「期中に会計方針を変えることになった。半期報告書の比較情報はどこまで直せばよいのか」——四半期報告書が廃止されてからは、以前の手続をそのまま当てはめてよいのか迷う場面が増えています。
期中の開示は、年度決算と同じ考え方が及ぶ部分と、中間財務諸表に固有の取扱いが混在しています。公認会計士として上場会社の決算・監査対応に関わる立場から、現行制度を前提に整理します。
- 半期報告書・四半期決算短信という現行の期中開示の全体像
- 期中に会計方針を変更したときの遡及適用の範囲と比較情報の直し方
- 期中に誤謬が判明したときに、どこまで直すかの判定
- 注記する「影響額」がどの期間のものかの違い
📅 まず現行の開示制度を確認する
2023年11月に成立した「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)により四半期報告書制度は廃止され、2024年4月1日以後に開始する事業年度から、法定の期中開示は半期報告書(金融商品取引法24条の5第1項)に、第1・第3四半期は四半期決算短信に一本化されました。
半期報告書に含まれる中間財務諸表には、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」(2024年3月22日公表)が適用されます(基準4項)。その開示対象期間は、中間会計期間末の中間貸借対照表と前年度末の要約貸借対照表、両中間会計期間の中間損益計算書等と中間キャッシュ・フロー計算書です(基準8項)。この開示対象期間が、遡及適用や修正再表示で直す範囲の出発点になります。
図1 法定開示(半期報告書)と取引所規則(四半期決算短信)で位置づけが異なります。
なお、中間財務諸表は監査ではなく期中レビューの対象です(期中レビュー基準報告書第1号「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」)。監査より限定的な保証ですが、遡及処理や修正再表示を行った期に根拠資料と算定過程の説明を求められる点は年度決算と変わりません。
🧭 期中に会計方針を変更した場合の取扱い
中間会計期間に会計方針の変更を行う場合は、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」6項および7項に準じて、過去の期間に新たな会計方針を遡及適用します(基準13項・28項)。ただし、会計基準等の改正に伴う変更で特定の経過的な取扱いが定められているときは、それに従います(基準13項ただし書・28項ただし書)。原則的な取扱いが実務上不可能な場合は、同基準9項に準じます(基準14項・29項)。
実務上の要点は、遡及適用の対象が開示対象期間の比較情報であるという点です。当年度の期首に遡って新しい会計方針を適用したうえで、比較情報として並ぶ前中間会計期間の損益計算書等と前年度末の要約貸借対照表を作り直します(中間財規3条の2)。
表示方法の変更は、同基準14項に準じて組替えを行い、実務上不可能なときは実行可能な最も古い期間から新しい表示方法を適用します(基準24項・35項)。見積りの変更は、将来にわたって処理し内容と影響額を注記します(基準25項(5)・36項(4))。年度と同じ4類型の枠組みが、そのまま中間財務諸表にも準用されています。
📊 期中に過去の誤謬が判明した場合の取扱い
過去の財務諸表および中間財務諸表に誤謬が発見された場合は、企業会計基準第24号21項に準じて修正再表示を行います(基準21項・32項)。判断が分かれるのは、誤りの影響が年度の財務諸表にまで及ぶのか、同一年度内の期間帰属の誤りにとどまるのかです。後者であれば年度の財務諸表は正しく、中間財務諸表の比較情報だけを直すことになります。
図2 誤りの影響がどの期間に及ぶかで、直す対象と開示の重さが変わります。
修正再表示を行った場合の注記
修正再表示の注記は、中間財務諸表等規則5条の2の5(連結は中間連結財務諸表規則11条の7)に定められており、①誤謬の内容、②主な科目に対する前事業年度および前中間会計期間における影響額、③前事業年度または当中間会計期間に係る1株当たり情報への影響額、④前事業年度の期首における純資産額に対する累積的影響額を記載します(重要性の乏しいものは省略可)。
また、遡及適用または修正再表示を行った場合、開示対象期間の1株当たり中間純損益および潜在株式調整後1株当たり中間純利益は、遡及適用後または修正再表示後の金額により算定します(適用指針41項)。作り直しを忘れやすい論点です。
🧾 注記する「影響額」はどの期間のものか
注記で間違えやすいのが「影響額」として書くべき期間です。企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」は類型ごとに次のように定めており、会計方針の変更は前年度を、見積りの変更は当年度の中間会計期間を向いています。
| 類型 | 影響額の対象期間 |
|---|---|
| 会計方針の変更(原則的な遡及適用) | 前年度の中間会計期間の税金等調整前中間純損益等(適用指針31項) |
| 会計方針の変更(経過的な取扱い・遡及適用が実務上不可能な場合) | 前年度または当年度の中間会計期間(適用指針31項) |
| 見積りの変更/区分が困難な場合 | 当年度の中間会計期間(適用指針32項) |
| 過去の誤謬の修正再表示 | 前年度の中間会計期間(適用指針33項) |
表1 注記する影響額の対象期間。修正再表示については概算額による記載の定めがないため、影響額を確定させたうえで注記することになると考えられます。
もう一つ漏れやすいのが、前年度の中間会計期間の末日後に自発的に重要な会計方針の変更を行っており、比較情報として開示する前年度の中間財務諸表と、前年度に実際に開示した中間財務諸表とで会計方針が異なる場合の注記です(基準25項(4)・36項(3))。
修正再表示の要否判断から影響額の算定・注記案の作成・監査法人対応まで、公認会計士が伴走支援します。
💰 数値例:中間の比較情報だけを直すケース
3月決算のA社で、X3年3月期の中間会計期間(X2年4月〜9月)中に次の誤りが判明したとします。法定実効税率は30%と仮定した仮設例です。
前提:X2年3月期の中間会計期間(X1年4月〜9月)に売上計上した取引のうち、売上高60百万円・売上原価42百万円の検収は実際にはX1年10月であり、同年度の下期に帰属すべきものであった。年度単位(X2年3月期)では期ズレが解消しており、年度の財務諸表に影響はない。
| 項目 | 修正前(当初開示) | 修正額 | 修正後(比較情報) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,200百万円 | △60百万円 | 1,140百万円 |
| 売上原価 | 840百万円 | △42百万円 | 798百万円 |
| 税引前中間純利益 | 150百万円 | △18百万円 | 132百万円 |
| 法人税等(30%) | 45百万円 | △5.4百万円 | 39.6百万円 |
| 中間純利益 | 105百万円 | △12.6百万円 | 92.4百万円 |
| 1株当たり中間純利益 (発行済株式数100万株) |
105.0円 | △12.6円 | 92.4円 |
表2 前中間会計期間(X1年4月〜9月)の比較情報の修正イメージ。筆者が説明のために作成した仮設例です。
直す対象は前中間会計期間の比較情報だけです。前事業年度末の要約貸借対照表への影響はなく、前事業年度の期首の純資産額に対する累積的影響額もゼロになるため、中間財務諸表等規則5条の2の5が求める注記のうち前事業年度に係る影響額と累積的影響額は「影響なし」と整理できます。一方、1株当たり情報は修正再表示後の金額で算定し直します(適用指針41項)。
🏢 四半期決算短信での取扱いと訂正
上場会社は四半期累計期間(第2四半期累計期間を除く)に係る決算の内容が定まった場合、直ちに開示することが義務付けられ、その開示にあたっては施行規則で定める四半期財務諸表等の記載が義務付けられています(有価証券上場規程404条1項・2項)。記載すべき具体的な内容は取引所の記載要領と参考様式によるため、最新版で確認してください。
開示後に変更・訂正すべき事情が生じた場合は、「決算発表資料の訂正」として開示します(同規程416条1項・2項)。ただし、有価証券報告書・半期報告書との差異が生じた場合、投資者の投資判断上重要な変更・訂正である場合を除き、法定開示書類の提出後遅滞なく開示することで差し支えないとされています。東証は重要な例として、開示した指標値の概ね0.1%を超えるような変更・訂正などを挙げています(東証「上場会社向けナビゲーションシステム」FAQ 管理番号8259、2026年8月時点)。
この0.1%は決算短信の訂正のタイミングに関する目安であり、会計上の誤謬の重要性の判断基準ではありません。修正再表示の要否は、企業会計基準第24号に基づく重要性の判断で別に検討します。
⏰ 期中の変更を年度末にどう引き継ぐか
中間会計期間に会計方針を変更した場合、当年度の期首から新しい会計方針を適用しているため、年度末の財務諸表も同じ会計方針で作成します。中間での判断をそのまま引き継ぐ前提で準備を進めるのが安全です。
図3 中間で用いた算定方法と資料は、年度決算でそのまま使える形で残します。
監査法人で実際に問われる点
期中に遡及処理や修正再表示を行った場合、監査人からは次の点を問われることが多いと感じます。
- 誤りがいつ発生し、いつ発見されたのか(前年度の監査で把握されていた差異との関係)
- 影響額の根拠となる一次資料(契約書・検収記録など)が期間帰属を裏付けているか
- 同じ原因の誤りが他の取引にも及んでいないか、横展開して調べたか
🗒️ 期中対応の実務チェックリスト
誰が・いつまでに・何を
- 経理責任者:発見から数日以内に、影響が年度の財務諸表に及ぶかを一次判定し監査人へ共有する
- 決算担当:開示対象期間ごとに影響額の一覧表を作り、1株当たり情報を修正再表示後の金額で再計算する
- 開示担当:中間財務諸表等規則5条の2の5の4項目に沿って注記文案を作り、ドラフト段階で監査人に共有する
- 経理責任者:半期報告書の提出期限(中間会計期間終了後45日以内)から逆算して資料の提出日を決める
❓ よくある質問
年度の財務諸表そのものに誤りがない場合、年度の財務諸表を訂正する必要は生じないと考えられます。ただし、前年度の半期報告書(またはその当時の四半期報告書)に記載した中間財務諸表には誤りがあるため、その訂正報告書の要否は別に検討することになります。
会計基準等の改正に伴う変更で経過的な取扱いに従った場合や、遡及適用が実務上不可能な場合に、当年度の影響額を適時に正確に算定できないときは、資本連結をやり直さないなど適当な方法による概算額を記載できるとされています(適用指針31項)。見積りの変更や区分が困難な場合も同様です(適用指針32項)。修正再表示の影響額については概算額の定めが置かれていません(適用指針33項)。
🧭 まとめ
押さえるべきは、①直す範囲は開示対象期間の比較情報であること、②注記する影響額の対象期間が類型ごとに異なること、③1株当たり情報も作り直すこと、④四半期決算短信の訂正は別のルールで動くこと、の4点です。期中は年度決算より時間の制約が厳しいため、迷う論点が出た時点で早めに外部の目を入れておくことが結果的に近道になります。連載の各回は過年度修正 完全ガイドからご覧いただけます。次回は「誤謬の訂正と内部統制報告制度|『開示すべき重要な不備』の判断」を取り上げます。
監修者
公認会計士・税理士 鈴木佑也(鈴木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区)。上場会社監査・IPO支援の経験をもとに、過年度修正・決算訂正・監査法人対応の実務支援を行っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の会計処理の判断は、監査人・専門家にご確認ください。
期中に判明した誤りの影響額の算定、比較情報の修正範囲の整理、注記文案の作成、監査法人への説明資料の準備まで、公認会計士が実務に沿って支援します。
📚 参考
本文で引用した基準・法令等は次のとおりです。
- 企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」(4項・8項・13項・14項・21項・24項・25項ほか)
- 企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(31項・32項・33項・41項)
- 企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(6項・7項・9項・14項・21項)
- 中間財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(3条の2・5条・5条の2の5ほか)
- 金融商品取引法(24条の5:半期報告書)
- 東京証券取引所「四半期決算短信」(上場規程404条・416条、記載要領)
- 東京証券取引所 FAQ 管理番号8259(決算短信の訂正の取扱い)
- 期中レビュー基準報告書第1号「独立監査人が実施する中間財務諸表に対するレビュー」