古い建物にアスベストが使われている。工場にPCBを含む機器が残っている。これらの除去費用は資産除去債務になるのか。
判断の出発点は定義です。企業会計基準第18号の第3項(1)は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう、としています。
ですから、除去のときに法令または契約で義務が生じるかどうかが分かれ目になります。この記事では、その判定の順番と、見積りができない場合の扱いを整理します。
- 資産除去債務の定義が第3項(1)にあること
- 法律上の義務に準ずるものの意味が第28項で説明されていること
- 使用中の義務と除去時の義務を分けて考えること
- 処理方法が定まっていれば見積りができる場合があること
- 見積りができない場合は注記で対応すること
- 転用や遊休は除去に含まれないこと
📌 結論 除去のときに義務が生じるか
問うべきは2つです。除去に関して法令または契約で義務があるか。そして、その義務は履行を免れることがほぼ不可能か。この2つを満たせば資産除去債務です。
企業会計基準第18号の第3項(1)は、資産除去債務を、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの、と定義しています。
ここでの鍵は、当該有形固定資産の除去に関して、という部分です。使っている間の管理義務ではなく、除去のときに生じる義務が対象です。
そして、法律上の義務に準ずるものについて、第28項が説明しています。債務の履行を免れることがほぼ不可能な義務を指し、法令又は契約で要求される法律上の義務とほぼ同等の不可避的な義務が該当する、とされています。
ですから、社内の方針として除去することにしている、という程度では足りません。免れることがほぼ不可能かどうかが基準です。
🧭 判定の順番
使用中に発生する義務(たとえば飛散防止のための日常的な管理)と、除去のときに発生する義務は分けて考えます。資産除去債務は後者の話です。
まず、その物質について、除去の義務が法令または契約で課されているかを確かめます。ここは法令の確認になりますから、専門家の助けを借りることになります。
次に、その義務がいつ生じるのかを見ます。使用中の飛散防止措置や、定期的な点検の義務は、除去に関する義務ではありません。建物を解体するときに除去しなければならない、という義務が資産除去債務の候補です。
そのうえで、履行を免れることがほぼ不可能といえるかを検討します。建物を解体する以上は必ず処理が必要になる、という関係であれば、この条件を満たすと考えられます。
転用や遊休は除去ではない
第3項(2)は、除去とは、有形固定資産を用役提供から除外することをいう(一時的に除外する場合を除く)、としています。そして、転用や用途変更は含まれず、遊休状態になる場合も除去に該当しない、とされています。
使わなくなった工場を遊休のまま持っている、というだけでは除去にはあたりません。
法令上の義務の確認、見積りの可否の判断、計上する場合の計算、計上しない場合の注記の文案まで対応します。古い建物や工場をお持ちの会社では、上場準備の途中でこの論点が出てくることが多くあります。早めにご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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📐 見積りができるか
処理方法が定まっているものは、見積りができる側に寄ります。逆に、時期の見込みが立たない場合には、計上せずに注記という道があります。
該当すると判断したら、次は金額です。割引前の将来キャッシュ・フローを合理的に見積れるかどうかを確かめます。
企業会計基準適用指針第21号の結論の背景第19項は、有害物質等に汚染された有形固定資産については、法令等によりその平均的な処理作業が定められ、その工程が明確にされているため、ほぼ画一的に将来キャッシュ・フローを見積ることができる場合がある、と述べています。
つまり、処理方法が法令等で定まっているものについては、見積りができる側に寄る、ということです。あとは数量と単価、そして時期の問題になります。
数量については、調査を実施しているかどうかが分かれ目です。調査をしていなければ数量が出ませんから、まず調査するかどうかの判断になります。
📄 計上しないという結論
計上しないという結論を出すときは、その理由を書ける状態にしてください。何も検討していないのと、検討したうえで見積れないと判断したのとでは、まったく別の話になります。
見積れないという結論もあり得ます。その場合は、第16項(5)により、当該資産除去債務の概要、合理的に見積ることができない旨およびその理由を注記します。
大事なのは、その理由を説明できることです。時期の見込みが立たない、数量が把握できていない、といった具体的な事情を書きます。何も検討していないので書けない、というのは通りません。
注記の書き方は資産除去債務の注記は何を書くかにまとめています。
計上する場合の流れ
計上する場合は、割引後の金額を負債に計上し、同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます。そして第7項により、残存耐用年数にわたり減価償却を通じて費用配分します。
割引率の決め方は資産除去債務の割引率は何を使うかで扱っています。建物の解体時期に対応する年限を使うことになります。
❓ よくある質問
A. 除去に関して法令または契約で義務が課され、その履行を免れることがほぼ不可能であれば、定義に当てはまります。個別に法令を確認して判断します。
A. 定義は、当該有形固定資産の除去に関して要求される義務としています。使用中の管理義務は除去に関する義務ではありません。
A. 第28項は、債務の履行を免れることがほぼ不可能な義務を指し、法令又は契約で要求される法律上の義務とほぼ同等の不可避的な義務が該当する、としています。
A. 履行を免れることがほぼ不可能とはいえない場合、定義に当てはまりません。
A. 第3項(2)により、遊休状態になる場合は除去に該当しません。
A. 第16項(5)により、概要、合理的に見積ることができない旨およびその理由を注記します。
A. 調査をしていなければ数量が出ません。調査するかどうかの判断から始まります。
A. 第10項により、資産除去債務の帳簿価額および関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します。
📄 まとめ
判断の出発点は定義です。当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの。使用中の管理義務ではなく、除去のときの義務が対象です。
法律上の義務に準ずるものとは、債務の履行を免れることがほぼ不可能な義務です(第28項)。社内方針だけでは足りません。
該当すると判断したら、次は見積りです。処理方法が法令等で定まっているものは、見積りができる側に寄ります。数量、単価、そして時期を押さえてください。
見積れないという結論もあり得ます。その場合は概要と、見積ることができない旨と、その理由を注記します。何も検討していないという状態にはしないでください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第3項、第7項、第10項、第16項、第28項
- 企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第2項、第3項、結論の背景第19項
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