相続財産の調べ方は?預貯金・不動産・株・借金の調査と財産目録

「親の財産がどこに、いくらあるのか、わからない」――通帳が見つからない、借金もあるかもしれない。初めての相続では、財産の全体像が見えないことが大きな不安のもとになります。

財産調査は、遺産分割・相続放棄の判断・相続税申告のすべての土台です。この記事では、預貯金・不動産・株式・借金・生命保険・デジタル遺産の調べ方と「財産目録」の作り方を、税知識ゼロの方に向けてやさしく解説します。

この記事でわかること

  • 預貯金・不動産・株式・借金・生命保険それぞれの調べ方と窓口・費用
  • 2026年2月開始の「所有不動産記録証明制度」で亡くなった方名義の不動産を全国一覧で確認できること
  • 借金を調べる信用情報機関(CIC・JICC・KSC)への開示請求の方法と限界
  • 財産目録の作り方と、相続放棄3か月・相続税申告10か月の期限との関係

📅 財産調査はなぜ急ぐ?3つの期限との関係

相続手続きの序盤の仕事は、戸籍を集めて「誰が相続人か」を確定させること(第6回で解説)と、「財産がどこにいくらあるか」を確定させる財産調査の2つです。財産調査を急ぐ理由は、次の3つの期限に直結しているからです。

期限 手続き 財産調査との関係
3か月以内 相続放棄・限定承認(民法915条) 借金を含む全体像がわからないと、相続か放棄かを判断できません
4か月以内 準確定申告(所得税法124・125条) 亡くなった方に事業や不動産の収入があれば所得税の申告が必要です
10か月以内 相続税の申告・納付(相続税法27条・33条) 基礎控除を超えるかの判定と申告書作成の基礎になります

相続税がかかるかどうかは、財産の合計額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数、相続税法15条)を超えるかで決まるため、全体像をつかまない限り「申告が必要か」の判断も始められません。期限全体の流れは第1回(相続手続きの流れと期限一覧)をご覧ください。

💰 預貯金の調べ方:残高証明書は「死亡日現在」で

まずは自宅で手がかりを探す

まずは家の中の手がかり集めです。①通帳・キャッシュカード・証書、②金融機関からの郵便物、③銀行名入りのカレンダーなどの粗品、④スマホの銀行アプリやメール。この4つで、取引のあった金融機関はおおむね洗い出せます。

残高証明書を請求する

取引が判明した金融機関には、「死亡日現在」の残高証明書を請求します。相続人であれば1人からでも請求できるのが一般的です。同じ銀行に複数の口座がありそうなときは「全店分をまとめて(名寄せして)」と依頼すると漏れを防げます。定期預金がある場合は、死亡日までの利息計算書もあわせて依頼すると相続税の計算で役立ちます。

なお、請求により金融機関が死亡を把握するため、口座は凍結されます。当面のお金が必要な場合の対処法(預貯金の仮払い制度)は、連載第4回で解説しています。

残高証明書の請求

📍 どこで:各金融機関の窓口(郵送対応も多い)

いつまでに:期限はないが、放棄判断(3か月)・相続税申告(10か月)から逆算して早めに

🧾 何を持って:死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本、相続人とわかる戸籍(法定相続情報一覧図も可)、本人確認書類・印鑑証明書など(金融機関により異なる)

🏠 不動産の調べ方:名寄帳と所有不動産記録証明制度

固定資産税の課税明細書と名寄帳

不動産の最初の手がかりは、毎年4〜6月頃に届く固定資産税の納税通知書に同封される「課税明細書」です。その市区町村内にある課税対象の不動産が一覧で載っています。

課税明細書が見つからない場合や、非課税の私道なども含めて確認したい場合は、その市区町村内で同じ人が所有する固定資産の一覧表「名寄帳(なよせちょう)」の写しを請求します(相続人が申請できます)。窓口は市区町村役場ですが、東京23区では不動産のある区の都税事務所です。台東区内の不動産なら台東都税事務所(台東区雷門1-6-1)になります(東京都主税局)。

所有不動産記録証明制度:全国分を一覧で確認(2026年2月開始)

2026年(令和8年)2月2日に始まった「所有不動産記録証明制度」(不動産登記法119条の2)を使うと、亡くなった方が所有権の登記名義人となっている不動産を、全国分まとめて一覧にした証明書として取得できます。市区町村単位でしか調べられない名寄帳と違い、全国分を一度に確認できるのが特長です。

相続人が請求でき、全国どの法務局でも窓口・郵送・オンラインで手続き可能です。手数料は検索条件1件・1通あたり書面請求1,600円(オンライン請求は1,470円〜1,500円)です(法務省)。ただし登記記録上の氏名・住所で検索する仕組みのため、引っ越し前の古い住所のまま登記されている不動産などは抽出されない可能性があります。課税明細書・名寄帳と組み合わせて使うのがコツです。

調べ方 わかる範囲 窓口
課税明細書 その市区町村内の課税されている不動産 毎年の納税通知書に同封(自宅で確認)
名寄帳 その市区町村内に所有する固定資産の一覧 市区町村役場(東京23区は都税事務所)
所有不動産記録証明書 全国の登記名義になっている不動産の一覧 全国の法務局(書面1,600円など)

判明した不動産の権利関係は、法務局で登記事項証明書(窓口600円・オンライン請求520円など)を取得して確認します。なお、相続した不動産の登記(名義変更)は、取得を知った日から3年以内の申請が義務化されています(不動産登記法76条の2。第24回で解説予定です)。

📈 株式・投資信託の調べ方:ほふりへの開示請求

取引残高報告書や配当金計算書、株主総会の招集通知などの郵便物が手がかりです。取引先の証券会社がわからないときは、証券保管振替機構(通称「ほふり」)に「登録済加入者情報の開示請求」を行うと、口座が開設されている証券会社・信託銀行等の一覧を確認できます。

手続きは郵送のみで、開示費用は1件6,050円(法定相続情報一覧図のコピーを提出する場合は4,950円)、結果の通知まで2か月ほどかかります(証券保管振替機構・2026年8月版の案内)。ほふりでわかるのは「どこに口座があるか」までなので、銘柄や残高は判明した証券会社に残高証明書等を請求して確認します。

※開示対象は上場株式等です。非上場株式(同族会社の株式など)は会社の関係書類などから確認します。

⚖️ 借金の調べ方:信用情報機関CIC・JICC・KSC

借金などマイナスの財産も相続の対象です。まず督促状などの郵便物、通帳の引き落とし履歴、契約書を確認します。そのうえで、カード会社や金融機関からの借入れは、次の3つの信用情報機関に開示請求して調べられます。

機関 主にわかる借入れ 手数料と請求できる人
CIC クレジットカード・信販会社 1,500円。法定相続人(郵送のみ)
JICC(日本信用情報機構) 消費者金融など貸金業者 2,177円。法定相続人・2親等以内の血族(郵送のみ)
KSC(全国銀行個人信用情報センター) 銀行・信用金庫など 2,403円。法定相続人(郵送のみ)

3機関とも郵送で手続きし、戸籍など(法定相続情報一覧図も可)で相続人であることを証明します。

注意:信用情報だけでは借金のすべてはわからない

①貸し手が契約者の死亡を確認すると登録情報を削除することがあり、開示結果に載らない借入れがあり得ます。②個人間の借金は登録されず、誰かの保証人になっていた事実(保証債務)も開示結果だけでは把握しきれません。契約書や郵便物の確認が欠かせません。

住宅ローンは団体信用生命保険(団信)で完済されるケースが多いため、借入先に確認しましょう。財産より借金のほうが多そうな場合は、3か月の熟慮期間内(民法915条)に相続放棄・限定承認を検討します。遺産を処分すると放棄が認められなくなるおそれがあるため(民法921条)、判断がつくまで遺産には手をつけないでください(次回・第8回で解説します)。

📱 生命保険・デジタル遹産の調べ方

生命保険契約照会制度で契約の有無を確認

保険証券や「契約内容のお知らせ」、通帳の保険料引き落としが手がかりです。見つからない場合は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」で、国内の生命保険会社全社を対象に、亡くなった方が契約者または被保険者になっている契約の有無を一括調査できます。

利用料は照会対象者1名につきWEB申請6,000円・書面申請7,000円、回答は「契約の有無」のみです(生命保険協会)。見つかった契約は各保険会社に照会します。なお、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります(相続税法12条。第14回で解説予定)。

ネット銀行・ネット証券・スマホの中の資産

ネット専業の銀行・証券は紙の郵便物が届かず、見落としの代表例です。スマホやパソコンのメール・アプリ・ブックマークを確認しましょう。暗号資産(仮想通貨)も財産になり、サブスクリプション(月額サービス)の解約もクレジット明細から拾い出せます。

なお、スマホはパスコードを繰り返し間違えると初期化される設定の機種もあるため、ロック解除はむやみに試さず慎重に行ってください。

🗒️ 財産目録の作り方:分割・申告・放棄判断の土台

調査結果は「財産目録」にまとめます。様式は自由で、手書きでもエクセルでも構いません。次の項目を一覧にすれば、遺産分割の話し合い(第10回で解説予定)にも相続税の要否判定にもそのまま使えます。

  • 預貯金:金融機関名・支店・口座番号・死亡日残高
  • 不動産:所在・地番・家屋番号・利用状況(自宅・貸家など)
  • 有価証券:証券会社名・銘柄・数量
  • 生命保険:保険会社名・証券番号・受取人
  • その他:自動辪、貴金属、ゴルフ会員権など
  • マイナスの財産:借入金、未払いの税金・医療費など

金額は死亡日時点の時価で把握するのが基本です(相続税法22条)。不動産は相続税独自の評価(路線価など。第17回で解説予定)で計算し直しますが、まずは固定資産税評価額のメモで十分です。借入金や未払金は相続税の計算で差し引ける「債務控除」の対象です(国税庁タックスアンサーNo.4126)。蒬式費用とあわせて領収書類を保管しておきましょう。

財産調査の段�8からご相談いただけます

「何から手をつければいいかわからない」段階のご相談も歓迎です。台東区(上野・浅草・入谷)で相続税のご相談は、財産調査から申告まで一貫してお手伝いする鈴木佑也公認会計士税理士事務所へ。

相続税申告支援についてお問い合わせ

❓ よくある質問

Q1. 財産調査はいつまでに終えればいいですか?

調査自体に期限はありませんが、相続放棄の判断期限が「自分が相続人になったことを知った時から3か月」(民法915条)のため、借金を含む全体像はそれまでにつかむのが安全です。四十九日を過ぎた頃には本格的に着手することをおすすめします。

Q2. 窓口が多くて大変です。効率よく進めるコツはありますか?

先に法務局で「法定相続情報一覧図」(交付手数料無料)を作っておくことです。戸籍一式の代わりに金融機関・ほふり・信用情報機関などで使え、ほふりの開示費用が下がるメリットもあります。作り方は第6回で解説しています。

Q3. 財産調査を税理士に頼むことはできますか?

できます。残高証明書の取得サポートや不動産・株式の評価まで含め、相続税申告とセットで依頼するのが一般的です。全体像が早くつかめるほど、放棄の判断や特例適用の検討など打てる手が増えます。

📝 まとめ:5つの入口から漏れなく調べる

財産調査は、①預貯金は残高証明書、②不動産は名寄帳と所有不動産記録証明書、③株式はほふり、④借金は信用情報機関、⑤生命保険は照会制度――5つの入口を押さえれば漏れを大きく減らせます。結果を財産目録にまとめれば、放棄の判断も相続税の要否判定も遺産分割もスムーズに動き始めます。

連載の全体像と各回の一覧は「相続税 完全ガイド」をご覧ください。次回・第8回は、借金が多いときに検討する相続放棄・限定承認(3か月の期限)を解説します。

監修者

公認会計士・税理士 鈈木佑也(鈈木佑也公認会計士税理士事務所/東京都台東区入谷)。IPO支援・法人税務とともに、台東区(上野・浅草・入谷)を中心に相続税申告のサポートを行っています。

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※本記事は掲載日時点の法令等に基づく一般的な情報です。個別の判断は税理士等の専門家にご相談ください。

参考:法務省 所有不動産記録証明制度について法務局 登記事項証明書等のオンライン請求のご案内東京都主税局 固定資産に関する証明等(23区内)証券保管挿替機構 登録済加入者情報の開示請求(相続人用)生命保険協会 生命保険契約照会制度のご案内CIC 郵送で開示JICC 法定相続人等による開示全国銀行個人信用情報センター 郵送による開示手続国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務

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