会社を買った。個別の貸借対照表には子会社株式が並んでいるだけで、のれんという科目は見当たらない。どこにあるのか。
のれんは連結で出てきます。親会社の投資と、それに対応する子会社の資本を相殺消去したときの差額。これがのれんです。個別ではのれんという概念そのものが出てきません。
この記事では、個別と連結で拠り所になる基準が違うことを確認したうえで、取得原価の範囲がどうずれるのかを整理します。
- 個別では子会社株式を取得原価で計上すること(第10号第17項)
- 連結で投資と資本を相殺消去し、差額がのれんになること(第22号第23項・第24項)
- のれんが20年以内で償却されること(第21号第32項)
- 個別の取得原価は金融商品会計基準等に従って算定すること(第21号第94項)
- 取得関連費用が連結では発生した事業年度の費用になること(第21号第26項)
- 取得原価の配分が企業結合日以後1年以内であること(第21号第28項)
📌 結論 のれんは連結で出てくる
個別では子会社株式という1行が並ぶだけで、のれんは出てきません。のれんは連結で相殺消去したときに初めて現れます。同じ買収でも、見えるものがまったく違います。
個別財務諸表では、企業会計基準第10号の第17項により、子会社株式及び関連会社株式は取得原価をもって貸借対照表価額とします。買った金額がそのまま資産として並びます。
連結では違います。企業会計基準第22号の第23項が、親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本は相殺消去する、としています。そして第24項が、相殺消去にあたり差額が生じる場合には、当該差額をのれん(又は負ののれん)とする、としています。
つまり、のれんは相殺消去の結果として現れる差額です。買った時点で「のれんをいくらで買った」という取引があるわけではありません。
🔢 のれんが出てくるまで
個別の帳簿だけを見ていると、のれんの存在に気づけません。連結の作業をしてはじめて金額が出ます。
連結の作業では、まず子会社の資産と負債を支配獲得日の時価で評価します。含み益や含み損がここで表に出ます。
そのうえで、親会社の投資額と、対応する子会社の資本を相殺します。残った差額がのれんです。
のれんは、企業会計基準第21号の第32項により、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。
その後の減損の判定についてはのれんの減損はいつ判定するかで扱っています。差額がマイナスになる場合は負ののれんが出たらどう処理するかをご覧ください。
支配獲得日の時価評価、投資と資本の相殺消去、のれんの算定と償却期間の根拠づくり、そして個別との差の説明資料まで対応します。過去の買収を上場準備でさかのぼって作り直す場面でも、資料の集め方からお手伝いします。公認会計士・税理士が直接お受けします。初回のご相談は無料です。
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⚖️ 取得原価の範囲がずれる
取得関連費用の扱いは、連結と個別で分かれ得ます。買収のたびに、個別と連結の両方で金額を確かめてください。片方だけ見ていると差が説明できなくなります。
企業会計基準第21号の第23項は、被取得企業又は取得した事業の取得原価は、原則として、取得の対価となる財の企業結合日における時価で算定する、としています。これは連結の話です。
一方、同基準の結論の背景第94項は、個別財務諸表における子会社株式の取得原価は、従来と同様に、金融商品会計基準及び移管指針第9号に従って算定することに留意する、と述べています。
拠り所が違うということは、金額が一致しないことがあるということです。とくに取得関連費用の扱いです。第26項は、取得関連費用は発生した事業年度の費用として処理する、としています。これは連結の取扱いです。
買収のたびに、個別と連結の両方で金額を確かめてください。片方だけを見ていると、差の説明ができなくなります。
配分の期限
第28項は、取得原価は、識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して企業結合日以後1年以内に配分する、としています。
1年以内という期限があります。暫定的な処理のまま放置しない、ということです。
🏢 IPO準備でつまずくところ
過去の買収を連結で作り直すのは、想像よりずっと大変です。支配獲得日時点の資料が残っているかどうかで、作業量が何倍も変わります。
いちばん大変なのが、過去の買収について連結を作り直す作業です。支配獲得日時点の資産と負債の時価を今から評価するのは、資料が残っていないと手が出ません。
株式譲渡契約書、当時のデューデリジェンス報告書、被取得企業の決算書、不動産の評価資料。これらが手元にあるかどうかで、作業量が何倍も変わります。
償却期間の根拠も見られます。20年以内のその効果の及ぶ期間、と定められている以上、何年としたのか、なぜその年数なのかを説明できる必要があります。事業計画の期間や、顧客関係の継続見込みなどが根拠になります。
のれんの金額が大きい場合は、上場審査で減損リスクの説明を求められます。この点はのれんの減損はいつ判定するかにまとめています。
❓ よくある質問
A. 出ません。個別では子会社株式を取得原価で計上します(第10号第17項)。
A. 連結です。投資と資本の相殺消去で生じた差額をのれんとします(第22号第23項・第24項)。
A. 20年以内のその効果の及ぶ期間です(第21号第32項)。
A. 拠り所になる基準が違います。個別は金融商品会計基準および移管指針第9号に従います(第21号第94項)。
A. 連結では、発生した事業年度の費用として処理します(第21号第26項)。
A. 企業結合日以後1年以内です(第21号第28項)。
A. 時価評価で表に出ます。子会社の資本が減り、のれんが大きくなる方向に働きます。
A. 支配獲得日時点の資料が残っていれば可能です。契約書と当時の決算書、評価資料を早めに集めてください。
📄 まとめ
個別では子会社株式を取得原価で計上するだけで、のれんは出てきません。のれんは連結で投資と資本を相殺消去したときの差額です。
のれんは20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって規則的に償却します。何年としたのかの根拠を残してください。
個別と連結では取得原価の拠り所になる基準が違います。とくに取得関連費用の扱いに注意してください。
そして、取得原価の配分は企業結合日以後1年以内です。上場準備で過去の買収を作り直す場合は、当時の資料が残っているかがすべてです。
📚 参考(公的な一次情報)
- 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第17項
- 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第23項、第26項、第28項、第32項、結論の背景第94項
- 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第23項、第24項
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