調査の途中で、パソコンの中を見せてほしい、スマートフォンを見せてほしい、と言われることがあります。
国税通則法が定めているのは、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件の検査と、その提示もしくは提出を求めることです。事業に関するもの、という限定がついています。
ですから、端末を丸ごと渡すという話にはなりません。この記事では、条文の範囲を確認したうえで、実際にどう応じるかを整理します。
- 検査の対象が「その者の事業に関する」帳簿書類その他の物件であること
- 提示もしくは提出を求めることができるとされていること
- 写しを含むと条文に明記されていること
- 端末そのものと、その中の事業に関するデータは別であること
- 留置きの対象が「当該調査において提出された物件」であること
- 事前通知の項目に、調査の対象となる物件が含まれていること
📌 結論 事業に関するもの、という限定がある
検査の対象は「その者の事業に関する」帳簿書類その他の物件です。事業に関するもの、という限定がついています。ここが線を引く出発点になります。
国税通則法の第74条の2第1項は、当該職員が、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、または当該物件(その写しを含む)の提示もしくは提出を求めることができる、としています。
読むべきは「その者の事業に関する」という部分です。何でも見られるという規定ではありません。事業に関する物件です。
そして「その写しを含む」とあります。原本でなければならない、というものでもありません。
この2つを押さえておくと、話の進め方が変わります。パソコンという物に着目するのではなく、その中の、事業に関するデータに着目する。そこを特定して出す、という形になります。
💻 何が対象で、何が対象でないか
全部か、ゼロかではありません。事業に関する部分を特定して出す。これが条文の建て付けに沿った対応です。
会計システムのデータや、業務で作った資料は、事業に関する物件です。求められれば出すことになります。
一方、業務用のパソコンに入っている私的なデータや、個人のスマートフォンの中の私的なやり取りは、事業に関する物件ではありません。ここは分けて扱います。
問題になるのは、混ざっている場合です。個人のスマートフォンで業務のやり取りをしている、という会社は珍しくありません。この場合、事業に関する部分を特定して、その部分を出すことになります。
特定してもらうということ
どのフォルダの、どの期間の、どの取引に関するものか。これを特定してもらってください。全部見せてください、という求めに対しては、何を確かめたいのかを聞くのが先です。
事前通知の項目には、調査の対象となる帳簿書類その他の物件が含まれています(国税通則法第74条の9第1項)。通知の段階で、何を見に来るのかは示されているはずです。
どこまで出すのか、どう出すのか、何を残すのか。事業に関する部分の特定から、提出の形、預り証の確認まで対応します。電子データの調査は準備の仕方で負担がまったく変わります。上場準備中の会社では、社内のデータ管理のルールづくりもあわせてご相談ください。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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🧭 進め方
端末を渡して自由に見てもらうのと、必要なデータを特定して出すのとでは、意味が違います。後者で足りる場面がほとんどです。
端末を渡して自由に見てもらうのと、必要なデータを特定して出すのとでは、意味がまったく違います。前者は、事業に関するもの以外まで目に触れることになります。
実務では、こちらで検索して、該当するファイルを印刷するかコピーして渡す、という形にすることが多くあります。この形なら、何を渡したかが残ります。
渡したものの一覧は必ず作ってください。日付、ファイル名、渡した相手。あとで何を出したかがわからなくなると、話が振り出しに戻ります。
📦 預けてほしいと言われたら
原本を預けると、日々の業務が止まることがあります。写しで足りるのかどうかは、預ける前に確かめてください。
国税通則法の第74条の7は、国税庁等または税関の当該職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる、としています。
ここで押さえておきたいのは、留め置けるのが「当該調査において提出された物件」であるという点です。提出していないものが対象になるわけではありません。
預けるときは、何を預けるのかを一つずつ特定してください。そして、預り証を受け取ってください。まとめて一式、という預け方をすると、あとで何を預けたのかがわからなくなります。
原本を預けると業務が止まる
パソコンそのものや、使用中の帳簿の原本を預けると、日々の業務が止まります。写しで足りるのかどうかは、預ける前に相談してください。条文にも「その写しを含む」とあります。
どうしても原本が必要ということであれば、いつ返してもらえるのかを確かめておいてください。
❓ よくある質問
A. 国税通則法第74条の2第1項の検査の対象は、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件です。事業に関するもの、という限定がついています。
A. 事業に関する記録が含まれる範囲と、それ以外は別です。全体を渡すという話にはなりません。範囲を特定してもらってください。
A. 条文に「その写しを含む」とあります。写しで足りるかどうかは相談できます。
A. 必要なデータを特定して出す形で足りる場面がほとんどです。何を確かめたいのかを先に聞いてください。
A. 第74条の7は、当該調査において提出された物件を留め置くことができるとしています。何を提出するかの段階で、範囲を特定してください。
A. 何を預けたのかを記録に残すため、一覧と預り証を受け取ってください。
A. 事前通知の項目に、調査の対象となる帳簿書類その他の物件が含まれています(第74条の9第1項)。
A. 業務のデータと私的なデータを分けておくことです。混ざっていると、その場で切り分ける作業が発生します。
📄 まとめ
国税通則法第74条の2第1項の検査の対象は、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件です。事業に関するもの、という限定がついています。
ですから、端末を丸ごと渡すという話にはなりません。事業に関する部分を特定して、その部分を出す。これが条文に沿った形です。
条文には「その写しを含む」ともあります。原本を預けると業務が止まる場面では、写しで足りるかを先に相談してください。
留置きの対象は、当該調査において提出された物件です(第74条の7)。何を提出するかの段階で範囲を決め、預り証を受け取ってください。
📚 参考(公的な一次情報)
- 国税通則法 第74条の2第1項(当該職員の質問検査権)
- 国税通則法 第74条の7(提出物件の留置き)
- 国税通則法 第74条の9第1項(納税義務者に対する調査の事前通知等)
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