相続税の計算方法は5ステップ!速算表と具体例でやさしく解説

「うちの相続税はいくらになるのだろう」。基礎控除を超えていそうだと分かった瞬間、多くの方が次に不安になるのがこの点です。ところが、ネットで見つけた税率表に遺産の総額を掛けてみると、とんでもない金額が出てきて驚いてしまう——これはよくある勘違いです。

相続税は、遺産の合計額に税率を直接掛けて計算する税金ではありません。いったん法定相続分で分けたと仮定して税率を当てはめ、そのあとで実際の取り分に応じて割り振る、という独特の順序をたどります。

この記事では、税金の知識がまったくない方に向けて、相続税の計算方法を5つのステップに分け、速算表と2つの具体例でやさしく整理します。

この記事でわかること

  • 相続税の計算が5つのステップで進むこと(全体像)
  • 相続税の速算表(10%〜55%)の正しい使い方
  • 配偶者+子2人/子2人のみのモデルケース2つの計算
  • 孫や兄弟姉妹にかかる「2割加算」のしくみ
  • 自分で概算するときにつまずきやすいポイント

🧾 相続税の計算は「5つのステップ」で進む

相続税額の算出方法は、各人が実際に取得した財産に直接税率を乗じるというものではありません。正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの額(課税遺産総額)を、民法に定める相続分で按分した金額に税率を乗じます(国税庁タックスアンサー No.4155「相続税の税率」)。まずは全体の流れをつかんでください。

相続税の計算 5つのステップ 1 各人の課税価格を合計して「正味の遺産額」を出す 2 基礎控除額を引いて「課税遺産総額」を出す 3 課税遺産総額を法定相続分で分けたものと仮定する 4 速算表に当てはめて計算し、合計=「相続税の総額」 5 実際の取得割合で按分し、2割加算・税額控除を反映

相続税の計算の流れ(国税庁タックスアンサー No.4152・No.4155の順序にもとづき作成)

📊 ステップ1・2:正味の遺産額から基礎控除を引く

最初に、財産を取得した人ごとに課税価格を計算し、それを合計します。プラスの財産(預貯金・不動産・株式など)にみなし相続財産(生命保険金・死亡退職金など)を加え、非課税財産を除き、債務と葬式費用を差し引いた金額です。これに一定期間内の生前贈与財産を加算したものが各人の課税価格となり、その合計が「正味の遺産額」です(国税庁タックスアンサー No.4152「相続税の計算」)。

次に、そこから基礎控除額を差し引きます。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

根拠:相続税法15条1項(e-Gov法令検索・相続税法)。ここで使う「法定相続人の数」は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数です(相法15条2項)。養子は、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか数に含められません。

差し引いた残りが「課税遺産総額」です。基礎控除額を超えない場合は、原則として相続税はかかりません。この判定については、連載第11回「相続税はいくらから?基礎控除3,600万円の壁」でくわしく扱っています。なお、相続を放棄した人がいても基礎控除の計算では人数に数える点は、第8回「相続放棄の期限は3か月!手続き・費用・限定承認との違いを解説」もあわせてご覧ください。

💰 ステップ3・4:法定相続分で仮に分けて速算表に当てはめる

ここが相続税の計算でいちばん独特なところです。課税遺産総額を、実際にどう分けたかにかかわらず、いったん「法定相続分どおりに取得したもの」と仮定して按分します(相続税法16条)。そのうえで、各人の金額に次の速算表を当てはめ、算出された税額を合計したものが「相続税の総額」になります。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税の速算表(国税庁タックスアンサー No.4155/根拠:相法16条)。この表は「法定相続分に応ずる取得金額」に当てはめるものです。遺産の総額や実際の取り分にそのまま掛ける表ではありません。

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら

🗒️ ステップ5:実際に取得した割合で按分し、加算・控除する

相続税の総額が出たら、それを実際に財産を取得した各人の課税価格の割合で割り振ります(相続税法17条)。つまり、多く受け取った人が多く負担するしくみです。

そのうえで、財産を取得した人が配偶者・父母・子以外である場合は、税額控除を差し引く前の相続税額に20%相当額を加算します(2割加算)。最後に、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除などの税額控除を差し引いた残りが、各人が実際に納める税額です。

📄 モデルケース2つで計算してみる

ケース1:配偶者+子2人、正味の遺産額1億円

ケース1(配偶者+子2人・正味の遺産額1億円)の計算 正味の遺産額 1億円 -基礎控除 4,800万円(3,000+600×3人) 課税遺産総額 5,200万円 配偶者 1/2 = 2,600万円 ×15%-50万円=340万円 子 1/4 = 1,300万円 ×15%-50万円=145万円 子 1/4 = 1,300万円 ×15%-50万円=145万円 相続税の総額 630万円

ステップ2から4までを分解した図。法定相続分で仮に分けた金額に速算表を当てはめ、合計したものが相続税の総額になります。

相続税の総額630万円を、実際の取得割合で割り振ります。仮に配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつ取得した場合、配偶者315万円、子157万5,000円ずつとなります。ここで配偶者は、1億6,000万円または法定相続分相当額までは配偶者の税額軽減により納付税額が生じないため、この例では配偶者の納付額は0円、子2人で合計315万円が納税額の目安となります。

配偶者の税額軽減は、適用を受けるために相続税の申告書を提出することが要件です(国税庁タックスアンサー No.4158「配偶者の税額の軽減」)。納税額が0円でも申告が必要になる点にご注意ください。この論点は連載第15回でくわしく扱います。

ケース2:子2人のみ、正味の遺産額6,000万円

項目 ケース1(配偶者+子2人) ケース2(子2人のみ)
正味の遺産額 1億円 6,000万円
法定相続人の数 3人 2人
基礎控除額 4,800万円 4,200万円
課税遺産総額 5,200万円 1,800万円
法定相続分に応ずる取得金額 配偶者2,600万円/子1,300万円ずつ 子900万円ずつ
相続税の総額 630万円 180万円
納付額の目安 配偶者0円/子157万5,000円ずつ 子90万円ずつ

法定相続分どおりに取得したと仮定した概算です。小規模宅地等の特例など各種特例の適用は考慮していません。

ケース2では、子2人がそれぞれ2分の1(900万円)を取得したものと仮定し、900万円×10%=90万円が2人分で相続税の総額180万円となります。実際にも2分の1ずつ取得すれば、納付額は1人90万円です。配偶者がいない相続(いわゆる二次相続)は、法定相続人が減って基礎控除額も小さくなり、配偶者の税額軽減も使えないため、遺産額が同じでも税負担が重くなりやすい点は覚えておいてください。

👤 孫や兄弟姉妹は「2割加算」に注意

相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含みます)および配偶者以外である場合には、その人の相続税額に2割相当額が加算されます(相続税法18条1項、国税庁タックスアンサー No.4157「相続税額の2割加算」)。

2割加算の対象になる人・ならない人 加算なし(そのままの税額) ・配偶者 ・子(実子・養子) ・父母 ・代襲相続人となった孫 加算あり(税額に+20%) ・兄弟姉妹、甥・姪 ・代襲相続人ではない孫 ・孫養子(代襲の場合を除く) ・遺贈を受けた第三者など

2割加算の対象(相続税法18条/国税庁タックスアンサー No.4157にもとづき作成)。加算額は、税額控除を差し引く前の相続税額×0.2です。

たとえば、お孫さんを養子にして相続税の対策をした場合、法定相続人の数が増えて基礎控除額は増えますが、その孫養子の税額には2割加算がかかります(子がすでに亡くなっていて代襲相続人となっている場合を除きます)。増える基礎控除と、加算される税額の両方をあわせて検討する必要があります。

計算の前提づくりでつまずいたら

相続税の計算は、財産の評価額と法定相続人の確定という前提が固まってはじめて意味のある数字になります。台東区(上野・浅草・入谷)で相続税のご相談は当事務所へ。お問い合わせフォームからご連絡ください。

相続税申告支援についてお問い合わせ 料金の目安を見る

⚖️ 自分で概算するときにつまずきやすい点

  • 速算表を遺産の総額にそのまま掛けてしまう(正しくは法定相続分に応ずる取得金額に当てはめる)
  • 不動産を時価や固定資産税評価額のまま入れてしまう(相続税では路線価方式・倍率方式などで評価します)
  • 生命保険金や死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を差し引き忘れる
  • 債務と葬式費用を引き忘れる、または引けないものまで引いてしまう
  • 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を、申告不要のまま使えると思い込む

とくに不動産の評価は、概算と実際の申告額が大きくずれる原因になりがちです。土地の評価は連載第17回で、小規模宅地等の特例は第16回であらためて扱います。手続き全体の流れと期限は第1回「親が亡くなったらやることは?相続手続きの流れと期限一覧」に、連載の全体像は相続税 完全ガイド(目次)にまとめています。

💬 よくある質問

Q. 遺産の分け方を変えれば、相続税の総額は減りますか。

相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定して計算するため、実際の分け方では変わりません。ただし、その総額を各人に割り振ったあとの段階で、配偶者の税額軽減や2割加算が働くため、誰がどれだけ取得するかによって「実際に納める合計額」は変わります。

Q. 相続放棄をした人がいると、基礎控除額は減りますか。

減りません。基礎控除額や相続税の総額の計算で使う「法定相続人の数」は、相続の放棄がなかったものとした場合の相続人の数によります(相法15条2項)。ただし、実際に財産を取得しない人には税額の割り振りは生じません。

Q. 概算で「かかりそう」と分かったら、次に何をすればよいですか。

相続の開始を知った日の翌日から10か月以内という申告期限から逆算し、財産の評価と遺産分割の話し合いを進めることになります。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」でおおよその要否を確認できますが、不動産や自社株がある場合は早めに専門家にご相談ください。

📄 まとめ

  • 相続税は5ステップで計算する。遺産総額に税率を直接掛けるのではない
  • 正味の遺産額-基礎控除額=課税遺産総額。これを法定相続分で仮に按分する
  • 速算表(10%〜55%)は「法定相続分に応ずる取得金額」に当てはめる
  • 合計した相続税の総額を、実際の取得割合で各人に割り振る
  • 配偶者・父母・子以外が取得した場合は、税額に2割加算がある

次回・第13回では、そもそも何が相続税の対象になり、何がならないのか(本来の相続財産・みなし相続財産・非課税財産・債務控除)を整理します。

参考

👤 監修者
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷1丁目)
上野・浅草・入谷を中心に、相続税申告と生前対策のご相談に対応しています。

優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

本記事は令和8年(2026年)9月時点の法令等に基づく一般的な解説です。個別の判断は税理士等の専門家にご相談ください。

台東区(上野・浅草・入谷)の相続税申告なら

「概算では出したが、この金額で合っているか不安」「不動産の評価が読めない」といったご相談も承ります。お問い合わせフォームからご連絡ください。

相続税申告支援についてお問い合わせ

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406