度に係る計算書類および事業報告、これらの附属明細書を作成しなければならないと定めています。いつまでに、とは書いてありません。同条4項は、計算書類を作成した時から10年間、計算書類とその附属明細書を保存しなければならないとしています。
作成に期限がないぶん、後ろの手続から逆算するしかありません。次に見る監査の期限が、実質的な作成の締切になります。
監査報告の通知期限が日程を決める
ここが日程表の心臓部です。会社法436条は、監査役設置会社では監査役の監査を、会計監査人設置会社では計算書類について監査役と会計監査人の監査を、事業報告について監査役の監査を受けなければならないと定めています。その通知期限は法務省令にあります。
会計監査人がいる会社の場合。会社計算規則130条1項1号により、会計監査人は、計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、計算書類の附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、そして特定取締役と特定監査役と会計監査人の間で合意により定めた日があるときはその日の、いずれか遅い日までに会計監査報告の内容を通知します。
次に会社計算規則132条1項1号により、特定監査役は、会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日、または合意により定めた日のいずれか遅い日までに、計算関係書類についての監査報告を通知します。
事業報告は別の省令です。会社法施行規則132条1項により、特定監査役は、事業報告を受領した日から4週間を経過した日、事業報告の附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、特定取締役と特定監査役の間で合意した日のいずれか遅い日までに監査報告を通知します。
会計監査人がいない会社の場合。会社計算規則124条1項1号により、特定監査役は、計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、附属明細書を受領した日から1週間を経過した日、合意により定めた日のいずれか遅い日までに監査報告を通知します。
いずれの場合も、合意により定めた日を置けば期間を短くできます。上場していない会社では、この合意で日程を詰めるのが実務です。合意は書面に残してください。
| 誰から誰へ | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 会計監査人の会計監査報告 | 計算書類の受領から4週間、附属明細書の受領から1週間、合意日のいずれか遅い日 | 計算規則130条1項1号 |
| 監査役の監査報告(計算関係書類) | 会計監査報告の受領から1週間、合意日のいずれか遅い日 | 計算規則132条1項1号 |
| 監査役の監査報告(事業報告) | 事業報告の受領から4週間、附属明細書の受領から1週間、合意日のいずれか遅い日 | 施行規則132条1項 |
| 会計監査人がいない会社 | 計算書類の受領から4週間、附属明細書の受領から1週間、合意日のいずれか遅い日 | 計算規則124条1項1号 |
取締役会の承認と招集の決定
会社法436条3項は、取締役会設置会社においては、監査を受けた計算書類および事業報告とこれらの附属明細書は、取締役会の承認を受けなければならないと定めています。期限の定めはありませんが、招集通知に添付する必要がありますので、通知の発送日より前に置きます。
同じ取締役会で、会社法298条4項により総会の招集を決めるのが通例です。日時と場所、目的である事項、書面や電磁的方法による議決権行使を認めるかどうかを決議します。
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備置きと招集通知
会社法442条1項1号は、計算書類および事業報告とこれらの附属明細書、監査報告や会計監査報告を、定時株主総会の日の1週間、取締役会設置会社にあっては2週間前の日から5年間、本店に備え置かなければならないと定めています。同条2項1号により、支店には写しを3年間置きます。
備置きの開始日と、会社法299条1項の招集通知の期限が同じ2週間前になります。実務では同じ日に両方を行います。会社法437条により、取締役会設置会社では招集通知に際して株主に計算書類と事業報告を提供します。
非公開会社で書面投票も電磁的方法による議決権行使も定めていない会社は、299条1項により招集通知が1週間前でよく、442条1項1号の備置きも取締役会がなければ1週間前からです。ただし取締役会設置会社であれば、招集通知が1週間前でも備置きは2週間前からになります。ここは食い違いますので注意してください。
総会当日と、その後
会社法438条2項は、提出された計算書類は定時株主総会の承認を受けなければならないと定めています。事業報告については同条3項により、取締役がその内容を報告します。
例外が439条です。会計監査人設置会社では、436条3項の承認を受けた計算書類が法令および定款に従い財産および損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合には、株主総会の承認を要しません。この場合、取締役は計算書類の内容を定時株主総会に報告します。上場会社の総会で計算書類が報告事項になっているのは、この規定によります。
総会が終わったら、会社法440条1項により、定時株主総会の終結後遅滞なく貸借対照表を公告します。大会社は損益計算書も公告します。同条2項により、公告方法が官報または日刊新聞紙である会社は要旨の公告で足り、同条3項により、5年間ウェブ上に置く方法を選ぶこともできます。同条4項により、有価証券報告書の提出会社にはこの公告義務がありません。
役員の改選があれば登記です。会社法915条1項により、本店の所在地において2週間以内に変更の登記をします。
3月決算の会社の目安
会計監査人がいない非上場の会社であれば、決算日から計算書類の作成までに1か月から6週間、そこから監査に4週間、取締役会と招集通知に2週間、というのが素直な組み方です。合計で3か月にはおさまります。
会計監査人がいる会社は、会計監査報告と監査役の監査報告が順番に積み上がりますので、余裕がありません。合意により定めた日を使って前倒しするか、計算書類の作成そのものを早めるかのどちらかです。上場準備に入った会社が最初に苦労するのはここです。
作るべきものはひとつの表です。決算日、計算書類の提出日、附属明細書の提出日、会計監査報告の通知日、監査役監査報告の通知日、取締役会の日、招集通知の発送日、備置きの開始日、総会の日、公告の日、登記の日。これを毎年同じ様式で埋めていけば、遅れがどこで出ているかが見えます。
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❓ よくある質問
A. 会社法296条1項は一定の時期としか定めていませんので、開くこと自体はできます。ただし決算日を議決権の基準日としている場合、124条2項により基準日から3か月を過ぎると基準日株主が議決権を行使できません。基準日を定め直して公告するか、基準日を使わない整理が必要です。
A. できます。計算規則130条1項1号ハや施行規則132条1項3号のように、合意により定めた日があるときはその日が期限になります。特定取締役と特定監査役、会計監査人がいる場合は会計監査人との合意です。書面に残してください。
A. 取締役会設置会社であれば、会社法442条1項1号により備置きは2週間前の日からです。招集通知の期限とずれることがありますので、日程表では別の行として管理してください。
📄 まとめ
定時株主総会の3か月は会社法296条1項の期限ではなく、決算日を議決権の基準日とする定款の定めと、124条2項の3か月以内という制約が組み合わさって生まれる枠です。
日程を決めるのは監査報告の通知期限です。計算規則130条と132条、施行規則132条の4週間と1週間を積み上げ、そこに取締役会と招集通知と備置きを重ねます。合意により定めた日を使えば短縮できますので、毎年同じ様式の日程表を作って運用してください。
⚖ 本記事の根拠
- 会社法296条1項(定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集)、124条2項(基準日から3か月以内)
- 会社法435条2項・4項(計算書類等の作成と10年の保存)
- 会社法436条1項から3項(監査と取締役会の承認)、298条4項(招集の決定)
- 会社計算規則130条1項1号(会計監査報告の通知期限)、132条1項1号(会計監査人設置会社の監査報告)、124条1項1号(会計監査人がいない会社)
- 会社法施行規則132条1項(事業報告についての監査報告の通知期限)
- 会社法437条(計算書類等の株主への提供)、442条1項1号・2項1号(本店5年、支店3年の備置き)、299条1項
- 会社法438条2項・3項、439条(会計監査人設置会社の特則)
- 会社法440条1項から4項(計算書類の公告)、915条1項(2週間以内の変更登記)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。
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