海外とのソフトウェア取引の税務|源泉徴収・租税条約・消費税の判定

※本記事は2026年10月7日時点の公表資料に基づきます。

海外のベンダーからソフトウェアのライセンスを受けたり、海外の開発会社にプログラムの開発を任せたりする取引は、今では中堅・中小企業でも珍しくありません。ところが、支払のたびに「源泉徴収は必要か」「何%か」「消費税はかかるのか」と迷う経理担当者は多く、請求書の金額をそのまま送金してしまい、後から税務調査で源泉徴収漏れを指摘される例もあります。

結論からいえば、海外へのソフトウェア関連の支払は「著作権の使用料・譲渡対価なのか、役務提供の対価なのか」を最初に見極め、そのうえで租税条約と消費税の内外判定を順に確かめることが基本です。使用料や譲渡対価で国内業務に係るものは、原則として支払時に20.42%の源泉徴収が必要です。ただし、条約によって税率が下がったり免除されたりします。海外で行われた開発作業の対価は原則として源泉徴収の対象外ですが、インドのように例外がある国もあります。本記事では、日本に恒久的施設(支店などの事業の拠点。以下PE)を持たない外国法人へ支払う場面を前提に、架空の数値例で順に整理します。

前提:恒久的施設のない外国法人への支払

外国法人が日本で得た所得のうち、法律で定める「国内源泉所得」には日本の課税が及びます。PEのない外国法人は日本で申告をしないため、支払う側の日本の会社(内国法人)が支払のときに所得税を差し引いて納める仕組みになっています。これが源泉徴収で、支払者は「源泉徴収義務者」と呼ばれます。差し引くのを忘れると、支払者が自分で不足分と附帯税を負担することになりかねません。

ソフトウェアに関する支払は、大きく3つに分けて考えます。1つ目はライセンス料など「著作権の使用料」、2つ目は成果物の権利そのものを買い取る「著作権の譲渡対価」、3つ目は開発作業などの「役務提供の対価」です。プログラムは著作権法で著作物として扱われるため、ソフトウェアの対価は著作権の使用料や譲渡対価に当たる可能性があります。

海外へのソフトウェア関連支払の全体像内国法人(支払者)源泉徴収義務者外国法人日本に恒久的施設なし支払の中身で3つに分ける著作権の使用料(ライセンスなど)著作権の譲渡対価(権利そのものの移転)役務提供の対価(開発作業など)税目ごとに判定:所得税の源泉徴収/租税条約/消費税の内外判定対価の支払

図1 支払の中身を3つに分け、所得税・租税条約・消費税をそれぞれ判定する

使用料と譲渡対価は、所得税法では同じ号に並んで規定されており、国内で業務を行う者から受け取るもので、その国内業務に係るものが国内源泉所得になります。この場合の源泉徴収税率は20%で、2037年12月31日までは復興特別所得税が加わるため20.42%です。判定は次の順序で進めると迷いにくくなります。

使用料・譲渡対価の源泉徴収の判定フロー著作権の使用料・譲渡対価に当たるか使用料等ではない→役務の判定へ国内業務に係るものか(使用地で判定)国外使用分は源泉不要租税条約を使うか(届出書を出したか)20.42%で源泉徴収条約の限度税率で源泉徴収(免税なら徴収しない)いいえはいいいえはいいいえはい

図2 著作権の使用料か、国内業務に係るか、条約が使えるかの順に確かめる

このフローの最初の分岐、つまり「そもそも著作権の使用料や譲渡対価に当たるのか」が実務で最も悩ましい部分です。次の章で詳しく見ていきます。なお、ソフトウェアに関する国内の税務全般はソフトウェアの税務|取得価額・研究開発費・修繕費・償却・開発受託で整理しています。

自社に当てはめるとどうなるか、個別にお答えします

会計アドバイザリー:会計方針の検討、監査対応、決算・開示の支援。初回のご相談は無料、オンラインにも対応しています。
会計アドバイザリーの内容を見る / 相談内容を送る

著作権の使用料・譲渡対価:法定利用行為があるか

著作権法は、著作権者が独占できる行為として、複製、公衆送信、翻案(改変して新しい著作物を作ること)などを定めています。これらを「法定利用行為」と呼びます。税務上の「著作権の使用料」は、こうした法定利用行為を行うことや、その許諾を受けることへの対価と理解されています。裏返すと、法定利用行為を伴わない取引の対価であれば、使用料には当たらず源泉徴収は不要と考えられます。

ただし、所得税法はソフトウェア取引の類型ごとに答えを用意しているわけではありません。契約で何が許されているのかを著作権法の観点で読み解く必要があり、取引が複雑な場合は著作権に詳しい専門家の意見も聞きながら、法務と税務の両面で検討することが求められます。

法定利用行為の有無で使用料かどうかが分かれる使用料に当たりうる(許諾が必要)使用料に当たらない取引の例複製して社内に配布・製品に組み込むネットワーク経由で不特定の人に送信改変・翻案して別の製品を作る買った複製物を自分のPCで使う提供者のサーバーで処理を受けるだけ保守・問い合わせ対応を受ける契約の名称ではなく、実際に何を許されているかで判断する

図3 複製・送信・改変などの許諾を受ける対価が使用料で、単に使うだけなら当たらないのが基本

もう1つの要件が「国内業務に係るもの」かどうかです。国内法は、ソフトウェアを実際に使う場所で源泉地を決める考え方(使用地主義)をとっています。たとえば日本の会社がライセンスを受け、それを国外で業務を行う別の会社(再実施権者)に再許諾している場合、国外の再実施権者が使う部分の使用料は国内源泉所得になりません。

これに対して、多くの租税条約は支払者の居住地で源泉地を決める考え方(債務者主義)を採用しています。条約は国内法に優先して適用されるため、条約が適用される場面では源泉地の判定もやり直す必要があります。

国内法と租税条約で源泉地の決め方が違う項目使用地主義(国内法)債務者主義(多くの条約)源泉地の決め方ソフトを使う場所で決める支払者の居住地で決める国外の再実施権者分国内源泉所得にならない支払者が日本なら日本源泉税率20.42%条約の限度税率(0〜10%など)確認する資料所得税法・基本通達条約本文と届出書

図4 国内法は使用する場所、多くの条約は支払者の居住地で源泉地を決める

架空のR社の例で計算してみます。R社は海外のA社にライセンス料1,000万円を支払い、そのうち400万円相当は、R社が国外で業務を行う関係会社に再許諾して使わせている部分だとします。国内法だけで考えると、源泉徴収の対象は国内で使う600万円で、源泉税額は600万円×20.42%=122万5,200円です。

国外の再実施権者が使う部分の計算例(国内法)R社が払う使用料1,000万円うち国外の再実施権者使用分400万円を除く源泉対象600万円×20.42%=122万5,200円国内法では、国外で業務を行う再実施権者の使用分は国内源泉所得に当たらない(使用地主義)。条約が債務者主義なら支払額全体が日本源泉となり、限度税率で判定する金額はすべて架空の例

図5 国外の再実施権者が使う部分を除いた額に20.42%を掛ける。条約を使う場合は条約の源泉ルールで判定し直す

配分の根拠は、再許諾契約や使用実績(ユーザー数、売上など)で説明できるようにしておきます。根拠がないまま一部を対象外にすると、調査で全額を対象とされるおそれがあります。

購入・ダウンロード・SaaS別の源泉徴収の要否

同じソフトウェアでも、どのように手に入れて使うかで判断が変わります。CDなどの媒体に入ったパッケージソフトを買う場合、著作権法は購入者が自分のコンピュータで使うために必要な範囲で複製することを認めています。自己使用のためのインストールは著作者の許諾を必要としないので、購入代金は使用料に当たらず、源泉徴収は不要と考えられます。

ダウンロード購入では、ダウンロードによる複製が著作者の許諾を必要とする複製と扱われるなら、対価は使用料に当たり源泉徴収が必要になります。SaaSのように、提供者のサーバーにアクセスして処理を受けるだけでダウンロードもしない場合は、著作権の使用がないものとして源泉徴収が不要となる場合があります。一方、SaaSでも複製権や公衆送信権の利用を許されているなら、使用料に当たります。

入手・利用の方法別にみた源泉徴収の考え方取引形態媒体(CDなど)の購入ダウンロード購入SaaSで利用手元での複製自己使用の範囲なら許諾なしで可能許諾が要る複製なら使用料に当たる複製しないのが通常国内法の源泉不要必要となる場合があるアクセスだけなら不要の場合あり条約の解釈―事業所得とされ不要となる余地―

図6 自己使用のための複製かどうか、サーバーにアクセスするだけかが分かれ目になる

ダウンロード購入の場合でも、租税条約が適用される場面では別の見方があります。経済協力開発機構(OECD)のモデル租税条約には解釈を示したコメンタリーがあり、ユーザーがプログラムを動かすためにハードディスクなどへ複製することはソフトウェアを使うための必須の手順であり、取引の性質を決める際には無視すべきだとしています。入手方法が媒体かダウンロードかも関係しないとされ、自社の事業で使うだけの複製なら、対価は使用料ではなく事業所得として扱われるという考え方です。

OECDコメンタリーが示すソフト対価の考え方プログラムを動かすための複製・インストール取引の性質を決める際には考慮しない対価は事業所得(使用料条項ではない)PEのない外国法人なら日本で課税されない余地媒体かダウンロードかという入手方法は判断に関係しないとされる

図7 使うための複製は取引の性質を決める際に考えず、事業所得とみる考え方が示されている

このコメンタリーの解釈は、OECDモデルにならった条約を解釈する際の補足的な手段として参照されるべきだと考えられています。そのため、条約上は使用料条項ではなく事業所得条項に当たり、相手がPEのない外国法人であれば日本で課税されず、源泉徴収が不要となる余地があります。ただし、取引ごとの事実関係で結論が変わるので、契約内容を確かめずに一律で不要と決めつけないことが大切です。

支払の種類 国内法の源泉 条約の適用 消費税
媒体ソフトの購入代金 原則不要 ― 輸入の取扱いを確認
ダウンロード購入の対価 許諾が要る複製なら必要 事業所得とされる余地 電気通信利用役務の判定
SaaS利用料 アクセスのみなら不要の場合 ― 電気通信利用役務の判定
複製・改変を許すライセンス料 国内業務分は必要 限度税率・免税を確認 不課税(外国法人の貸付け)
海外での開発作業の対価 原則不要 インドなどは例外 不課税(国外の役務)

読みながら、自社の場合はどうなるかが気になっていませんか

いまの状況と、判断に迷っている点をお送りいただければ、公認会計士がどこから手をつけるべきかを整理してお返しします。営業のご連絡を重ねて差し上げることはありません。

初回のご相談は無料です。お問い合わせはこちら / 会計アドバイザリーを見る

租税条約で税率が変わる:債務者主義とOECDコメンタリー

国内法で源泉徴収が必要な支払でも、相手国との租税条約によって税率が軽減されたり免除されたりします。条約で使用料の限度税率や譲渡対価の扱いは国ごとに異なります。たとえば日米租税条約では、PEのない米国法人が受け取る使用料は日本で免税です。著作権の譲渡対価も譲渡収益として扱われ、日本では免税と考えられます。一方、日本とシンガポールの条約では著作権の譲渡対価も使用料と同じに扱われ、10%を上限に日本で課税されます。

租税条約での著作権の対価の扱い(主な例)相手国使用料の限度税率著作権の譲渡対価留意点米国免税免税(譲渡収益)特典条項の付表などシンガポール10%使用料と同じく10%譲渡も源泉対象インド10%国ごとの規定を確認技術役務も10%その他の国国ごとに異なる国ごとに異なる条約と修正を確認

図8 2026年10月時点の主な例。適用時は条約本文とBEPS防止措置実施条約による修正を必ず確認する

条約は改正されることがあり、BEPS防止措置実施条約(税源浸食と利益移転を防ぐための多国間条約)によって既存の条約の一部が修正されている場合もあります。実際に適用する際は、相手国との条約本文に加えて、財務省が公表している適用状況の資料で修正の有無を確かめてください。

条約の特典を受けるには、外国法人が「租税条約に関する届出書」を作り、支払者を経由して税務署に出す必要があります。米国のように特典を受けられる者を限定する条項(特典条項)がある条約では、付表と居住者証明書も添えます。

租税条約に関する届出書の提出の流れ外国法人が届出書を作成支払者(内国法人)を経由して提出支払日の前日までに所轄税務署へ条約の税率で源泉徴収期限に間に合わなければ国内法の20.42%で徴収し、外国法人が後から還付を請求する米国など特典条項のある条約は、付表と居住者証明書も必要

図9 届出書は支払者を経由して、支払日の前日までに税務署へ出す

届出書が支払日の前日までに出ていなければ、支払者はいったん国内法の税率で源泉徴収し、外国法人が後から還付を請求することになります。なお、条約の限度税率を適用する場合は復興特別所得税は上乗せされません。手続の有無で税額がどう変わるかを、架空の金額で比べてみます。

計算例:支払先と手続で源泉税額はこう変わる062.5125187.5250米国・届出なし米国・届出ありシンガポール譲渡インド技術役務204.2万円0円50万円80万円源泉税額(万円)

図10 米国法人1,000万円の使用料、シンガポール法人500万円の著作権譲渡、インド法人800万円の技術役務(架空)

米国法人への1,000万円の使用料は、届出書がなければ204.2万円を差し引くことになりますが、届出書があれば0円です。差し引いた後の送金額が契約で決まっている場合(手取り保証)は、税額を上乗せした額が源泉の対象になるので、さらに負担が増えます。契約前に、源泉税をどちらが負担するかを書面で決めておきましょう。

海外への開発委託:役務提供か著作権の譲渡か

海外の会社にソフトウェアの開発を委託する場合、委託料の中には「開発作業という役務の対価」と「完成したプログラムの著作権の譲渡対価」の2つが含まれることがあります。役務提供の対価は、国内で行う一定の役務(専門的な知識や技能を使うものなど)なら国内源泉所得ですが、作業が日本国外で行われるなら国内源泉所得になりません。条約が適用される場合も、役務の対価は通常は事業所得となり、PEがなければ日本では課税されません。

これに対して、著作権の譲渡対価は、条約で日本の課税が免除されていない限り源泉徴収が必要です。同じ委託料でも、どちらに区分するかで結論が大きく変わります。

開発委託料は役務分と著作権分に分けて考える開発委託料(総額)役務提供の対価海外で作業→国内源泉所得でない著作権の譲渡対価条約で免税でなければ源泉例:シンガポール法人への委託料1,000万円のうち著作権分200万円→200万円×10%=20万円を源泉徴収(役務分800万円は対象外)

図11 海外での作業の対価と、成果物の著作権の対価とでは源泉徴収の扱いが大きく違う

例外として注意したいのがインドです。日印租税条約では、経営的・技術的な役務やコンサルタントの役務に対する料金について、作業した場所ではなく支払者の所在地で源泉地を決めます。所得税法は条約に異なる定めがあれば条約に従うとしているため、日本法人がインド法人に技術上の役務の対価を払う場合は、作業がすべてインドで行われていても、10%の源泉徴収が必要です。

インド法人への技術役務の対価は特例に注意日本法人(支払者)インド法人(日本にPEなし)一般的な条約役務の対価は事業所得PEがなければ日本で課税なし日印租税条約支払者の所在地で源泉地を判定作業がインドでも10%を源泉⇔例:800万円×10%=80万円を支払時に源泉徴収(届出書の提出が前提)技術上の役務の対価

図12 日印租税条約では、作業場所ではなく支払者の所在地で源泉地を決める

役務の対価と著作権の譲渡対価をどう分けるかについて、税法に明確な基準はありません。契約書の名目だけで判断するのではなく、契約の目的や内容から当事者の意思を合理的に読み取ることになります。過去の裁決では、契約書に「請負の対価」と書かれていても、契約の実質が外国法人の原著作物をもとにした新しいソフトの権利の移転だとして、著作権の対価と判断された例があります。逆に、単に別の動作環境に移すだけの作業には創作性がないとしつつ、作業中に独自の工夫が加わる可能性を考えて一部を著作権の対価とした区分が認められた例もあります。

前提として、著作権がそもそも誰に生じるかを確かめる必要があります。著作者になるのは創作的な表現に実際に関わった人で、指示を出しただけの人や資金・情報を出しただけの依頼者は著作者になりません。受託者が著作者なら、委託者へは「譲渡」で権利が移ることになり、その対価部分を区分して扱います。

著作権は誰に生じるか:著作者の考え方創作的な表現に実際に関わったのは誰か著作者になる・プログラムを書いた人・独自の工夫を加えた人著作者にならない・指示や動機を与えただけ・資金・情報の提供や依頼のみ受託者が著作者なら、委託者へ移るのは「譲渡」→譲渡対価の部分を区分する

図13 指示や資金を出しただけでは著作者にならない。受託者が著作者なら委託者へは譲渡で移る

なお、開発費の会計処理や研究開発税制との関係はソフトウェア開発と研究開発税制|試験研究費の範囲と税額控除の計算、ゲームのライセンス料やロイヤルティはゲームのライセンス料・MG・製作委員会の会計処理|ロイヤルティと出資金の扱いもあわせて参照してください。

消費税:役務提供の場所と電気通信利用役務の提供

消費税は、国内で行われた取引かどうか(内外判定)を取引の種類ごとに異なる基準で判定します。著作権の譲渡や貸付け(ライセンス)は、行う者の住所地で判定するため、外国法人からライセンスを受ける取引は不課税です。役務の提供は、役務が行われた場所で判定するため、海外で行われた開発作業も不課税です。

消費税の内外判定は取引の種類で基準が変わる取引判定の基準外国法人から受ける例結果著作権の貸付け・譲渡行う者の住所地海外ベンダーのライセンス不課税役務の提供役務を行う場所海外での開発作業不課税電気通信利用役務受ける者の住所等クラウド・配信サービス国内取引(課税)

図14 外国法人からのライセンスや海外での開発作業は不課税、電気通信利用役務は受け手の住所等で判定する

これに対して、インターネットなどを通じて提供される役務(電気通信利用役務の提供)は、役務を受ける者の住所や本店所在地で判定します。クラウドサービスやソフトウェアの配信は、海外の会社から受けても国内取引になります。ただし、開発した成果物をネットで送るだけの場合など、他の取引に付随してネットを使っているだけのものは電気通信利用役務に当たりません。

区分 具体例
電気通信利用役務に当たる クラウド上のソフトやデータベースを使わせるサービス、アプリや電子書籍の配信、ネット広告の配信、オンラインの英会話レッスン
電気通信利用役務に当たらない 海外で開発したプログラムを完成後にネットで納品する取引、著作権の譲渡や貸付けで著作物の受け渡しにネットを使うだけの取引

電気通信利用役務は、さらに「事業者向け」と「消費者向け」に分かれます。性質や取引条件から受け手が通常事業者に限られるものが事業者向けで、この場合は役務を受けた国内事業者が納税する「リバースチャージ方式」となります。Webサイトで誰でも申し込めるサービスは、事業者向けと書いてあっても消費者向けとされます。消費者向けは国外事業者が日本で申告・納税するのが原則ですが、2025年4月からは、国税庁長官が指定したプラットフォーム事業者を通じたアプリ配信などについて、プラットフォーム事業者が納税する仕組み(プラットフォーム課税)が始まっています。

事業者向けか消費者向けかの区分電気通信利用役務に当たるか(他の取引に付随するだけでないか)通常の内外判定性質や取引条件から、受け手が通常事業者に限られるか消費者向け国外事業者が納税事業者向け:受け手の国内事業者がリバースチャージで申告2025年4月以降、指定されたプラットフォーム経由の消費者向けはプラットフォーム事業者が納税いいえはいいいえはい

図15 受け手が通常事業者に限られるものはリバースチャージ、それ以外は国外事業者側が納税する

リバースチャージでは、支払額を課税標準として納める税額を計算し、同じ支払を課税仕入れとして控除します。ただし、一般課税で課税売上割合が95%以上の課税期間と、簡易課税を適用する課税期間は、当分の間、事業者向けの取引はなかったものとされ、申告も控除も行いません。

リバースチャージの申告イメージ海外クラウド利用料300万円(事業者向け)納める税額の側300万円×10%=30万円仕入税額控除の側30万円(全額控除の例)課税期間の状況リバースチャージの申告仕入税額控除一般課税・課税売上割合95%未満必要できる一般課税・課税売上割合95%以上不要(なかったものとみなす)しない簡易課税不要しない差引の納税額は、控除できる割合が100%なら0円になる

図16 海外クラウド利用料300万円(事業者向け、架空)の場合。課税売上割合95%以上や簡易課税の期間は申告不要

消費者向けの電気通信利用役務を国外事業者から受けた場合、仕入税額控除には、その国外事業者が交付する適格請求書(インボイス)の保存が必要です。登録のない事業者からの仕入れについて一定割合を控除できる経過措置がありますが、消費者向け電気通信利用役務で国外事業者から受けるものは対象外です。経過措置の割合は2026年10月から70%に下がっていますが、この取引には使えない点に注意してください。

海外への支払前に確かめる手順支払の中身を分解する著作権・許諾の範囲を確認作業場所と著作者を確認条約と届出書の有無を確認消費税の内外判定ライセンス保守・開発を分ける複製・改変再許諾の可否作業する国成果物の権利の帰属限度税率特典条項提出期限事業者向けか課税売上割合簡易課税か1つの契約に複数の要素があれば、要素ごとに判定する

図17 支払の中身を分け、権利・作業場所・条約・消費税の順に確かめる

税務調査では、海外への送金記録から源泉徴収の有無が確認されることがよくあります。調査の全体像は税務調査 完全ガイド|連絡が来てから終わるまでの全手順をご覧ください。

  • 海外への支払を「使用料・譲渡対価・役務の対価」に分けて一覧にしている
  • ライセンス契約で複製・改変・再許諾が許されているかを確認している
  • SaaSやダウンロード購入について、源泉の要否の判断根拠を残している
  • 相手国の条約とBEPS防止措置実施条約による修正を確認している
  • 租税条約に関する届出書を支払日の前日までに提出している
  • クラウド利用料が事業者向けか消費者向けか、リバースチャージの要否を判定している

よくある質問

Q1. 海外のSaaSの利用料は、すべて源泉徴収が不要ですか。

すべてではありません。サーバーにアクセスして処理を受けるだけなら著作権の使用がなく不要となる場合がありますが、契約で複製や社外への送信、改変などが許されている場合は使用料に当たる可能性があります。契約の許諾条項を確認してください。

Q2. 届出書を出し忘れて20.42%で源泉徴収してしまいました。

外国法人が還付請求の手続をすれば、条約の税率との差額の還付を受けられます。支払者はその手続に協力する立場になります。次回以降の支払に備えて、支払日の前日までに届出書が出ているかを支払手続のチェック項目に入れておきましょう。

Q3. 海外の開発会社への委託料に消費税はかかりますか。

開発作業が国外で行われる役務の提供であれば不課税です。成果物をネットで納品するだけなら電気通信利用役務にも当たりません。ただし、委託先が日本国内で作業する部分がある場合は、その部分は国内の役務として扱われます。

最初の一歩は、海外送金の一覧づくりです

過去1年分の海外への送金を一覧にし、支払先の国、契約の名称、支払の中身(ライセンス・保守・開発・SaaS)、源泉徴収の有無、届出書の有無を書き込んでみてください。判断の根拠が書けない行が、優先して確かめるべき取引です。

まとめ

海外とのソフトウェア取引の税務は、支払の中身を「使用料・譲渡対価」と「役務の対価」に分けるところから始まります。使用料かどうかは、複製や送信などの法定利用行為の許諾を受けているかで判断し、国内法の使用地主義と条約の債務者主義の違いにも注意します。条約による軽減・免除には届出書が必要で、インドの技術役務のような例外もあります。消費税は、ライセンスや海外での開発作業は不課税、クラウドなどの電気通信利用役務は受け手の住所等で判定し、事業者向けならリバースチャージを検討します。契約の段階で税負担と書類を整えておくことが、後の修正を防ぐ近道です。関連する論点としてNFT取引の税務と内部統制|所得区分・源泉・消費税と仕組みの信頼性も参考にしてください。

ソフトウェアの会計処理・税務のご相談

資産計上の判断、収益認識、研究開発税制、上場準備でのソフトウェア会計の整理まで、公認会計士・税理士が個別にご相談をお受けします(全国対応・オンライン完結)。

相談内容を送る料金・支援内容を見る

公認会計士・税理士 鈴木佑也

この記事を書いた人鈴木 佑也(公認会計士・税理士)

公認会計士としての実務歴は13年以上、独立後は20社を超える支援に関与しています。労働者派遣事業と有料職業紹介事業の許可申請にかかる監査証明と合意された手続業務に対応しています。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンスと企業価値評価に携わりました。プロフィールを見る

本記事の根拠

免責:本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別案件に対する法務、会計、税務その他の専門的助言を構成するものではありません。実際の対応は、最新の法令・取引所規則・公表資料を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

IPO支援に強い、公認会計士 IPO支援に強い、公認会計士

ベンチャー・スタートアップ企業の
経営管理支援・IPO支援

お問い合わせ

書くより話すほうが早いときは、お電話でも承ります TEL 03-6820-0406