発行可能株式総数の4倍ルール|公開会社化と株式併合

発行可能株式総数は、会社が発行できる株式の上限として定款に定める数です。この数を増やそうとしたときに立ちはだかるのが、いわゆる4倍ルールです。

ただし、4倍がいつでも効くわけではありません。会社法113条3項が対象にしているのは2つの場面に限られており、しかも株式分割には別途例外が用意されています。どこで効いてどこで効かないのかを取り違えると、資本政策の設計を誤ります。

この記事では、4倍ルールが効く場面を条文で確認し、上場準備でどう影響するのかを整理します。

この記事でわかること

  • 4倍ルールが会社法のどこにあるか
  • 効くのが公開会社に関する2つの場面に限られること
  • 株式併合にも別の4倍の定めがあること
  • 株式分割には例外があり枠を増やせること
  • 非公開会社には4倍の制限がないこと

📌 4倍ルールの条文は113条3項

会社法113条3項は、次に掲げる場合には、当該定款の変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができない、と定めています。

掲げられているのは2つです。1号が、公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合。2号が、公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社となる場合です。

ここから読み取れることが2つあります。ひとつは、非公開会社が非公開会社のまま枠を増やす場面には制限がないこと。もうひとつは、上場準備で譲渡制限を外す定款変更そのものが2号に当たり、その時点で枠が4倍以内に収まっている必要があるということです。

4倍はどこで効くのか公開会社が枠を増やす定款変更113条3項1号 効く非公開会社が公開会社になる定款変更113条3項2号 効く非公開会社が枠を増やす定款変更制限なし株式分割にあわせて枠を増やす184条2項の例外あり

効くのは公開会社に関する2つの場面です。株式分割には別の道が用意されています。

📌 基準になるのは効力発生時の発行済株式

条文は、定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍としています。将来の増資を織り込んだ数ではありません。

上場準備でよくある誤りが、上場時の公募増資を見込んで先に枠を大きく取ろうとすることです。定款変更の時点で発行済株式が100万株であれば、枠は400万株が上限になります。公募で増える分は、定款変更の時点では発行済株式に入っていません。

逆に言えば、株式分割で発行済株式を増やしてから枠を広げれば、より大きな枠を取れます。上場準備で株式分割と定款変更の順番が問題になるのは、この関係があるためです。

📌 株式分割には例外がある

会社法184条2項は、現に2以上の種類の株式を発行しているものを除き、株式会社は466条の規定にかかわらず、株主総会の決議によらないで、株式の分割の効力発生日における発行可能株式総数を、その日の前日の発行可能株式総数に分割の割合を乗じて得た数の範囲内で増加する定款の変更をすることができる、と定めています。

1株を10株に分割するなら、発行可能株式総数も10倍までは株主総会の決議なしに増やせるということです。分割によって発行済株式が10倍になるので、両者の比率は変わりません。既存株主に不利益がないため、決議を不要としています。

ただし条件が2つあります。ひとつは、種類株式発行会社では使えないこと。もうひとつは、増やせるのは分割の割合を乗じた範囲内までであることです。種類株式が残っている段階では使えませんので、ここでも種類株式の整理が先に来ます。

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📌 株式併合にも4倍の定めがある

113条3項とは別に、株式併合についても4倍の定めがあります。会社法180条2項は、株式の併合をしようとするときに株主総会の決議で定める事項を掲げており、その4号が効力発生日における発行可能株式総数です。

そして同条3項が、この4号の数は、公開会社にあっては、効力発生日における発行済株式の総数の4倍を超えることができないとしています。

株式併合は発行済株式を減らす行為ですから、そのままでは枠と発行済株式の比率が大きく開きます。10株を1株に併合すれば発行済株式は10分の1になり、枠を据え置けば比率は10倍に広がってしまいます。これを防ぐために、併合の決議のなかで枠も同時に決め直させる仕組みです。

📌 設立のときにも似た制限がある

会社法37条3項は、設立時発行株式の総数は、設立しようとする会社が公開会社である場合には、発行可能株式総数の4分の1を下ることができないと定めています。表現は逆向きですが、実質は同じ制限です。

4分の1を下ることができないということは、発行可能株式総数は設立時発行株式の総数の4倍までということです。設立の場面から一貫して、公開会社には枠と発行済株式の比率について4倍という上限が課されています。

この一貫性を押さえておくと、上場準備で枠を設計するときに迷いません。公開会社になる以上、いつの時点でも枠は発行済株式の4倍以内。そのうえで、分割にあわせて枠を広げる道が184条2項に用意されている、という構造です。

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公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

❓ よくある質問

Q. 非公開会社なら発行可能株式総数はいくらでも増やせますか

A. 会社法113条3項が対象にしているのは公開会社に関する2つの場面ですので、非公開会社が非公開会社のまま枠を増やす場面に4倍の制限はありません。ただし将来公開会社になるときには、その時点で4倍以内に収める必要があります。

Q. 公募増資を見込んで先に大きな枠を取れませんか

A. 取れません。会社法113条3項は、定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を基準にしています。将来の増資は算入されません。枠を広げたいなら、先に株式分割で発行済株式を増やすことになります。

Q. 株式分割で枠を増やすとき、登記はどうなりますか

A. 発行可能株式総数は登記事項ですので、変更の登記が必要です。会社法915条1項により本店の所在地において2週間以内に行います。株式の分割による発行済株式の総数の変更も同時に登記します。

Q. 種類株式があると184条2項は使えないのですか

A. 現に2以上の種類の株式を発行している場合は使えません。条文が明文で除いています。種類株式を普通株式に整理してから分割と枠の拡大を行う順番になります。

Q. 株式併合のときに枠を減らし忘れるとどうなりますか

A. 会社法180条2項4号は、効力発生日における発行可能株式総数を株主総会の決議で定めなければならないとしています。決議事項ですので、定めないまま併合を行うことはできません。同条3項の4倍の範囲内で定めることになります。

📄 まとめ

4倍ルールの条文は会社法113条3項です。効くのは、公開会社が枠を増やす場面と、非公開会社が公開会社になる場面の2つに限られます。

基準は定款変更が効力を生じた時の発行済株式の総数です。将来の公募増資は算入されません。

株式分割には会社法184条2項の例外があり、分割の割合の範囲内なら株主総会の決議なしに枠を増やせます。ただし種類株式発行会社では使えません。

株式併合にも会社法180条3項に4倍の定めがあります。設立の場面では37条3項が4分の1という形で同じ制限を課しています。

⚖ 本記事の根拠

記載内容の根拠

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の制度設計や運用にあたっては、監査法人および主幹事証券会社にご確認ください。

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