ショートレビュー(短期調査)とは?目的やチェック内容、実施方法を整理しよう

「IPO実現のためには、何から始めたら良いの?」「ショートレビューを実施したほうが良いと言われたけれども、具体的には何?」等、IPOを検討し始めた会社経営者や管理責任者の方においては、上記のような疑問があるかと思います。

今回は、ショートレビューの目的やチェック内容、実施方法や実施のための事前準備について詳しく解説していますので、ぜひ、チェックしてください。

1.ショートレビューとは

ショートレビューとは、会社の管理体制の現状を整理するとともに、IPO実現のための課題を早期にかつ網羅的に抽出した上で、各課題の具体的な改善施策・解消スケジュールを明確化するために実施する調査をいいます。

ショートレビューの実施により、IPO実現までの課題と解決策を一覧化したロードマップを作成することができるため、IPO準備を効率的に漏れなく実施する上で必要不可欠な調査と言えます。

IPO実現のために不可欠な事項

IPO実現のためには、 「管理体制構築」 と 「業績進捗(予算管理)」 の両者をあるべき時期までに整備・構築し、実際の業務において適切に運用することが求められます。

① 管理体制構築

コーポーレート・ガバナンスの遵守や機関設計、各種業務プロセスに係る内部統制・規程作成、労務管理、及び上場会社が適用すべき会計基準を適用した上での決算早期化等、一定の管理体制の構築が求められます。

② 業績進捗(予算管理体制構築)

業績進捗の面では、実現可能性・成長可能性のある予算策定、実績数値の早期集計、各種施策(アクションプラン)の改善・実施が求められます。

 

上記 「① 管理体制 」「② 業績進捗(予算管理体制)」を整備・構築し、実際の業務において運用するには、相当程度の時間を要することが一般的です。このため、IPOを想定スケジュールどおりに実現させるには、可能な限り早期にこれらの①②の現状を整理し、課題を網羅的に抽出するショートレビューの実施が必要となるのです。

2.ショートレビューの目的・チェック内容

ショートレビューの目的は、会社の現状を整理し、IPO実現に向けた課題を早期にかつ網羅的に抽出し、各課題の具体的な改善施策・解消スケジュールを明確化することにあります。

当該目的を踏まえた上で、具体的なショートレビューのチェック内容を説明します。主に、下記の6つの観点からチェックします。

(1)経営管理体制

主に、コーポレートガバナンス、株主総会・取締役会等の開催、機関設計・役員選任、規程・マニュアルの作成、労務管理、契約管理、内部監査制度、反社取引の防止に関する状況を確認します。

(2)利益管理体制

主に、事業計画・年度予算の作成状況、各種業績指標(KGI、KPI等)の整理とそれに紐づく施策・アクションプランの具備状況、予実差異の分析と施策・アクションプラン改善状況、実績数値の集計状況(月次決算の早期化状況)を確認します。

(3)会計処理方針

主に、CFO選任状況、経理決算体制(特に経理・財務の職務分掌状況)、会計方針書(ポジションペーパー)作成状況、新収益認識基準の適用状況、工数管理含めた原価計算制度の構築状況、その他上場会社が適用すべき会計基準の適用状況を確認します。

(4)内部管理体制(内部統制)

主に、販売プロセス(見積→受注→出荷・検収→請求・売上計上→入金消込)、購買プロセス(見積→発注→納品・検収→仕入計上→支払)、棚卸プロセス(継続記録法の採用状況、実物管理状況、実地棚卸の頻度・実施状況)、その他各種業務プロセスを確認します。

(5)ITセキュリティ

主に、各種社内システムのID・PW付与方法(例えば、アドミン権限者はユーザー部門から分離されているか)、開発と運用の分離状況、セキュリティ対策状況、インサイダー取引の対策状況を確認します。

(6)関連当事者等の整備

主に、関連当事者等の定義・リストの作成状況、取引金額や取引内容・条件の確認、取締役会承認等の取引牽制状況、経営者取引や私的取引の有無等を確認します。

3.ショートレビューの実施時期・実施方法

実施時期

IPOを目指すことになった場合には、早急に(プレ)ショートレビューを実施することをおすすめします。上述したとおり、管理体制や業績進捗(予算管理体制)を整備・構築し、実際の業務において運用するには、相当程度の時間を要することが一般的です。このため、IPOを想定スケジュールどおりに実現させるには、可能な限り早期にこれらの現状を整理し、課題を網羅的に抽出するショートレビューの実施が必要となります。

なお、実施期間(ヒアリングから講評会・報告書の提示まで)としては、会社数や会社規模にも依りますが、3週間程度になることが一般的です。

実施方法

会社の現状を把握するための最低限の資料(主に税務申告書、謄本、事業計画・年度予算等)を事前に提示頂いた上で、会社数や会社規模にも依りますが、4時間/日×4日間程度、管理責任者等に対するヒアリングにより調査します。

4.ショートレビューの事前準備

ショートレビューを実施する際、各種資料を提出する必要があります。

会社の事業内容や規模によって追加資料の依頼があることもありますが、主な提出書類を事前に準備しておくことで、スムーズなショートレビューの実施が可能です。

【主な提出書類】

  • 役員一覧、株主名簿、役員及び主要株主との取引内容、取締役会議事録、など
  • パンフレットやカタログなどの会社案内や取扱商品が確認できる資料
  • 仕入先、主な販売先、外注先一覧や実績の推移、業務フロー、基本契約書
  • 会計処理基準一覧、原価計算関係資料、勘定科目一覧、など
  • 経営計画書、事業計画書、など
  • 決算書、事業報告書、勘定科目内訳書、など
  • 登記簿謄本、社内規程、定款、組織図、など

 

まとめ

IPOを実現するためには、各種体制を整備・構築し、運用することが必要になります。ただし、そのためには相当程度の時間を要することが一般的です。このため、まず早期にショートレビューを実施し、管理体制等の現状を整理するとともに、IPO実現のための課題を網羅的に抽出した上で、各課題の具体的な改善施策・解消スケジュールを明確化させることが重要です。

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