使用人兼務役員の範囲は?賞与を損金にできる役員の条件

役員に賞与を出すと、原則として損金にはなりません。ところが「使用人兼務役員」に当たる役員であれば、使用人としての職務に対する賞与を、ほかの従業員と同じように支給して損金にできます。

そのため、専務や常務にも使用人分の賞与を出せないかという相談は少なくありません。しかし条文をたどると、なれる役員はかなり限られており、しかも肩書だけでは決まりません。

この記事では、使用人兼務役員の定義と、そこから外される役員の範囲を条文と通達で確認し、使用人分の賞与を損金にするための条件を整理します。

この記事は役員給与の税務 完全ガイドの第8回です。

🧭 使用人兼務役員とは何か

法人税法は、役員に支給する給与のうち定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものを損金不算入としています(法人税法第34条第1項)。ただし、その柱書は対象となる給与から一定のものを除いており、そのなかに「使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの」が含まれています。

この「使用人としての職務を有する役員」が、いわゆる使用人兼務役員です。定義は同条第6項に置かれています。

第一項に規定する使用人としての職務を有する役員とは、役員(社長、理事長その他政令で定めるものを除く。)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものをいう。(法人税法第34条第6項)

ここから読み取れる条件は3つです。第1に、社長・理事長その他政令で定める役員でないこと。第2に、部長や課長といった使用人としての職制上の地位を有すること。第3に、常時使用人としての職務に従事していること。「かつ」でつながれているので、第2と第3は両方を満たす必要があります。

使用人兼務役員に当たると、その使用人としての職務に対する給与や賞与は、第1項の3類型の制約を受けません。ほかの従業員と同じ時期に賞与を支給して損金にできる、という点がもっとも大きな効果です。

ただし、制約から完全に外れるわけではありません。使用人分の給与も、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されません(法人税法第34条第2項)。また、賞与の支給時期を誤ると、それだけで損金不算入の対象になります。詳しくは後述します。

使用人兼務役員に当たるかどうかの順序 1 社長・理事長や政令で定める役員に当たらないか 2 使用人としての職制上の地位を有しているか 3 常時その使用人の職務に従事しているか 3つすべてを満たすと使用人兼務役員 使用人分の給与と賞与を別枠で考えられる 1つでも 欠ければ 該当しない

図1 肩書だけでは決まらず、地位と職務の実態の両方が問われます。

🚫 使用人兼務役員になれない役員

第34条第6項の括弧書きにある「政令で定めるもの」は、法人税法施行令第71条第1項に列挙されています。

法第三十四条第六項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める役員は、次に掲げる役員とする。一 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人 二 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員 三 合名会社、合資会社及び合同会社の業務を執行する社員 四 取締役(指名委員会等設置会社の取締役及び監査等委員である取締役に限る。)、会計参与及び監査役並びに監事 五 前各号に掲げるもののほか、同族会社の役員のうち次に掲げる要件の全てを満たしている者(法人税法施行令第71条第1項)

区分 該当する役員 実務上の注意
第1号 代表取締役、代表執行役、代表理事、清算人 取締役会設置会社以外の株式会社で、定款、定款の定めに基づく取締役の互選または株主総会の決議によって代表取締役を定めたことにより代表権を有しないこととされた取締役は、第1号には該当しない(法人税基本通達9-2-3)
第2号 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員 ここでいう職制上の地位とは、定款等の規定または総会もしくは取締役会の決議等によりその地位が付与された役員をいう(同9-2-4)
第3号 合名会社、合資会社、合同会社の業務執行社員 持分会社では業務執行社員が該当する
第4号 指名委員会等設置会社の取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、監事 監査役は業務執行から切り離された立場なので、使用人としての職務を前提にできない
第5号 同族会社の役員で、株式の所有割合の3要件をすべて満たす者 次項で詳しく見る

実務では第2号の扱いをめぐって誤解が生じがちです。名刺に専務と書いてあるからといって、ただちに使用人兼務役員から外れるわけではありません。国税不服審判所の公表裁決要旨には、専務取締役の名称を付した名刺を使って営業活動を行っていた取締役について、取締役会等により専務取締役に選任された事実がなく、確定決算書や各種議事録にも専務取締役の名称を付したものがないことなどから、名刺の使用だけをもって法人税法上の専務取締役とみなすのは適当ではなく、使用人兼務役員と認めるのが相当であるとした事例が掲載されています(昭和56年1月29日裁決)。

逆に言えば、決議や規程で地位を与えていれば、第2号に当たります。

👨‍👩‍👧 同族会社の役員が外れる3つの要件

第5号は、同族会社の役員のうち、株式の所有割合について次の3つの要件をすべて満たす者を使用人兼務役員から除いています。「すべてを満たしている者」と書かれているため、1つでも満たさなければこの号には当たりません。

要件 内容
イ 株主グループの順位 株主グループを所有割合の大きい順に並べたとき、第1順位のグループの所有割合が50%を超える場合のそのグループ、第1順位と第2順位を合計してはじめて50%を超える場合のこれらのグループ、第1順位から第3順位までを合計してはじめて50%を超える場合のこれらのグループ、のいずれかにその役員が属していること
ロ 属するグループの割合 その役員の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること
ハ 本人などの割合 その役員本人(配偶者、およびこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含む)の所有割合が5%を超えていること

同順位の株主グループがある場合の数え方には、通達に例示があります。A株主グループとB株主グループの所有割合がそれぞれ20%、C株主グループとD株主グループの所有割合がそれぞれ15%の場合には、AとBが第1順位の株主グループに該当してその所有割合は40%となり、CとDが第2順位の株主グループに該当してその所有割合は30%となる、というものです(法人税基本通達9-2-8)。この例では、第1順位の40%だけでは50%を超えず、第2順位を加えた70%ではじめて50%を超えるため、AからDまでのいずれかに属する役員はイの要件を満たすことになります。

また、自らは株式を持っていない役員でも、同族関係者が株式を持っている場合には第5号の判定対象に含まれる点に注意が必要です(同9-2-7)。本人の持株がゼロでも安心はできません。

同族会社の役員が使用人兼務役員から外れる3要件 イ 上位3順位までの株主グループで50パーセント超になる範囲に属している 第1順位だけ、第1と第2、第1から第3までのいずれかで初めて50パーセントを超える範囲 ロ その役員が属する株主グループの所有割合が10パーセント超 ハ その役員本人などの所有割合が5パーセント超 イ・ロ・ハのすべてを満たすと使用人兼務役員になれない 1つでも満たさなければ、この号では除かれない

図2 3つの要件は「すべて満たす」ことが条件です。1つ欠ければこの号には当たりません。

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🏢 使用人としての職制上の地位とは

第34条第6項は「部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位」と書いています。この意味は通達で具体化されています。

法第34条第6項《使用人兼務役員》に規定する「その他法人の使用人としての職制上の地位」とは、支店長、工場長、営業所長、支配人、主任等法人の機構上定められている使用人たる職務上の地位をいう。したがって、取締役等で総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位でなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは、使用人兼務役員には該当しない。(法人税基本通達9-2-5)

「担当」と「長」の違いがここに現れます。取締役経理担当という肩書は、部門を統括する役員としての立場であって、使用人としての職制上の地位ではありません。一方、取締役営業部長のように、機構上定められた使用人たる地位を兼ねていれば、この要件の面では該当しうることになります。

もっとも、小さな会社では、そもそも部や課といった機構を定めていないことがあります。この場合の取扱いも用意されています。事業内容が単純で使用人が少数である等の事情により、法人がその使用人について特に機構としてその職務上の地位を定めていない場合には、法第34条第6項の括弧書きに定める役員を除く役員で、常時従事している職務が他の使用人の職務の内容と同質であると認められるものについては、9-2-5にかかわらず使用人兼務役員として取り扱うことができるとされています(同9-2-6)。

この特例が使えるかどうかは、組織図の有無ではなく、その役員が日々行っている仕事の中身が他の従業員と同質かどうかで決まります。判断の裏づけとして、職務分掌や勤務の記録を残しておくことが実務上の備えになります。

💴 使用人分の給与はいくらまでか

使用人兼務役員に当たるとしても、使用人分として支給する金額が青天井になるわけではありません。使用人分の給与も、役員に対して支給した給与の額に含めて過大かどうかを判定します(法人税基本通達9-2-21)。

そのうえで、使用人分の給与を役員給与の限度額等に含めていない法人については、相当な金額の考え方が示されています。

その使用人分の給与の額のうち当該使用人兼務役員が現に従事している使用人の職務とおおむね類似する職務に従事する使用人に対して支給した給与の額…に相当する金額は、原則として、これを使用人分の給与として相当な金額とする。(法人税基本通達9-2-23)

状況 相当な金額の考え方
類似する職務の使用人がいる場合 その使用人に支給した給与の額に相当する金額。ただし、その額が特別の事情により他の使用人に比べて著しく多額な場合は、その事情がないと仮定したときに通常支給される額による
比準すべき使用人として適当な者がいない場合 その役員が役員となる直前に受けていた給与の額、その後のベースアップ等の状況、使用人のうち最上位にある者に対して支給した給与の額等を参酌して、適正に見積もった金額によることができる

なお、株主総会等で役員給与の限度額を定めるとき、その限度額に使用人分の給与を含めないと定めているかどうかで扱いが変わります。含めない旨を定款または株主総会等で定めまたは決議している法人が、これに当たるとされています(同9-2-22)。定めがないまま使用人分を別枠で支給していると、限度額を超える部分として損金不算入になりかねません。

🎁 使用人分の賞与を損金にするための条件

ここが本題です。使用人兼務役員に該当し、金額も相当であっても、支給の時期を誤ると損金不算入になります。過大な役員給与の額を定めた施行令には、次の号が置かれています。

使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額(法人税法施行令第70条第3号)

つまり、他の使用人と同じ時期に支給していない使用人分賞与は、その額が過大な役員給与として損金の額に算入されません。金額の多寡ではなく、時期そのものが要件になっています。

さらに、経理処理だけを合わせても足りません。通達は次のように述べています。

法人が、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与を、他の使用人に対する賞与の支給時期に未払金として経理し、他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合には、当該賞与は…「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」に該当する(法人税基本通達9-2-26)

支給の仕方 取扱い
他の使用人と同じ日に、使用人分賞与として支給した 使用人分の給与として、相当な金額の範囲で損金の額に算入される
他の使用人の支給日に未払計上し、役員給与の支給日に支払った 異なる時期に支給したものに該当し、損金の額に算入されない
使用人兼務役員に該当しない役員に賞与を支給した 3類型のいずれにも当たらなければ、その額が損金不算入となる

なお、使用人であった者が役員となった場合や、使用人兼務役員であった者が施行令第71条第1項各号に掲げる役員となった場合に、その直後に支給した賞与のうち、使用人または使用人兼務役員であった期間に係る賞与の額として相当と認められる部分の金額は、使用人または使用人兼務役員に対して支給した賞与の額として認められます(同9-2-27)。昇格の直後は、この取扱いを確認しておくと整理がしやすくなります。

使用人分賞与が損金になるまでの3つの確認 確認1 身分 使用人兼務役員に 当たるか 法34条6項・令71条 確認2 時期 他の使用人と同じ 時期に支給したか 令70条3号 確認3 金額 使用人分として 相当な金額か 法34条2項・通達9-2-23 確認2でつまずく例が多い 同じ日に未払計上しても、実際の支払が役員給与の支給日なら異なる時期に当たる

図3 身分・時期・金額の3つを順に確認します。時期は経理処理ではなく実際の支給で判定されます。

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❓ よくある質問

専務や常務は使用人兼務役員になれますか

副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員は、施行令第71条第1項第2号により除かれます。ただし通達は、この職制上の地位を、定款等の規定または総会もしくは取締役会の決議等によりその地位が付与された役員としています。決議も規程もなく、通称として名乗っているだけであれば、第2号に当たらないと判断された裁決例もあります。

取締役経理担当という肩書は使用人兼務役員に当たりますか

通達は、総務担当、経理担当というように使用人としての職制上の地位ではなく、法人の特定の部門の職務を統括しているものは使用人兼務役員に該当しないとしています。担当という肩書は、原則として使用人としての職制上の地位には当たらないと考えるのが安全です。

部や課を置いていない小さな会社では使えませんか

事業内容が単純で使用人が少数である等の事情により機構としての職務上の地位を定めていない場合には、常時従事している職務が他の使用人の職務の内容と同質であると認められる役員について、使用人兼務役員として取り扱うことができるとされています。組織図がないこと自体が理由で否定されるわけではありません。

使用人分の賞与を他の従業員より少し遅らせて払うのは問題ですか

他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものは、その額が損金の額に算入されません。数日のずれをどこまで許容できるかは事実関係によりますが、あえて時期をずらす理由がないのであれば、同じ日に支給するのが確実です。

監査役に使用人分の給与を出せますか

監査役は施行令第71条第1項第4号により除かれているため、使用人兼務役員には当たりません。そもそも会社法は、監査役は株式会社もしくはその子会社の取締役もしくは支配人その他の使用人などを兼ねることができないと定めています(会社法第335条第2項)。使用人としての職務を兼ねさせるという前提自体が成り立ちません。

社長の配偶者が取締役営業部長です。使用人兼務役員になれますか

同族会社の役員については、施行令第71条第1項第5号の3要件をすべて満たすかどうかを確認します。本人が株式を持っていなくても、同族関係者が株式を持っている場合は判定の対象に含まれます。3要件をすべて満たす場合は、肩書にかかわらず使用人兼務役員には当たりません。

📄 まとめ

使用人兼務役員は、役員賞与を損金にする数少ない道の1つです。ただし、その入口は狭く、肩書ではなく、決議で与えられた地位と日々の職務の実態で決まります。代表取締役、副社長・専務・常務、監査役などは条文で外され、同族会社では株式の所有割合による3要件がさらにかかります。

該当すると判断できた場合でも、賞与を損金にするには、他の使用人と同じ時期に実際に支給することと、使用人分として相当な金額に収めることの2つが要ります。未払計上で時期を合わせたつもりでも、実際の支払が役員給与の支給日であれば、異なる時期に支給したものとして扱われます。

判定を誤ると、支給額の全額が損金不算入になり、加えて源泉徴収や社会保険の整理にも波及します。役員の肩書や職務分掌を見直すのであれば、支給日を決める前に、条文と通達へのあてはめを一度確認しておくことをおすすめします。

🔗 参考(公的な一次情報)

本記事は公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所・東京都台東区)が、法令・通達および国税庁の公表資料に基づいて作成しています。本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度は改正される可能性があり、個別の事実関係により結論が異なります。実際の判断にあたっては、専門家にご確認ください。

👤 監修者

公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。優成監査法人(現・太陽有限責任監査法人)で上場企業および上場準備企業の監査に従事し、太陽グラントソントン・アドバイザーズで財務デューデリジェンス、企業価値評価、IFRS影響度調査、不正調査、フォレンジックに携わりました。現在は上場申請書類(Ⅰの部・Ⅱの部)の作成支援、内部統制の導入と内部監査対応、新収益認識基準やIFRSの導入支援、社内諸規程の整備を行っています。

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