親御さまを亡くされたばかりで、深い悲しみの中にいらっしゃることと思います。それなのに、葬儀、役所への届出、銀行、税金……とやるべきことが次々に押し寄せ、「何から手をつければいいのか分からない」と不安を感じている方は少なくありません。
この記事は、相続を初めて経験する方に向けて、亡くなった直後から必要になる手続きを「いつまでに・どこで・何をするか」の時系列でまとめた総まとめ(ガイド)記事です。全部を一度に覚える必要はありません。まずは全体像をつかみ、期限のあるものから順番に進めていきましょう。
📖 この記事でわかること
- 親が亡くなったらやることの全体像(時系列マップ)
- 期限がある手続きの一覧(7日・14日・3か月・4か月・10か月・3年)
- 相続税がかかる人の割合と、かかるかどうかの目安(基礎控除)
- 台東区にお住まいだった方の相続で関係する主な窓口
🗓️ 相続手続きの流れと期限の全体像【時系列マップ】
まず、期限のある主な手続きを時系列で一覧にしました。起算日は原則として「亡くなった日(死亡の事実や相続の開始を知った日)」です。
| ⏰ 期限 | 手続き | 窓口 |
|---|---|---|
| 7日以内 | 📄 死亡届の提出・火葬許可の申請 | 市区町村役場(台東区役所など) |
| 10日/14日以内 | 👴 年金受給権者死亡届(厚生年金10日・国民年金14日)、健康保険・介護保険・世帯主変更などの届出 | 年金事務所・市区町村役場 |
| 3か月以内 | ⚖️ 相続放棄・限定承認の申述(借金が多い場合など) | 家庭裁判所 |
| 4か月以内 | 📄 準確定申告(亡くなった方の所得税の申告) | 税務署 |
| 10か月以内 | 💰 相続税の申告・納税 | 亡くなった方の住所地の税務署 |
| 3年以内 | 🏠 相続登記(不動産の名義変更) | 法務局 |
💡 ポイント:このほか、期限は法律で決まっていなくても、遺言書の確認、相続人の確定(戸籍集め)、財産調査、遺産分割協議(遺産の分け方の話し合い)などを並行して進める必要があります。それぞれの詳しいやり方は、本連載の各回で順番に解説していきます。
📄 死亡後7日以内にやること:死亡届と火葬許可
最初の手続きは死亡届です。死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡診断書(または死体検案書)を添えて、亡くなった方の死亡地・本籍地または届出人の所在地の市区町村役場に届け出ます(戸籍法86条・87条)。手数料はかかりません。
📍 どこで:市区町村役場(台東区にお住まいだった方は台東区役所)
⏰ いつまでに:死亡の事実を知った日から7日以内
🧾 何を持って:死亡届(死亡診断書と一体の用紙)。用紙は病院・役所で入手できます
実務上は、葬儀社が死亡届の提出や火葬許可の申請を代行してくれることが一般的です。死亡診断書は生命保険の請求などで後から何度も使うため、提出前に複数枚コピーを取っておくことをおすすめします。
👴 死亡後10日〜14日を目安にやること:年金・保険・世帯主の手続き
年金を受け取っていた方が亡くなった場合、年金受給権者死亡届の提出が必要です。期限は厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です(日本年金機構)。なお、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、死亡届自体は原則不要ですが、未支給年金(亡くなった月分までのまだ受け取っていない年金)の請求手続きは別途必要です。
📍 どこで:年金事務所または年金相談センター(郵送可)
⏰ いつまでに:厚生年金10日以内・国民年金14日以内
🧾 何を持って:年金証書、死亡を明らかにできる書類(戸籍抄本・住民票の除票など)
⚠️ 注意:届出が遅れて年金が振り込まれ続けると、後で返還が必要になります。
このほか、国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険の資格喪失や世帯主変更の届出は14日以内が目安とされています。必要な手続きは世帯の状況により異なるため、市区町村の窓口でまとめて確認するとスムーズです。
⚖️ 3か月以内:相続放棄するかどうかの判断期限
亡くなった方に借金が多い場合など、相続人は次の3つから選ぶことができます。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ① 単純承認 | 財産も借金もすべて引き継ぐ(何もしなければ自動的にこれになります) |
| ② 相続放棄 | 財産も借金も一切引き継がない |
| ③ 限定承認 | 受け継いだ財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐ |
相続放棄・限定承認をするには、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に申述(申し立て)をしなければなりません(民法915条)。費用は申述人1人につき収入印紙800円と連絡用の郵便料です。
⚠️ 注意:この3か月の間に亡くなった方の財産を処分してしまうと、単純承認したものとみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。借金の有無がはっきりしないうちは、預金の引き出しや形見分け以上の財産の処分は慎重に判断してください。
📄 4か月以内:準確定申告(亡くなった方の所得税)
準確定申告とは、亡くなった方のその年1月1日から死亡日までの所得税を、相続人が代わりに申告する手続きです。相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、亡くなった方の死亡当時の納税地の税務署に申告・納税します(タックスアンサーNo.2022)。
事業や不動産賃貸をしていた方、年金や給与の額が一定以上の方などは申告が必要です。一方、申告義務がない方でも、医療費が多かった場合など、申告すると税金が還付されるケースもあります。必要かどうかの判断は第9回で詳しく解説します。
💰 10か月以内:相続税の申告・納税
相続税の申告と納税の期限は、被相続人(亡くなった方)が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(相法27条・タックスアンサーNo.4205)。例えば1月6日に亡くなった場合、その年の11月6日が期限です。
提出先は亡くなった方の住所地を管轄する税務署で、相続人の住所地ではない点に注意してください。台東区は地区により東京上野税務署と浅草税務署に管轄が分かれています。台東区の管轄と申告先の詳細は、連載の台東区特化回で解説する予定です。
📊 相続税がかかるのは亡くなった方の約1割
「相続税」と聞くと誰もが払うものと思われがちですが、実はそうではありません。国税庁の発表によると、令和6年分に相続税の申告書の提出に係る被相続人の割合(課税割合)は10.4%でした(国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」令和7年12月公表)。つまり、全国では亡くなった方のおよそ10人に1人にしか相続税はかかっていません。
相続税がかかるかどうかの最初の目安は基礎控除(税金がかからない範囲)です。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
(相法15条・タックスアンサーNo.4152)
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
遺産の総額がこの基礎控除の範囲内であれば、相続税の申告も納税も必要ありません。ただし、台東区(上野・浅草・入谷エリア)のように地価の高い地域では、「自宅+預貯金」だけで基礎控除を超えるケースが珍しくありません。詳しい判定方法は第11回で解説します。
🏠 3年以内:相続登記(不動産の名義変更)は義務です
不動産(土地・建物)を相続した場合、相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をすることが法律上の義務になっています(令和6年4月1日施行)。正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象となる可能性があります(法務省)。令和6年4月1日より前に相続した未登記の不動産も対象で、こちらは令和9年3月31日までに登記が必要です。放置すると相続人が次の世代に増えていき、手続きがどんどん難しくなります。
✅ 最初の1か月でやっておきたいことチェックリスト
期限のある手続きと並行して、次の準備を早めに始めておくと、後の遺産分割や相続税申告がスムーズになります。
☑️ 死亡診断書のコピーを複数枚保管する
☑️ 葬儀費用の領収書・支払いメモを保管する(相続税の計算で控除できる場合があります)
☑️ 遺言書がないか探す(見つけても勝手に開封しないこと)
☑️ 亡くなった方の戸籍を集め始める(相続人の確定に必要)
☑️ 通帳・保険証券・権利証・郵便物などから財産の手がかりを集める
☑️ 借金・ローンの有無を確認する(相続放棄の判断は3か月以内)
❓ よくある質問
Q1. 相続税は必ず税務署に申告しなければいけませんか?
A. 遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、原則として申告も納税も必要ありません。実際に相続税の申告書の提出に係る被相続人の割合は全国で10.4%(令和6年分)です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など「申告することが条件」の制度を使う場合は、税額がゼロでも申告が必要です。
Q2. 手続きの期限に間に合いそうにないときはどうすればいいですか?
A. 手続きにより対応が異なります。例えば相続放棄の3か月は、財産調査が終わらない場合に家庭裁判所へ期間伸長の申立てができます。相続税の10か月は原則延長されないため、遺産分割がまとまらなくても法定相続分でいったん申告する方法があります。期限が迫っている場合は、早めに専門家にご相談ください。
Q3. 台東区に住んでいた親の相続では、どこの窓口に行けばいいですか?
A. 死亡届や戸籍関係は台東区役所、年金は年金事務所、相続登記は法務局、相続税は亡くなった方の住所地を管轄する税務署(台東区は地区により東京上野税務署・浅草税務署)が窓口です。台東区の窓口の詳細は、本連載の台東区特化回でまとめて解説する予定です。
📝 まとめ:まずは期限のある手続きから、一つずつ
親が亡くなったらやることは多岐にわたりますが、押さえるべき期限は「7日・10日/14日・3か月・4か月・10か月・3年」の6つです。特に相続放棄の3か月と相続税申告の10か月は、判断を誤ると取り返しがつきにくい重要な期限です。全体像をつかんだら、本連載の各回で一つずつ手続きを進めていきましょう。
👤 監修者情報
公認会計士・税理士 鈴木佑也
鈴木佑也公認会計士税理士事務所(東京都台東区入谷)
相続税の申告・生前対策のほか、IPO支援・事業承継支援を行っています。
🏢 相続税のご相談は台東区の当事務所へ
台東区(上野・浅草・入谷エリア)で相続税の申告・生前対策のご相談は、鈴木佑也公認会計士税理士事務所へお問い合わせください。初めての相続で何から始めればよいか分からない段階からのご相談も承っています。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別のご判断は税理士等の専門家にご相談ください。