原状回復の資産除去債務は使用権資産か建物附属設備か|新リース会計基準での切り分け

新リース会計基準(企業会計基準第34号)は、使用権資産の取得原価に「資産除去債務に対応する除去費用」を加算すると定めています。この一文を読んで、賃借オフィスや店舗の原状回復義務について「これまで建物附属設備に乗せてきた除去費用は、すべて使用権資産へ振り替えるのか」という疑問を持たれた経理担当の方は少なくないはずです。

結論から言えば、すべてが使用権資産に移るわけではありません。分岐点は「その除去義務が、どの有形固定資産に関連しているか」の一点です。本記事では、根拠条文をたどってこの切り分けを整理し、どちらに乗せるかで費用化のスピードがどう変わるか、見積りを改訂したときはどうなるか、そして税務・税効果までを通しで解説します。

⚖️ 論点|原状回復の資産除去債務は、どの資産に乗るのか

オフィスや店舗を賃借している会社の多くは、賃貸借契約で原状回復義務を負っています。この義務は資産除去債務に該当し、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」に従って負債を計上し、同額を資産に計上してきました。

これまでの実務では、この除去費用資産を建物附属設備(内装造作)の帳簿価額に加算するのが一般的でした。賃借した建物そのものは自社の資産ではないため、加算先として自然な対象が内装造作だったからです。

ところが新リース会計基準では、借手は原資産の使用権を資産として計上します。賃借建物についても使用権資産という有形固定資産が貸借対照表に現れるため、「除去費用の加算先は使用権資産ではないのか」という論点が生じます。

📄 根拠条文は4本|「関連する有形固定資産」が分岐点

この論点は、次の4つの規定を順にたどると整理できます。

資産除去債務会計基準 第7項|加算先は「関連する有形固定資産」

出発点はここです。第7項は「資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える」と定めています。この条文は2024年の改正でも変わっていません。加算先を「関連する有形固定資産」と定めているだけで、具体的な勘定科目を指定してはいないのです。

同 第23項|有形固定資産には使用権資産も含まれる

では「有形固定資産」に使用権資産は含まれるのか。結論の背景である第23項は、本会計基準でいう有形固定資産には財務諸表等規則において有形固定資産に区分される資産のほかそれに準じる有形の資産も含むとしたうえで、建設仮勘定や使用権資産のほか投資不動産なども含まれる旨を示しています。つまり使用権資産は、加算先の候補のひとつになります。

リース会計基準の適用指針 第28項|条件つきの規定である

最も直接的なのが企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第28項です。

借手は、資産除去債務を負債として計上する場合の関連する有形固定資産が使用権資産であるとき、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第7項に従って当該負債の計上額と同額を当該使用権資産の帳簿価額に加える。

注目すべきは「関連する有形固定資産が使用権資産であるとき」という条件が付いている点です。この規定は、すべての原状回復債務を使用権資産に加算せよと命じているのではありません。関連する有形固定資産が使用権資産である場合の処理を定めたものであり、関連する有形固定資産が別にあるなら、加算先はそちらになります。

リース会計基準 第33項|使用権資産の取得原価

企業会計基準第34号第33項は、リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上すると定めています。適用指針第18項も同じ内容です。

加算先の判定|「関連する有形固定資産」は何か その除去義務は、何を撤去・回復する義務か 契約書と工事内容から実態で判断する 自社の内装造作を撤去する義務 関連する有形固定資産=内装造作 (建物附属設備など) 造作の帳簿価額に加算 資産除去債務会計基準 第7項 償却は造作の耐用年数 造作に紐付かない原状回復義務 関連する有形固定資産=使用権資産 (原資産を契約上の状態に戻す部分) 使用権資産に加算 適用指針第33号 第28項 償却は借手のリース期間

加算先を決めるのは「関連する有形固定資産が何か」であり、リース取引かどうかではありません。

🏢 内装造作がある事業所リースの切り分け

以上をふまえると、内装造作を有するオフィス・店舗リースの原状回復債務は、次のように分けて考えることになります。

同じ「原状回復費用」でも中身は2つに分かれる ① 内装造作の撤去に対応する部分 パーテーション、造作壁、什器造作、 造作した電気・空調設備などの撤去 撤去の対象は自社が資産計上した造作 造作(建物附属設備)に加算 従来の実務がそのまま続く部分 既存計上分の使用権資産への 振替えは必須ではない ② 造作に紐付かない原状回復部分 賃借した躯体・床・壁・天井を 契約で求められた状態に戻す費用 対象は自社資産ではなく原資産そのもの 使用権資産に加算 新リース会計基準で新たに 加算先が明確になった部分 償却期間はリース期間

契約書の原状回復条項と、実際の工事見積りの内訳を突き合わせて区分します。

留保しておくべき点

適用指針第28項は「関連する有形固定資産が使用権資産であるとき」の処理を定めた規定であり、何が「関連する有形固定資産」に当たるかの判定基準を網羅的に示したものではありません。上記の切り分けは、資産除去債務会計基準第7項の文言と第23項の趣旨から導かれる読み方であって、条文が明示的に区分を定めているわけではない点にご留意ください。契約と工事の実態によって結論が変わり得るため、金額的に重要な拠点については監査人と早期に協議することをおすすめします。

📚 パブリックコメントの経緯|ASBJはこの論点を早い段階から意識していた

ここまでの読み方が条文の解釈として無理のないものかどうかは、基準ができるまでの審議の経緯をたどると確かめられます。

公開草案とコメント募集の概要

企業会計基準委員会(ASBJ)は2023年5月2日に、企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」を含む一連の公開草案を公表しました。資産除去債務については、同時に公開草案第76号「資産除去債務に関する会計基準(案)」(企業会計基準第18号の改正案)が公表されています。コメントの募集期限は2023年8月4日で、45通のコメントが寄せられ、その全文がASBJのウェブサイトで公開されています。

項目 内容
公表日 2023年5月2日
主な公開草案 第73号「リースに関する会計基準(案)」/第76号「資産除去債務に関する会計基準(案)」ほか
コメント期限 2023年8月4日
寄せられたコメント 45通(団体32、個人13)。全文がASBJのサイトで公開されている
対応の公表 2024年9月13日の基準公表にあわせて「主なコメントの概要とそれに対する対応」を公表

※寄せられたコメントには不動産協会、日本チェーンストア協会、日本百貨店協会など、店舗・オフィスを多数賃借する業種の団体も含まれています。原状回復義務は、これらの業種にとって金額的な重要性が高い論点です。

審議資料が示していた「2つの加算先」

公開草案よりも前の段階で、ASBJはすでにこの論点を検討していました。2022年5月31日の第480回企業会計基準委員会に提出された審議資料(1)-4「資産除去債務に関する会計基準及び資産除去債務に関する会計基準の適用指針の改正案」は、IFRS基準における取扱いについて、除去費用が使用権資産の取得原価を構成することもあれば、使用権資産の上に建設又は設置された有形固定資産の取得原価を構成することもあると説明しています(第10項)。

続く第11項では、現行の資産除去債務会計基準が「関連する有形固定資産の帳簿価額に加える」と定めていることから、たとえば土地の原状回復費用は、当該土地に建てた建物に関連する資産除去債務として当該建物の帳簿価額に加えることになるという例が示されています。

この土地と建物の例は、本記事で整理した切り分けとまったく同じ構造をしています。原状回復の対象が「借りているもの」であっても、除去費用が乗るのは、その上に自社が建てた・設置した資産のほうになり得る。賃借建物と内装造作の関係も、これと同じ関係です。つまり「使用権資産に加算する」という規定が新設されたからといって、自社の造作に紐付く除去費用まで使用権資産へ移すことが求められているわけではない、と読むことができます。

コメントへの対応の位置づけ

ASBJが公表する「主なコメントの概要とそれに対する対応」や委員会の審議資料は、基準の定めそのものではありません。基準・適用指針の本文と結論の背景が優先され、コメントへの対応は、条文がなぜそう書かれているかを理解する手がかりとして参照するものです。実務判断の根拠として用いる場合は、この位置づけの違いを踏まえたうえで、監査人と認識をそろえておくことをおすすめします。

💰 どちらに乗せるかで、費用化のスピードが変わる

この切り分けが実務上重要なのは、貸借対照表の表示区分が変わるからではありません。償却期間が変わり、損益計算書に落ちるスピードが変わるからです。

使用権資産の償却期間はリース期間

企業会計基準第34号第38項は、原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース以外のリースについて、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとすると定めています。所有権が移転すると認められるリースの場合は、第37項により経済的使用可能予測期間を耐用年数とし、残存価額は合理的な見積額とします。

造作の耐用年数は、契約と造作の実態で決まる

一方の内装造作は、造作の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に見積もった耐用年数によります。税務上の取扱いは後述しますが、賃借期間よりも長い期間で償却しているケースが多く見られます。

数値例|同じ除去費用でも年間費用は変わる

除去費用の割引後の金額を1,000千円と仮定し、造作の耐用年数を8年、リース期間を2年とした場合の年間償却費を比べます。金額は説明のための仮定値です。

加算先 償却期間 年間の償却費 損益への影響
内装造作(建物附属設備) 8年 125千円 長期に薄く配分される
使用権資産 2年(リース期間) 500千円 短期に集中して費用化される

※上表は年間償却費のみを比べたものです。実際には資産除去債務の時の経過による調整額(利息費用)も別途発生します。リース期間の見積り(延長オプションを行使することが合理的に確実かどうか)によって使用権資産側の償却期間は変わるため、この差は契約ごとに異なります。

定期建物賃貸借で更新の都度リース期間を短く見積もっている拠点では、使用権資産に加算した部分の費用化が想定より早まります。拠点数が多い会社ほど、この差の累計が損益に効いてきます。切り分けを曖昧にしたまま全額を使用権資産に加算すると、償却費が前倒しで計上される点には注意が必要です。

📊 既存の「建物附属設備(資産除去債務関連)」は振り替えるのか

資産除去債務会計基準の適用以来、除去費用資産を建物附属設備として計上してきた会社は多いはずです。新リース会計基準の適用にあたって、この残高を使用権資産へ振り替える必要があるのでしょうか。

前述の切り分けに従えば、内装造作の撤去に対応する部分については、関連する有形固定資産が造作のままであり、加算先は変わりません。したがって使用権資産への振替えは必須ではない、という整理になります。逆に、造作に紐付かない原状回復部分まで含めて造作に加算していた場合は、その部分の取扱いを検討することになります。

実務上は、過去に計上した除去費用資産の内訳が「造作分」と「純粋な原状回復分」に分けて記録されていないことが多いはずです。適用初年度に向けて、既存の資産除去債務の見積根拠を拠点ごとに洗い直し、内訳が説明できる状態にしておくことが準備の第一歩になります。

🧾 見積りを改訂したとき、どちらに乗るのか

近年は人件費と資材価格の上昇により、原状回復単価の見積りを引き上げる会社が増えています。この改訂分はどちらの資産に乗るのでしょうか。

資産除去債務会計基準第10項は「割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合の当該見積りの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理する」と定めています。第7項とまったく同じ「関連する有形固定資産」という文言です。つまり当初の切り分けと同じ資産に乗ることになります。

なお第11項により、見積りの変更でキャッシュ・フローが増加する場合には、その時点の割引率を適用します。当初計上時の割引率ではない点に注意してください。

見積りを引き上げたときの処理(第10項・第11項) ① 増加額を算定 割引前将来キャッシュ・ フローの増加額を見積る 増加する場合は その時点の割引率を適用 ② 負債に加算 資産除去債務の 帳簿価額に加える 損益には直接計上しない ③ 同額を資産に加算 当初と同じ「関連する 有形固定資産」に加える 造作分は造作に 原状回復分は使用権資産に 使用権資産に加算した部分は、残存するリース期間にわたって償却されるため費用化が早い

見積りの改訂も、当初の切り分けに従って加算先が決まります。

📅 敷金の簡便法を採っている場合

企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項は、建物等の賃借契約に関連して敷金を支出している場合の簡便的な取扱いを認めています。資産除去債務を計上せず、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用計上する方法です。

この簡便法を採用している場合、そもそも除去費用資産を計上していないため、本記事で扱った加算先の論点は生じません。ただし新リース会計基準の適用後も同じ簡便法を継続できるかについては、契約内容と重要性の判断を含めて監査人と確認しておくべき事項です。

🗒️ 税務の取扱い|会計とのズレは3つある

ここまでは会計の話です。税務では、資産除去債務も除去費用資産も認識しません。ズレは大きく3つあります。

ズレ①|原状回復費用は債務確定基準で損金算入

税務上、原状回復費用が損金に算入されるのは、実際に工事が行われて債務が確定した事業年度です。会計上、資産除去債務を計上した時点や、除去費用資産を償却している期間中には損金算入されません。資産除去債務の時の経過による調整額(利息費用)も同様に損金不算入です。

ズレ②|造作の耐用年数は通達の考え方による

他人の建物に対する造作の耐用年数は、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3によります。国税庁のタックスアンサーNo.5406によれば、造作した建物の耐用年数、造作の種類・用途・使用材質等を勘案して合理的に耐用年数を見積もるのが原則で、造作が複数ある場合は種類別ではなく造作全部を一の資産として総合して見積もります。

例外として、①賃借期間の定めがあること、②その賃借期間が更新できないこと、③有益費の請求または買取請求ができないこと、の3要件をすべて満たす場合に限り、賃借期間を耐用年数として償却することができます。定期建物賃貸借であっても、再契約の可能性がある場合などは要件の充足を慎重に検討する必要があります。

ズレ③|使用権資産の減価償却費は損金にならない

令和7年度税制改正により、法人税法第53条が新設されました。財務省の改正解説によれば、リース取引以外の資産の賃貸借(いわゆるオペレーティング・リース)について、契約に基づき支払うこととされている金額のうち、各事業年度において債務の確定した部分の金額を損金の額に算入するものとされています。適用は令和7年4月1日以後に開始する事業年度からです。

あわせて令和7年6月30日付で法人税基本通達が改正され、12の5-3-1(資産の賃貸借の範囲)、12の5-3-2(無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入)などが新設されています。

つまり会計上は使用権資産の減価償却費とリース負債に係る利息費用を計上する一方、税務上は債務が確定した賃借料が損金となるため、申告調整が必要になります。原状回復費用のうち使用権資産に加算した部分の償却費も、この調整の対象に含まれます。

項目 会計上の取扱い 税務上の取扱い
資産除去債務の計上 負債を計上し、同額を関連する有形固定資産に加算 認識しない
除去費用資産の償却費 造作の耐用年数またはリース期間で償却 損金不算入
時の経過による調整額 発生時の費用(利息費用) 損金不算入
実際の原状回復工事 資産除去債務を取り崩す 債務確定時に損金算入
使用権資産の減価償却費 リース期間で償却 損金不算入(申告調整)
支払リース料 費用計上しない(負債の返済) 債務確定分を損金算入(法人税法第53条)

※上表は借手がオペレーティング・リースに該当する賃貸借を行っている場合を前提としています。税法上のリース取引(ファイナンス・リース)に該当する場合の取扱いは異なります。個別の判定は顧問税理士にご確認ください。

⚖️ 税効果会計|負債と資産で一時差異の向きが逆になる

会計と税務にズレがある以上、税効果会計の検討が必要です。資産除去債務に係る一時差異は、負債側と資産側で性質が逆になります。

資産除去債務に係る一時差異は2つある 資産除去債務(負債側) 将来減算一時差異 会計上は負債があるが 税務上の負債はない 解消は実際の除去工事の時 回収可能性の検討が必要 (回収可能性適用指針) 除去費用資産(資産側) 将来加算一時差異 会計上は資産があるが 税務上の帳簿価額はゼロ 解消は償却の進行に応じて 原則として繰延税金負債を計上 (税効果適用指針)

当初認識時は同額のため相殺されますが、その後は解消のタイミングが異なるため差が開いていきます。

実務で論点になりやすいのは、負債側の将来減算一時差異のスケジューリングです。資産除去債務は除去の時期に一時に解消される性質を持つため、退職給付に係る負債のように長期にわたって解消される一時差異とは扱いが異なります。除去時期をいつと見込むか、その期に十分な課税所得が見込めるかによって、繰延税金資産の計上可否が変わります。

加算先を造作から使用権資産に変えると、資産側の将来加算一時差異が解消する速度も変わります。切り分けの判断は、税効果の金額にも波及します。

🌍 IFRS第16号ではどう扱われるか

IFRS第16号第24項(d)は、使用権資産の原価に「原資産の解体及び除去、原資産の設置場所の原状回復、または原資産をリースの契約条件で要求される状態に回復するために借手に発生すると見込まれるコストの見積り(棚卸資産の製造のために発生するものを除く)」を含めるとしています。

一方、借手が行った内装造作はIAS第16号に基づき別個の有形固定資産として認識されます。IAS第16号は、資産の解体・除去および設置場所の原状回復に係る当初見積コストを、当該資産の取得原価に含めるとしています。

したがってIFRSでも、造作の撤去に対応する部分は造作資産の原価、原資産そのものの原状回復は使用権資産の原価という、日本基準と概ね同様の切り分けになると考えられます。ただしIFRSにおいても区分の判定は契約と工事の実態によるため、機械的に当てはめられるものではありません。

📅 実務対応のステップ

適用初年度までにやること STEP 1|契約の棚卸 賃貸借契約の原状回復 条項を拠点ごとに確認 スケルトン戻しか 造作撤去のみかを判別 STEP 2|見積りの内訳化 原状回復工事の見積りを 造作撤去分と回復分に分解 工事業者の内訳明細を 根拠資料として保存 STEP 3|方針の文書化 加算先の判定基準を 会計方針として明文化 既存計上分の取扱いと 償却期間もあわせて記載 STEP 4|監査人との協議 判定基準と影響額を 早い段階で共有する 会社が案を作り 監査人に見解を確認する 拠点数が多い会社ほど、STEP 2の内訳化に時間がかかります。工事見積りの取り直しが必要になることもあります。

判定基準そのものより、その基準を裏づける資料をそろえることに時間がかかります。

新リース会計基準の適用準備を、公認会計士・税理士が伴走支援します

原状回復の資産除去債務をはじめ、リースの識別、リース期間の見積り、少額・短期の免除規定の適用、会計方針の文書化、税務の申告調整まで対応します。会計と税務の両面から一貫してご相談いただけます。

❓ よくある質問

Q1.原状回復債務はすべて使用権資産に加算するのですか。

いいえ。適用指針第33号第28項は「関連する有形固定資産が使用権資産であるとき」に使用権資産へ加算すると定めた規定です。自社が資産計上した内装造作の撤去に対応する部分は、関連する有形固定資産が造作であるため、従来どおり造作の帳簿価額に加算するという整理になります。

Q2.既存の建物附属設備(資産除去債務関連)は使用権資産に振り替える必要がありますか。

内装造作の撤去に対応する部分については、加算先が変わらないため振替えは必須ではないと考えられます。ただし、造作に紐付かない原状回復部分まで造作に含めて計上していた場合は、その部分の取扱いを検討する必要があります。過去の見積根拠を拠点ごとに確認することをおすすめします。

Q3.どちらに加算するかで、決算にどのくらい影響しますか。

最も大きいのは償却期間の差です。使用権資産は原則として借手のリース期間を耐用年数とするため(企業会計基準第34号第38項)、造作の耐用年数より短くなることが多く、費用化が前倒しになります。加えて、資産側の将来加算一時差異の解消速度が変わるため、税効果の金額にも影響します。

Q4.原状回復単価の見積りを引き上げた場合、増加額はどちらに乗りますか。

資産除去債務会計基準第10項により、見積りの変更による調整額は資産除去債務と「関連する有形固定資産」の帳簿価額に加減します。第7項と同じ文言のため、当初の切り分けと同じ資産に乗ります。なお第11項により、キャッシュ・フローが増加する場合はその時点の割引率を適用します。

Q5.敷金の簡便法を使っている場合はどうなりますか。

企業会計基準適用指針第21号第9項の簡便法を採用している場合、資産除去債務も除去費用資産も計上していないため、加算先の論点は生じません。新リース会計基準の適用後も同じ方法を継続できるかは、契約内容と重要性を踏まえて監査人にご確認ください。

Q6.税務上、原状回復費用はいつ損金になりますか。

実際に工事が行われて債務が確定した事業年度です。会計上の資産除去債務の計上時や、除去費用資産の償却期間中には損金算入されません。また令和7年度税制改正で新設された法人税法第53条により、オペレーティング・リースの借手は債務が確定した賃借料を損金算入するため、使用権資産の減価償却費については申告調整が必要になります。

📄 まとめ

原状回復の資産除去債務をどの資産に加算するかは、「関連する有形固定資産が何か」という一点で決まります。新リース会計基準の適用指針第28項は「関連する有形固定資産が使用権資産であるとき」の処理を定めた条件つきの規定であり、すべての原状回復債務を使用権資産へ移せという規定ではありません。

自社が資産計上した内装造作の撤去に対応する部分は造作に、造作に紐付かない純粋な原状回復部分は使用権資産に加算する。これが条文の文言から導かれる読み方です。ただし条文が明示的に区分を定めているわけではないため、契約と工事の実態に基づく判断が必要になります。

どちらに乗せるかは、償却期間を通じて損益に、そして一時差異の解消速度を通じて税効果に波及します。適用初年度に慌てないために、原状回復工事の見積りを「造作撤去分」と「回復分」に分解できる状態にしておくこと、そしてその判定基準を会計方針として文書化し、監査人と早めに共有しておくことをおすすめします。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の会計処理・税務処理を保証するものではありません。実際の判断にあたっては、契約内容と工事の実態を踏まえ、監査人および顧問税理士にご確認ください。記載内容は2026年8月時点の基準・法令に基づいています。

🔗 参考(公的な一次情報)

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