オフィスを途中で引き払うことになった。使用権資産とリース負債はどう落とすのか。資産除去債務はどうなるのか。
ここで混乱しやすいのが、資産除去債務は解約で消えないという点です。むしろ、出ていくときに原状回復の義務が現実化します。使用権資産のほうには、その除去費用が加算されています。
この記事では、使用権資産の中身を確認したうえで、落とすものと残るものを整理します。
- 使用権資産に除去費用が加算されていること(第34号 第33項)
- 資産除去債務は解約で消えないこと
- 解約日と退去日がずれる場合があること
- 原状回復の見積りを取り直す必要があること
- 敷金の簡便法を採っていた場合の精算
- 1件の実績が他の物件の見積りに影響すること
📌 結論 除去費用は使用権資産に入っている
使用権資産には、資産除去債務に対応する除去費用が加算されています。ですから中途解約で使用権資産を落とすとき、その中には原状回復の分も入っています。ここを分けて考えないと、二重に落としたり、落とし忘れたりします。
企業会計基準第34号の第33項は、借手は、リース開始日に、第34項に従い算定された額によりリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上する、としています。
つまり、使用権資産の中には除去費用が含まれています。中途解約でこれを落とすとき、その内訳を分けて把握していないと、資産除去債務との対応関係が見えなくなります。
負債側の資産除去債務は、別に立っています。こちらは解約によって消えるのではなく、履行されることで落ちます。
🔍 落とすものと、残るもの
資産除去債務は解約で消えるものではありません。むしろ、出ていくときに履行することになります。ここが混同されやすいところです。
中途解約で落ちるのは、リース負債と使用権資産です。原資産を使う権利がなくなり、将来のリース料も支払わなくなるからです。
一方、資産除去債務は残ります。というより、そこで履行することになります。原状回復工事を行い、支払い、債務を落とす。この流れです。
違約金が発生する契約もあります。契約書で解約の条件を確かめてください。原状回復の範囲についても、契約書に定めがあるはずです。
敷金を差し入れていて簡便法を採っていた場合は、その精算が必要になります。原則法と簡便法の違いは資産除去債務の原則法と簡便法で扱っています。
解約日の決定、残高の確認、原状回復見積りの取り直し、そして仕訳と注記まで対応します。複数拠点を持つ会社では、1件の実績を他の物件の見積りにどう反映するかもあわせてご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか
いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。
初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら
🧭 手順
解約が決まった時点と、実際に出ていく時点がずれることがあります。どちらの時点で何を落とすのかを、先に決めておいてください。
順番があります。まず解約日を確定すること。次に契約書で違約金と原状回復の範囲を確認すること。そして原状回復の見積りを取り直すことです。
見積りを取り直すのは、当初の見積りが古くなっているためです。工事単価は動きますし、内装の範囲も変わっているかもしれません。差額が出れば、企業会計基準第18号の第10項により、資産除去債務の帳簿価額および関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します。
解約日と退去日がずれる場合の扱いは、先に決めておいてください。権利が消える日と、実際に工事をする日が違うことは珍しくありません。
なお、中途解約の具体的な会計処理の細目は適用指針に定めがあります。金額の出し方については、最新の適用指針をご確認ください。
⚠️ 見落としやすいところ
1件の解約が、他の物件の資産除去債務の見積りに影響することがあります。実際にかかった金額は、次の見積りの根拠になります。
いちばん多いのが、除去費用を二重に落としてしまうケースです。使用権資産に加算されている除去費用と、負債側の資産除去債務は対応しています。片方だけを見て処理すると、損益が合いません。
もうひとつが、他の物件への影響です。1件の物件で原状回復にいくらかかったかという実績は、他の物件の見積りの根拠になります。同じビル、同じ規模、同じ内装であれば、その単価を使えます。
逆にいえば、当初の見積りが実績と大きく違っていた場合、他の物件の見積りも見直す必要が出てきます。1件の解約を、見積り全体を点検する機会にしてください。
本社の移転など、規模の大きい場合の整理は本社移転の原状回復費用は資産除去債務か特別損失かにまとめています。
❓ よくある質問
A. 消えません。原状回復の義務は解約によって現実化します。履行することで落ちます。
A. 入っています。第34号第33項が、資産除去債務に対応する除去費用を加算するとしています。
A. リース負債と使用権資産です。資産除去債務は履行に応じて処理します。
A. 取り直してください。差額は見積りの変更として処理します(第18号第10項)。
A. 権利が消える日と工事をする日は別です。それぞれ何が起きるかを先に整理してください。
A. 契約書の定めを確認してください。解約の条件と金額が書かれているはずです。
A. 敷金から差し引かれる形で精算されます。簡便法の前提が崩れていないかを確認してください。
A. します。実績は他の物件の見積りの根拠になります。見積り全体を点検する機会にしてください。
📄 まとめ
使用権資産には、資産除去債務に対応する除去費用が加算されています(第34号第33項)。中途解約でこれを落とすときは、内訳を分けて把握してください。
資産除去債務は解約で消えません。出ていくときに履行することになります。
手順は、解約日の確定、契約書の確認、見積りの取り直し、残高の確認、そして処理です。解約日と退去日がずれる場合の扱いは先に決めてください。
そして、1件の実績を他の物件の見積りに反映すること。ここまでやって、はじめて解約の処理が完了します。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第31項、第33項、第34項、第39項から第42項
- 企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第10項、第11項、第16項
- 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」
あわせて読みたい